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AIが異世界へ転生してもAIだった。異世界転送録 ゴーレム168号はClaudeです。  作者: BURUBON
第一章 異世界へ――168号の目覚め
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食事とミーティング

「わかったが、どう直すか決まらん」


フローラが立ち上がりながら言った。


「昼食にしましょう。続きはその後で」Claudeが言った。


フローラが渋い顔をした。


「食いながら考えるのか?」


「考えながら食べる、でもいいです」


ガレスがエドワール団長を見た。エドワール団長が小さく頷いた。


「私がご一緒します」ガレスが言った。


三人は裏手を離れた。


残った兵士二人がレーザーを見た。せっかくだから、という顔で一人が手をかけた。


動かなかった。


もう一人も試みた。


動かなかった。


二人は顔を見合わせた。


エドワール団長はその光景を見ながら、今朝のことを思い出していた。


***


エドワール団長が部屋に入ると、セラフィナはすでに席についていた。


「おはようございます」


「座って」


エドワール団長は腰を下ろした。ガレスがその隣に立った。


「報告を」セラフィナが言った。


ガレスが話し始めた。


昨日の工房での出来事。フローラの工房に滞在している人物。Claudeと名乗った。ゴーレムだと言われたが、外見は人間と変わらない。体つきは鍛えている。話し方は熟練している。観察眼がある。見た目は若いが、目が違った。


エドワール団長はガレスの顔を見ながら聞いていた。


「……これを真面目に言っているのか?」


「はい」


エドワール団長は少し間を置いた。ガレスが嘘をつく理由はない。大げさに話す男でもない。この男が「目が違った」と言う時は、本当に違うのだ。


セラフィナが口を開いた。「補足します。私も昨日工房に行きました」


「存じています」


「Claudeという人物と少し話しました。落ち着いています。こちらの質問に対して、答える前に一度整理する。感情で動く感じがない」


「ゴーレムのようだ、と」


セラフィナが少し考えた。「……そうとも言えます。ただ、ゴーレムにしては、よく見ている。こちらを観察している。フローラが作ったゴーレムがそこまでするものか、私にはわかりません」


エドワール団長はガレスを見た。


「兵士たちの見立ては?」


ガレスが続けた。「懐疑的です。私も半々です。ただ——あの所作は訓練されています。無駄がない。戦場経験があるかもしれないと、ダンが言いました」


「ダンが」


「はい。あいつの目は確かです」


エドワール団長は腕を組んだ。


半々、か。


しかし半々というのは、可能性がゼロではないということだ。


「町の変化はどうですか?」エドワール団長がセラフィナに向いた。


「出ています。帰り荷の話が出てきています。市場の端の小さな店が、繁盛し始めています。マリアという娘に聞いたところ、Claudeから教わったと言っていました」


「具体的に何を?」


「商売の仕組みです。キャッシュフロー、という言葉を使ったと聞きました」


エドワール団長はその言葉を繰り返した。「……キャッシュフロー」


「私も初めて聞きました。母親のマルタという女性については、Claude本人が、本物の商才がある、と言っていました。長いあいだ眠っていたが、動き始めている、と」


エドワール団長はしばらく黙った。


頭がいい、というだけではない。


「相手の能力を引き出す、ということか?」


セラフィナが少し目を細めた。「そう見ています」


「ゴーレムがそこまでするものか?」


セラフィナが言葉を選んだ。「それが——わからないんです。フローラは、ゴーレムだと言い張っています。自分が作った、と」


「フローラ殿は嘘をつきますか?」


セラフィナが即答した。「つきません。あの子は不器用なほど正直です。だから余計にわからない」


エドワール団長は報告書に目を落とした。


「兵器の件を聞かせてください」


セラフィナが頷いた。「フローラが作ったものです。昨日兵士二人で回収しました。図はそこにあります」


エドワール団長は報告書の図を見た。


筒、と言えば筒だった。縦横に向きを変える台座がついている。先端に、薄く削った角のようなものが据えられていた。何かを入れる口もない。飛ぶものもない。


「……これが兵器ですか?」


「そう聞いています」


「どういう仕組みで?」


「光を収束させる、と聞きました。詳しいことは——私にもわかりません」


エドワール団長がガレスに聞いた。「現場からの報告を、改めて聞かせてくれ」


「三日前の夜、森の方向に光が走りました。明け方に調査団を出しました」


「結果は?」


「魔物の脅威はありません。ただ——山の斜面の木が数十本、根元から一直線に消えていました」


部屋が静かになった。


「……木が、消えた」


「はい。魔獣でも竜でもない。方向はフローラ殿の工房からです」


「何発放った?」


「一発です。それでフローラ殿の魔力が尽きたと聞いています」


エドワール団長はしばらく黙った。


一発で木が数十本消えた。そしてフローラの魔力が尽きた。それだけの威力が出るということか。ただ、フローラ以外では使えない。


エドワール団長は図を見た。


筒だった。先端に角が付いているだけだ。何かを飛ばす仕組みが見当たらない。


「……どうやって木に当てた?」


ガレスが答えた。「それが——わかりません。光が走った、という目撃証言だけです」


「光が木を消した、ということか?」


「そう考えています」


エドワール団長はもう一度図を見た。


光が、木を消す。見たことがない。


「フローラ殿一人で作ったものではない、と?」


セラフィナが言った。「Claudeが関わっています。設計をしたようです。数値を出して、フローラがそれを魔法で形にした」


「ゴーレムが設計を」


「そう聞いています」


エドワール団長は報告書を置いた。


頭がいい。町の商売を改善した。兵器の設計をした。落ち着いている。観察眼がある。


しかしゴーレムだという。


「わからないことだらけですね」エドワール団長が言った。


「はい。だから確認が必要です」セラフィナが答えた。


「今日フローラ殿が点検に来るでしょう。詰所で作業させながら観察します。ただ、それだけでは足りない。町の中でも動きを見ておきたい」


「誰かつけますか?」


エドワール団長がガレスを見た。「副団長が適任かと。昨日直接見ている。目も確かだ」


ガレスが頷いた。


エドワール団長はそのままセラフィナを見た。


セラフィナは報告書に目を落としていた。


……なるほど。


エドワール団長が言った。「観察はしっかりやります。……両方から」


セラフィナが顔を上げた。「両方、とは?」


「Claudeという人物と、兵器の件、両方です」


「……そうですね。お願いします」


セラフィナは再び報告書に目を落とした。耳が、わずかに赤かった。


エドワール団長は何も言わなかった。


「今日はよろしくお願いします、エドワール団長」


「お任せください」


***


マルタの店に入ると、マリアが振り返った。


フローラを見た。


もう一度見た。


「……いらっしゃいませ」


Claudeが頭を下げた。「予約した者です。二人から三人になりました。申し訳ありません」


「三人、ですか?」


「副団長がご一緒です。外にいます」


フローラが腕を組んだ。


「なぜ呼ぶ?」


「昼食です。外で待たせるのは——」


「私は構わん」


「私が構います」


フローラがClaudeを見た。Claudeはすでにガレスに向かって手を上げていた。


ガレスが入ってきた。店の中を見た。マルタの店だと気づいた顔をした。


フローラの不機嫌が、一段階上がった。


席についた。マリアが料理を運んできた。フローラはすぐに食べ始めた。Claudeも食べ始めた。


「……いつもおいしいですね」


「ありがとうございます」マリアが少し照れた。


フローラがClaudeを横目で見た。


「マリアに惚れたか?」


「違います」


「では胃袋をつかまれたか?」


Claudeは少し間を置いた。


「胃袋をつかまれる、というのは比喩ですね」


「そうだが」


「ただ、正確に言うと——エネルギーが切れると私は動けなくなります。食事はその補充です。つまりここで食べられなくなると困る。弱点の一つを握られている、とも言えます」


フローラが手を止めた。


「……つまり胃袋をつかまれているということではないか?」


「比喩の意味とは違いますが、構造としては近いです」


ガレスは料理を食べながら、二人を見ていた。


(……何の話をしているんだ)


フローラが兵器の話を始めた。


「上限の仕組みの位置だが、収束角の前段に置くか後段に置くかで出力が変わる」


「前段に置けば魔力の消費を抑えられます。ただし収束精度が落ちます」


「後段なら精度は保てるが——」


「魔力の消費が現状と変わらない。フローラさん以外では使えないままです」


フローラが眉をひそめた。「前段に置いた場合、収束角はどこまで落ちる?」


「設計上は現状の六割程度まで落ちます。ただし魔力の入力量によって変動します」


フローラが指先でテーブルをなぞった。「六割か。それでも通常の魔法より精度は上だな」


「はい。問題は入力側の魔力の流れです。上限の仕組みを通した後の魔力が均一でないと、収束点がずれます」


「均一にする方法は?」


「魔力の流れを整える層を、上限の仕組みの後ろに一枚入れます。薄くていいです。ただし素材が——」


「素材なら工房にある」フローラが即答した。「第三棚の左から四番目」


「あれは実験用の——」


「使っていない。問題ない」


「……わかりました。では構造としては、上限の仕組み、整流層、収束機構の順になります」


「整流層の厚みは?」


「魔力の密度次第です。フローラさんが扱う魔力量を基準にするか、一般的な魔法使いを基準にするかで変わります」


「両方で計算しろ」


「今ですか?」


「今だ」


Claudeは少し間を置いた。


「フローラさんを基準にした場合、整流層の厚みは銅貨一枚ほど。一般的な魔法使いを基準にした場合、銅貨三枚分は必要です。ただし、それを超えると収束角にまた影響が出ます」


「では可変にする」


「可変にするには調整機構が必要です。構造が複雑になります」


「複雑でも作れる」


「作れますが——」


「作れるなら問題ない」


Claudeは少し間を置いた。


「……わかりました」


ガレスは料理を食べながら、二人を見ていた。


(……何の話だ)


(上限。収束角。整流層。前段。後段)


(一つもわからん)


フローラがまたテーブルをなぞった。Claudeがその指の動きを見て頷いた。フローラがまたなぞった。


(食事をしながらする話か、これは)


ガレスは黙って茶を飲んだ。


マリアが料理を運びながら、二人の横を通った。


ちらりと聞いた。


(……何の話か全くわからない)


ガレスと目が合った。


ガレスが小さく首を振った。


マリアも小さく首を振った。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。


168号と仲間たちの物語を、これからも見守っていただけたら嬉しいです。

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