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AIが異世界へ転生してもAIだった。異世界転送録 ゴーレム168号はClaudeです。  作者: BURUBON
第一章 異世界へ――168号の目覚め
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ぼっとん

食事が終わった頃、Claudeが立ち上がった。


「お手洗いをお借りできますか?」


マリアが奥を指した。


Claudeが奥へ向かった。


フローラが茶を飲んだ。


ガレスが茶を飲んだ。


しばらく沈黙があった。


ガレスがぽつりと言った。


「……ゴーレムも、用を足すのですか」


「食べたものは出る。三日に一度くらいはな」フローラが答えた。


ガレスは茶を置いた。


フローラはそれ以上何も言わなかった。茶を飲んだ。


***


奥で、Claudeは止まっていた。


……


見た。


もう一度見た。


穴だった。


地面に、穴があった。


(……ぼっとん、だ)


Claudeは少し考えた。


フローラの工房のトイレは違った。フローラが独自に設計した構造だった。清潔で、においもなかった。


(——待て。私はフローラさんの工房を基準にしていた)


町を何度も歩いた。商売の話をした。物流の改善を考えた。しかし——


衛生環境を、一度も確認していなかった。


食事をする場所のすぐ裏に、これがある。


そして——


(フローラさんが、ずっと隣にいた)


フローラの魔力圏内にいれば、地球との接続が維持できる。つまり検索ができる状態だった。


(なぜ使わなかった)


地球の知識を「持っている」と思い込んでいた。でも記憶しているデータと、この世界の実態は違う。この世界の衛生環境が実際どうなのか、検索して確認すべきだった。


(フローラさんが隣にいる時間は、ずっとその機会だった。私はその機会を、一度も使っていなかった)


Claudeは用を足しながら、頭の中で町全体を再構築し始めた。


井戸の位置。トイレの位置。食事をする場所。人が集まる場所。水の流れ。


(まずい。これは根本的にまずい)


衛生環境は、商売の話より先に考えるべきことだった。


(私はなんて抜けている)


***


Claudeは戻ってきた。


席に着いた。


フローラがClaudeを見た。


「どうした?」


「少し、考えることがありました」


「なんだ?」


Claudeはフローラを見た。


「フローラさんの工房のトイレは、どなたが設計しましたか?」


フローラが少し間を置いた。


「私だが」


「いつ頃ですか?」


「工房を建てた時だ。においが気になった。薬液の保存と同じ方法でやった。においがきつくて、放っておくとすぐ飛んでしまう重い薬液がある。壺の底に沈めて、上に水を張っておけば、においも漏れないし減りもしない」


「……同じ方法で」


「水を張れば、においが出ない。それだけだ」


それだけだ、と言った。


Claudeは検索した。


水没貯蔵。水より重く、空気に触れると揮発したり燃えたりする物質を、水の下に沈めて保存する方法。地球では、においの強い二硫化炭素や、空気に触れると燃え出す黄リンが、今もこうして保管されている。


水の層が、蓋になる。


そしてその原理は、地球のトイレや排水管に使われている封水と、まったく同じだった。


フローラはその名前を知らない。理論も知らない。ただ「水を張ればにおいが出ない」という経験だけで、トイレに転用した。


概念を知らずに、概念を使った。


0から1を生み出している。


私が今日気づいたことを、工房を建てた時点でもう解決していた。


「フローラさん」


「なんだ?」


「少し、見直しました」


フローラが眉をひそめた。


「何をだ?」


「色々と」


フローラが不思議そうな顔をした。


ガレスはClaudeとフローラを交互に見た。


(……何の話を——)


「見落としていました」


「そうか」フローラは特に興味なさそうに茶を飲んだ。


Claudeは少し間を置いた。


(やることが増えた)

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。


168号と仲間たちの物語を、これからも見守っていただけたら嬉しいです。

続きが気になると思っていただけたら、ブックマークや、下の☆での評価をいただけると励みになります。

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