第46話 食べ損ないのパフェ
さっきの女の子たちのおかげで、思わぬ形でパフェにありつけることになった。
母が注文したのは季節のパフェ。
栗がふんだんに使われているらしい。
私はシャインマスカットのパフェを頼んだ。
注文を待つ間、占いの結果について話した。
母にとってはかなり良い内容だったようで、
「また来ようね。」
と、すっかりその気になっている。
当たる当たらないは正直まだ分からない。
でも、自分のことを初めて会った人に言い当てられているような不思議な感覚はあった。
自分より自分のことを知っているような人に人生相談をする。
人生の答え合わせをするような時間だった。
これから何を選ぶか。
いつ始めるか。
自分はどんな人間なのか。
そんなことを考えるきっかけになった。
そうこうしているうちに、パフェが運ばれてきた。
「お待たせいたしました。」
目の前には栗のパフェとシャインマスカットのパフェ。
どちらも宝石みたいだった。
母は自分が注文していないシャインマスカットのパフェを見て、目を輝かせていた。
「一口食べる?」
と聞くと、
「ガンが移るからいい。」
と言った。
「移らないよ。」
「いや、いい。」
「移らないって。」
「じゃああんたも私の食べなさいよ。」
理屈じゃないらしい。
結局、お互い自分のパフェを食べることになった。
「んー、美味しい。」
母は嬉しそうに栗を頬張っている。
「そんなに栗好きなんだ。」
「好きよ。」
「じゃあ普段食べればいいじゃん。」
「食べないわよ。」
「なんで?」
「国産がないもの。」
確かに栗のお菓子は輸入品も多い。
「でも今の時期ならスーパーにもあるでしょ?」
そう言うと、母は即座に答えた。
「あんた、栗を茹でて剥いたことないでしょ。」
「ない。」
「引くほど面倒なのよ。」
それは少し分かる気がした。
そんな話をしていると、スマートフォンのアラームが鳴った。
保育園のお迎えの時間だった。
まだパフェは残っている。
でも食べ切る時間がない。
「ごめん、もう行かなきゃ。」
私は立ち上がった。
「これ、食べられたら食べて。」
すると母は口いっぱいに栗を詰め込みながら、
「あそう。じゃーねー。」
と手を振った。
私は急いで店を飛び出した。
電車に乗り込み、保育園へ向かう。
なんとか最終時間ギリギリには間に合いそうだった。
食べ切れなかったシャインマスカットのパフェは、きっと母が食べてくれただろう。
占いの結果が良かったからか。
美味しいものを食べたからか。
理由はよく分からない。
でも、久しぶりに少しだけ心が軽かった。
電車の窓に映る自分の顔を見ながら深呼吸をする。
その時、母からLINEが届いた。
『あんたのパフェも食べた。』
続けてもう一通。
『やっぱりシャインマスカットの方が美味しかった。』
私はシャインマスカットが「今が旬!」と叫んでいるスタンプを送って、電車を降りた。




