第26話 バカデカプリンができるまで、100万円の行方について
バカデカプリンはバケツの中に入っており、そのバカデカプリンは遂に湯煎されはじめた。
「さて、じゃあ、気を取り直して。保険の話でも聞こうかしらね。」
椅子に座る母。
ダイナミックにプリンを作ったので、キッチンが汚れているが気になる娘は、キッチンを片付けることにした。
「あっ、じゃあ、そうですね、失礼します。はい、ええっと…」
と、なんだか頼りない返事をしながら浜辺も着席し、左床下に置いた鞄をガサゴソといじっている。
パンフレットでも開くのだろうか?
「えぇーっと、えーっと…」
紙が何枚もめくられる音がする。
この、「えーっと」がないだけで大分プロフェッショナルな印象に変わるだろうから、浜辺は損している。
「あ、こちらですね。」
どんな商材を紹介されるのかと思い、後ろを振り向くと
「なにこれ?」
「ノルマはないんですけど、こちらが僕の売上目標となります!!」
本当に!!!こいつは!!!!!!仕事ができない!!!!!!なんだこの男は!!!!!!!
「あーらあらあらあらあらあら、まぁまぁまぁ、あーっはっはっ!あなた面白いわねぇ」
母はびっくりした目をしながら、大きな口を開けて手を叩いて笑っている。
「あー本当に面白い。で、ここにはなんで書いてあるの?老眼で見えないわよ。」
母、小さい字にブチ切れる。
「あ、こちらフォントが8なので、まぁ無理ないですよね。」
「あなた、何言ってるのか全然わからないけど、ここにはつまりなんて書いてあるの?」
母は放棄しながらも話は聞くつもりだ。
「あっ、はい、えっと、今月の目標売り上げは…今月は約1万円の保険を100人に契約してもらいたいです!」
「へぇ、そうなの?じゃあ、100人お客さんが必要なのね?」
「はい!なので、100人には会いますね。」
浜辺、なんで100発100中という計算になっているのだ。
中には契約しない人もいるだろうに。
「あそう?今月始まったばかりね。じゃあ、そうねぇ、100万円、あなた好きに使っていいわよ」
「えっ!?」
思わず、浜辺と私は驚いて母の顔を見た。
「そうしたら、売上達成になるんでしょう?」
「あっ、はい、、100万かーっ!嬉しい…ありがとうございます!!このお金でロレックスの時計買いますっ!」
バカやろう、と一発かましてやりたくなるが、本気で言ってるわけないよなと思いつつ本気の可能性がある、かなり危うい男である。
「あっはっは!100万の使い道がロレックスね、いいわね。っていうかロレックスの時計が100万円もするの?すごい時代ねぇ〜。」
そんな話をしていると、甘い香りが微かにリビングを漂い始めた。鼻が詰まっていればわからない程度である。
「このお金で、今月は目標売上達成。で、このお金は運用に回して頂戴ね。それから、あなたはあと100人のお客さんを見つけないで、たまには私と遊びなさい。」
突然、安いのか高いのかわからない提案をする母であった。
「あ!運用!いいですね。分かりました。ロレックス、買えないのかぁ…。まぁ、まぁ、はいはい、分かりました。」
なぜこの男は上から目線なのだ?
「運用なら任せてください!一番売れ筋がこちらでございます!これ、本当にすごい!」
突然ジャパネット低田ばりに声を張り上げて元気よく営業をし始めた。
いやどちらかというと、八百屋みたいでもある。
ただ、母の100万円の行方は運用に変わったのだった。




