第27話 チソチソのお湯
部屋の中の湿度が高くなってきた。
そろそろかと思い、鍋の中を覗くといい具合に火が入ったプリンがある。
「どう?いい感じ?」
私の肩越しに母が覗き込んでくる。
「んーいい感じね。じゃあ冷蔵庫に入れておいて。」
「いやいや、粗熱とらないとダメでしょ。」
「最近の冷蔵庫はそういうの関係ないらしいわよ?」
すごく誇らしげに、私は時代に追いついているのよ?という得意げな顔をしている。
いやいや、普通に考えてバケツ一杯分のプリンは想定外すぎるだろう。
冷蔵庫を開けてみると、そもそもプッテンプリンを入れる隙間すらないではないか。
バカデカプリンの粗熱をとる間に、冷蔵庫の中身を整理することにした。
「あっ、プリンどうですか?その小さいプリン、僕片付けましょうか?」
私にポンコツ認定をくらった浜辺がまるで子犬がゴハンを見つけた時のように吠えている。
「あんた、せっかくきたんだから大きい方のプリン食べていきなさいよ」
しゅんとする浜辺。
「もう食べれるでしょ?」
いや、まだ湯気すごいですし、なんかもう今食べたら甘い茶碗蒸しみたいになりますけど…
「あ、僕、猫舌なんで…スミマセン。」
浜辺は猫舌なのか。なんかもう、そうだよな、うん。納得。納得したよ私は。浜辺だもんな。
「そうなの?私はアツいの全然イケるのよ。チソチソのお湯だっていけるわよ!」
浜辺と私が驚いて咽せる。
「カハッ、ケホッ……お母さん!??何言ってるの!???」
母はキョトンとしている。
「ち、ち、ち…チソチソって、チソチソのお湯って…や、火傷しちゃいますよ!ダメですダメです!やめた方がいいです!そんなの!拷問ですって!!!!」
母、更に話についていけない顔をしている。
「…あーっ!チソチソ?チソチソのお湯?あっはっはっ、そういう意味じゃ無いわよ!面白いわね。」
盛大なセクハラをされた気分の私と浜辺がどんなとんでも発言をするのかと、母を見つめている。
「岡山の方言でさ、チソチソにお湯を沸かすとかいうわけ。それはさ、めちゃめちゃ熱いっていう意味なのよ。バッカね〜、あなたたち。よっぽとあなたたちの方が変態だわよ。くだらないわ〜」
と、母が説明した。
どこからどこまで本当かわからない。
「ごめん、浜辺くん、私今冷蔵庫整理で手が動かせないから、今のうちの母の発言、本当にセクハラじゃ無いか調べてくれる?」
「わっ、わかりました!そうですよね!」
浜辺は急いで手元のスマートフォンを開こうとするが、ドギマギしすぎて一向にパスワードが合わない。浜辺である。本当にコイツは浜辺である。
「まぁ、本当だから調べなくったっていいわよ。」
二人は母の言うことを一旦は信じることにした。ドキドキするが。




