第45話 憧れのパフェ
その後、私も占ってもらったが、ここでは関係がないので省略しよう。
母は、やりたいことリストのうちの一つなのかは分からないが、どうしても食べたいという若尾のパフェを食べに向かうことにした。
私は子どものお迎えがあったが、まだ少し時間がある。
先日の一件もあったし、主人に頼る気にはなれなかった。
若尾に着き、階段を上ろうとすると、すでに入口には長蛇の列ができていた。
これはお迎えに間に合いそうにない。
「何時にお迎えだっけ?」
「17時までかな……」
「そっか。じゃあ無理ね。」
母はそう言って列を眺めた。
「いや、待って。」
嫌な予感がした。
母は前に並んでいる人へ歩いていく。
「ねぇ、どうしても今日食べなきゃダメ?」
目の前にいた社会人になりたてのような若い女の子二人が、ギョッとした顔でこちらを見た。
「ちょ、ちょっと!!やめてよ!!!!」
私は慌てて母の腕を引っ張った。
「すみません!本当にすみません!」
そのまま店から少し離れたところまで連行する。
「お母さん!何やってるの!?」
「なーにそんなに怒って。時間なかったんでしょ?」
「だからって……。また今度来ればいいじゃない!」
すると母が言った。
「また今度って、いつよ?」
私は言葉に詰まった。
母と次、いつここへ来られるのだろう。
母が食べたいパフェを、次はいつ食べられるのだろう。
「もし治療が始まって、頑張れなかったら?」
母が静かに言う。
「再発したら?」
私は何も言えなかった。
「私はいつ、このパフェを食べられるの?」
母は続けた。
「ここのパフェを食べないまま、あぁ食べたかったなぁって思いながら死ぬの?」
いや、違うだろう。
そう思った。
でも、断言もできなかった。
すると、列の方から声が聞こえた。
「あのー……。」
振り返ると、先ほどの女の子たちだった。
「次、私たちなんですけど……多分、今ならすぐ入れそうですよ。」
母と私は顔を見合わせた。
なんとも後味が悪い。
私はもう一度謝り、教えてくれたことにお礼を言った。
二人は笑って、
「気にしないでください。」
と言ってくれた。
そして最後に、
「私たち、よく来るので。」
と付け加えた。
きっと彼女たちなりの優しさだったのだと思う。
ところが母は私の耳元で、
「あんなに若くて、こんな高級なパフェが食べられるなんて、貴族に違いないわよ。」
と囁いた。
さっきまで少し感動していた気持ちを返してほしかった。




