第66話 秋葉原、そこは電化製品の街、オタク文化の街、いかがわしい街。
秋葉原駅から歩いて5分のところに、どうやら、例のいかがわしいお店があるらしい。
私は、いかがわしいお店に行ったことがない。
まさか、まさか。
自分のためではなく、よりによって母への見舞いの品として、そんな、いかがわしいものを買うことになるなんて。
そんなお店に足を踏み入れるなんて。
いったい、何が起きているんだ?
そんなことをずっと考えながらも、なぜか私は「母が言っている欲求とは、これだ」と信じて疑わなかった。
人間の三大欲求といえば、睡眠欲、食欲、性欲だ。
病院にいるのだから、睡眠はとれるはずだ。
食欲についても、病院にいれば食事が出る。
では、性欲は?
病院では、どうにもしてくれない。
母はきっと、このことを指しているに違いない。
そうして自分の中で確信を得たところで、秋葉原駅に到着した。
病院を出てから、ここまで20分。
その間、私は延々と考えていた。
「本当に母親が求めているものは何なのか」
「その結果が、いかがわしいおもちゃなのか」
「果たして、それは本当なのだろうか?」
この20分間、私はバカ真面目に、それだけを考え続けていたのである。
そして、学生時代に訪れて以来、一度も来ることのなかった秋葉原の地に、私は再び降り立った。
母のいかがわしいものを買うために。




