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人生100年時代だっていっただろうが! 〜母という異世界生物観察記録〜  作者: 目立拓奶


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33/69

第33話 「(自認)24歳のレイカです。」

扉を開けると、そこは薄暗い店内だった。


ボーイのような男性が話しかけてくる。


「お待ち合わせですか?」


「はい。神崎さんはお見えになってますか?」


「神崎様ですね。少々お待ちください。」


そう言うと男性は店の奥へ消えていった。


しばらくして現れたのは、身長180センチくらいはありそうな細身の黒髪マッシュの男性だった。


「神崎様、お待ち合わせのお客様がお見えです。」


神崎はスマートフォンから顔を上げる。


「あぁ、うん。外に来てる?」


「いえ、こちらのお客様です。」


神崎は「?」という顔をして、私たち親子を見た。


「こんばんは。レイカです。」


すると神崎は当然のように私に向かって話しかける。


「あぁ、えっと、お母さんも一緒に来た感じっすか?レイカちゃん、いくつだっけ?」


「24歳です。」


母が答えた。


すごく、すごく、物凄く過保護な母親のように見える。


だが違う。


なんとこの、どう見ても60代の女性こそが「(自称)24歳のレイカ」なのである。


神崎の顔が引きつった。


「あー……えっと……。」


明らかに処理が追いついていない。


無理もない。


私も聞いたことがない。


母親同伴のギャラ飲みなど前代未聞である。


「あー、今日はさ、お母さんいなくて大丈夫だよ?お母さん、帰り方わかる?それで、えーっと……レイカちゃんは初めて?」


この一言がいけなかった。


「……初めて?男性経験あるかなんて普通聞きます?」


母は完全に勘違いしていた。


神崎はおそらく「ギャラ飲みは初めて?」と聞きたかったのだろう。


だが母は「男性経験があるか」と聞かれたものだと思い込んでしまったらしい。


神崎は一瞬固まった。


「は?」


店内の空気が止まる。


「は?さっきから何言ってんの?」


母も負けていない。


「そっちこそ何言ってるの?」


「いや、だからさ……」


「だから何?」


神崎は眉間を押さえた。


「ていうか、ここおばさん来る場所じゃないんだけど。」


言ってしまった。


完全に言ってしまった。


私は頭を抱えた。


間違いなく喧嘩が始まる。


だが、先に喧嘩を売ったのは神崎なのか、勝手に勘違いした母なのか、もうわからない。


雲行きが怪しい。


これはもしかして警察沙汰になるのではないだろうか。


そう思った時だった。


「オーイ。」


店の奥から声が聞こえた。


低い。


とにかく低い。


腹の底に響くような図太い声だった。


背筋がゾワリとする。


「まだ一人来てないぞー。早く連れてこーい。」


その声と同時に


ガシャン。


ガラスが割れる音がした。


私は卒倒しかけた。


神崎も「あっ、やべぇ」という顔をしている。


どう考えても普通ではない。


怖い。


普通に怖い。


すると母は


「あら、ガラスが割れちゃったわね?」


と言った。


いや、「あら」じゃない。


普通はこういう状況であんまりガラスって割れないんですよ。


私は本気で帰りたくなった。本当に本当に帰りたくなった。

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