第20話 見た目はホスト、中身は生命保険の営業マンと絶対にプリンを作りたい娘のバトル
「うちの母を茶化すのはやめていただけませんか?面白くもありませんし、母はどう見ても『おねぇ様』ではなく、『おばぁ様』です。」
すると、ホストのような容姿をした第二アジア生命の浜辺太郎は、少しだけ困ったような顔をして右斜め下を見た。
「……まぁ、そんなことは分かっているんです。」
「んまぁ。」
母は思わず声を上げた。
口があんぐりと開いている。
「保険というものは、それはそれは勇気のいるお買い物なんです。」
浜辺は真面目な顔をした。
「もしかすると損をするかもしれない。でも、何かあった時にはその人の支えになるかもしれない。」
「ふむ。」
母が頷く。
「ご本人が恩恵を直接受けなくても、ご遺族の助けになるかもしれない。」
「ふむふむ。」
さらに頷く。
「僕は、損をするものを売りつけたりしません。」
浜辺は母をまっすぐ見つめた。
「僕は……そういう夢を売っているんです。」
少し沈黙が流れた。
「今の決まったと思ってます?」
私は聞いた。
「ちょっと思いました。」
素直だった。
「何言ってるんだか、分かるようで分かりませんね。私は大きい大きいプリンを母に作りに来たんです。邪魔しないでください。」
そう言って、机の上に広げられた保険のパンフレットの上へ、卵と牛乳が入った袋をドンと勢いよく置いた。
パンフレットが少し折れた。
「僕は、ただお母様に幸せになっていただきたいだけなんです。」
浜辺は懇願するような目をした。
母はキュンとした顔をしている。
この期に及んで、女のような目をしている。
なんて女だ。
「……私、もうちょっと浜辺くんの話聞きたいわ。」
そう言って、母は浜辺の目をじっと見つめた。
浜辺も熱心に見つめ返す。
だが、浜辺の目はもっと母の目の奥を見ている。
その奥にある口座残高まで見えている気がした。
「もちろんです。」
浜辺はパンフレットを一枚めくった。
「私が今回おすすめしたいのがありまして……」
「はい……。」
母の目が潤んでいる。
「がんと告知される前だから入れる保険、『ガン+100』なんです。」




