第49話 百貨店と森林ガール
隙間時間に少し調べてみると、LDSという雑誌で紹介されていた眉墨ペンが目に留まった。
1位の商品は550円。
普通に薬局で売っているものだった。
せっかく百貨店へ行くのだから、今回はデパコスにしよう。
そう思い、上位に入っていたキャネボウのものを候補にした。
当日。
母は待ち合わせ時間になっても現れなかった。
とはいえ、この人はたまに異常に早く来ることもある。
一応時間通りに到着したが、やはり姿は見当たらない。
すると母から連絡が入った。
「帽子とメガネ見てるから、着いたら1階ね。」
まさか先に着いて買い物をしているとは思わなかった。
急いで向かうと、母は帽子売り場で立ち止まっていた。
ショッキングピンクのベレー帽を頭に乗せている。
どこかの高級ホテルを経営している女性オーナーのようだった。
着こなすのはなかなか難しそうだが、本人は上機嫌である。
「このベレー帽ってやつ、ずっと被ってみたかったんだよね。」
母は鏡を見ながら言った。
「森林ガールみたいでしょ?」
「それを言うなら森ガールだと思う。」
「そうなの?」
「うん。あと森ガールはショッキングピンク選ばないと思う。」
母は鏡越しにこちらを見た。
「そう?」
少しだけ悲しそうだった。
私はため息をついた。
「帽子は後にして、とりあえず化粧品売り場を見に行こうよ。」
そう言って母の腕を引っ張った。




