第29話 ガングロ医者
バカデカプリンは冷えるまで時間がかかったので、また翌日に来てもらうことにした。
「じゃあ、明日は商材持って来ないできますね!」
と、本気でプリンを食べにくるつもりだとしか思えないような発言をして浜辺は家を後にした。
騒がしかった実家が一瞬で静まり返る。
母からはあまりまだがんになった後の気持ちについて、きちんと聞いたことがなかったからだ。
「お母さんも、やっぱり怖いんだね」
「怖いよ、そりゃ。がんかもしれないって言われて、やっぱりがんだってなって。最初の先生の誤診だろうなって思ったよ。だって、医者なのに肌真っ黒で歯が白くて、なんか医者じゃないみたいに人当たりが良くて」
「お母さん、お医者さんをどんな人だと思ってる?」
「神様。でもあれはサーファーの神様…って風貌だったわね。」
「別にいいじゃない、ガン黒だろうと。」
すっかり変色して茶色くなった緑茶をコトッと音を立ててテーブルに置いた。
「私の経験から言わせるとね、よく話す医者は当てにならないわよ。だってそうじゃない?医者に慰めてもらうんじゃなくて、治しにいくわけよ。それなのに、「まぁ大丈夫!ステージ3くらいっ!ハワイの日差し浴びて、マハロ〜ってやってればいいよ!大丈夫。明るい気持ちが何より大事!」ってあんた言われてみなさいよ。なめてんのか?って思うわよ?あれは多分、医者向いてないわよ。何あれ?」
相当、腹が立っているようだった。
それは無理もないだろう。
私だって、マインドの話で片付けられたらまるで私がいけないように思ってしまう。
ストレスは大敵だということはもっともであろうと、医者から不安でしょうがない時に抽象的な話をされたら、それは怒るだろう。母だってその辺の感覚はまともなのかもしれない。
「まぁ、今のお医者さんはすごくバランスが良くってね。すごく頼りにしてるわよ。あんたも今度、先生に会う時に来てみたら?」
そうして、私は次の月曜日に病院についていくことになった。




