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人生100年時代だっていっただろうが! 〜母という異世界生物観察記録〜  作者: 目立拓奶


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第32話 母がギャラ飲みはじめるってよ

母はやはり行動を起こした。


あの日、テレビで港区女子の特集を見ながら、


「私もギャラ飲みしようかしら」


と言っていた母である。


私は冗談だと思っていた。


だが、この女は違った。


本当に応募したのである。


どうやってここまで辿り着いたのかは知らない。


ギャラ飲みをしたい女性を募集している人を見つけて、自ら連絡を取ったらしい。


行動力だけは見習いたい。行動力だけは。


「年齢はどうしたの?」


私は恐る恐る聞いた。


「私?私の年齢は24歳。」


母は即答した。


「あのさ、待ってよ。なんで年齢で引っかからないの?」


「だって嘘じゃないもんね。」


母は真顔で言う。


嫌な予感しかしない。


「私の心は今24歳なの。」


「うん。立派な年齢詐称だよ。」


「そう?でもほら、精神年齢って大事だと思わない?」


「戸籍年齢の方がもっと大事だと思うよ、私は…。」


私は頭を抱えた。


「それに…バレたら大変だよ?何があるか分からないし。」


「大丈夫。」


すごい自信満々。何を根拠に言っているのだろうか。


「そもそも、お母さんみたいな人が来るなんて向こうも思ってないと思う。」


「そうかしら。」


「そうだよ。そうでしょ。そうでしかないでしょ。本当に何言ってるの?」


呆れてそれ以上になんと言えばいいか分からない。


そんな母が、本当にそのまま当日を迎えた。


私は母が心配で、同じ人にもう一人連れて行きたい「友人」がいるということで紹介してもらった。(してもらった…???)


私は、騙された担当者に殴られる覚悟でいる。


もちろん、母が。母が殴られる。私は悪くない。むしろ同じく被害者だ。


もし殴られそうになったら、「母はがんなんです!暴力だけは…暴力だけはやめてください…!」と、一応は止めに入るつもりである。でも私は絶対に身代わりにはなりたくない。だから、そんなことがまず起こらないといいと思う。


六本木駅で待ち合わせをした母は、どこか浮き足立っていた。


坂を少し上り、細い路地を曲がる。


看板はないが、重厚感のある扉があった。


いかにも港区らしい店である。


母は深呼吸を一つすると、


「さぁ、行きましょう。」


と言って扉に手をかけた。


私はその背中を見ながら思った。


絶対に24歳はそんな挑み方しない。なにそれ。「さぁ」って?「行きましょう」って何?


ただ母の時代の24歳には気持ちがタイムスリップしているのは事実かもしれない。


決してガンで死ぬような人には見えなかった。

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