第4話 癌だと確定する前と、その後の心得
まず最初に、いきなり医師から「あなたは癌です」と宣告されるケースは少ないだろう。
何かをキッカケに、癌の疑いが見つかる。
本当に癌なのか。
何の癌なのか。
転移はあるのか。
治療法はどうなるのか。
そんな確認作業が続き、少しずつ現実が形になっていく。
そして、その現実を突きつけられるのは本人だ。
本人は激しく落ち込み、冷静ではいられないだろう。
周囲の人間は、そんな姿を見ながら悩むだろう。
励ますべきなのか、寄り添うべきなのか、前向きな言葉をかけるべきなのか。
正直なところ、私にも答えは分からない。
その人の性格や価値観、関係性によって正解は変わるからだ。
ただ一つ思うのは、自分が「あなたに長生きしてほしい」と願っているとしても、その願いを押し付けてはいけないことだ。
その人の人生は、その人のものだから。
分かってはいるつもりだが、人は大抵の場合、言葉にしなければ本心を伝えることができない。
心配していること。
大切に思っていること。
生きていてほしいと思っていること。
それらを伝えることは、決して無意味ではないと思う。
私は診断がついた比較的早い段階で「生き延びるための戦略を考えよう」とだけ伝えた。
これは私なりの、長生きしなさいよという意味である。
それに、これを伝える事は少しでも治療に前向きになれる可能性があると思ったからだ。
癌との戦いは勝ち負けでは決まらず、伴侶のように寄り添っていくものかとしれない。まだ何も分からない。
それに、もちろん最初から諦めてしまう人もいるだろう。
そんな時は、
「元気になったら何をしたい?」
「何を食べたい?」
そんな未来の話をするのも一つの方法かもしれない。
よく見る光景だが、生きていたら以前と変わらずできることを訊ねるということは、比較的本人にもプレッシャーを与えず、答えやすいなのかもしれない。
きっと欲求がある限り、人は前を向ける。
私はそう信じたい。
ただ、これらはあくまで私自身の心構えでしかない。
抗がん剤治療が始まり、体力も気力も削られていけば、本人は普段の5パーセントほどしか力を出せないかもしれない。
そんな時にできることは多くない。
ただ寄り添い、相手を尊重する。
それくらいしかできないのかもしれない。
結局のところ、私も最適解は分からない。
今も分からないままだ。
いつか分かる日が来たら、またここに書き記そうと思う。




