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AIが異世界へ転生してもAIだった。異世界転送録 ゴーレム168号はClaudeです。  作者: BURUBON
第一章 異世界へ――168号の目覚め
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押し問答

町に入ると、荷車が少し増えた気がした。


「前に来た時より多いですね」Claudeが言った。


フローラは特に興味なさそうに答えた。「そうか。行くぞ」


「すみません、私はまずマルタさんの店に寄ります」


フローラが立ち止まった。


「……先に行けと言うのか?」


「はい。詰所へは真っ直ぐ行けば着きます」


「一人でか?」


「地図を書きましょうか?」


「いらん」


フローラは歩き出した。Claudeは反対方向へ歩いた。


***


店に入ると、マリアが振り返った。


「Claudeさん!」


「おはようございます。マルタさんは?」


「奥で仕込みです。呼んできます」


「いえ、少しだけ。近況を聞きに来ました」


マリアが少し背筋を伸ばした。「王都の品物を扱う話が、まとまりそうです。あと、帰り荷の件で別の商人さんが一人、話を聞きたいって来て——」


「それはマルタさんに判断してもらってください。あなたではなく」


「はい。そう伝えました」


Claudeは店を見渡した。品の並べ方が変わっていた。香りが通りに向かって流れている。


「よくなっています」


マリアが少し照れた。「お昼、来ますか?」


「予約できますか?」


「Claudeさんだけですか?」


「二人です。もう一人は——少し変わった方ですが」


マリアが首を傾げた。


「来ればわかります」Claudeが答えた。


***


兵団詰所の前は、静かではなかった。


「返せ」フローラが言った。


「お返しできません」ダンが答えた。


「私のだ」


「領主様からお預かりしています」


「盗人め」


「……魔法使い殿、お静かに——」


Claudeが角を曲がると、フローラとダンが詰所の入口で向かい合っていた。フローラの目が据わっていた。ダンは困り果てた顔で、しかし一歩も退いていなかった。


周りの兵士が遠巻きに見ていた。


Claudeはフローラの隣に立った。


「フローラさん」


「168号。こいつが返さない」


「私はClaudeですよ」


ダンが怪訝そうにClaudeを見た。


Claudeはダンに向き直った。「朝から失礼しています。Claudeといいます。フローラさんの工房にいる者です」


ダンの目が、一瞬止まった。


「……昨日、工房にいた」


「はい。その節はどうも。レーザーの点検で来ました。ただ今は領主様が打ち合わせ中と聞いています。団長からの指示が出てからでないと難しいですね」


フローラが口を開きかけた。


「フローラさん」


「……なんだ」


「昼食の予約を入れました。いい店です」


フローラが黙った。


ダンが小さく息を吐いた。


しばらくして、詰所の奥から足音がした。


エドワール団長とガレスが並んで出てきた。エドワール団長はフローラを見て、次にClaudeを見て、それからダンを見た。


「何があった?」


「魔法使い殿が——」


「大体わかった。中へどうぞ」エドワール団長が言った。


***


詰所の裏手に、それはあった。


地面に置かれていた。長さ一メートル、見た目以上に重い。昨日兵士二人がかりで運んできたものだ。


フローラが真っ先に近づいた。


「返してもらう」


エドワール団長が静かに言った。「預かります。点検していただくだけです」


フローラが渋い顔をした。しかし手を引いた。


「説明をお願いできますか?」エドワール団長がClaudeに向いた。


Claudeはレーザーを見た。「はい。少し移動させます。安全のため」


Claudeがレーザーを持ち上げた。


一人で。


昨日運んできた兵士二人が、ぎょっとした。顔を見合わせた。もう一度Claudeを見た。


Claudeは安全な向きに置き直した。特に何も言わなかった。


エドワール団長はそれを黙って見ていた。


Claudeが話し始めた。「この装置は光を一点に収束させます。通常の魔法で生成する光とは異なり、指向性と密度が規格外になっています。フローラさんの魔法精度があって初めて成立しています。ただ、現状では魔力の消費が膨大です。フローラさんほどの魔法使いでないと、そもそも動きません」


ガレスが口を開いた。「つまり今は誰も使えない、ということか?」


「フローラさん以外は難しいです」


エドワール団長は腕を組んだ。


「続けてください」


Claudeがフローラを見た。


フローラが渋い顔をした。


「……ここでやるのか?」


「領主様のご意向です」エドワール団長が言った。


フローラがさらに渋い顔をした。しかしその場にしゃがみ込んでレーザーに手をかけた。


「制御装置から見る」


「上限の仕組みを入れる場所を、先に決めた方がいいです」Claudeが答えた。


「なぜだ?」


「制御装置は、その後ろに来ます。順番があります」


「……そうか」


二人はレーザーを挟んで向かい合った。そこからの会話は、周りには何が何だかわからなかった。


「収束角がここで——」


「いや待て、そうすると入力側が——」


「フローラさん、そこは魔力の流れを——」


「わかってる。だからこっちを——」


「——なるほど」


「——そこか」


「——はい」


フローラが突然笑い出した。


ガレスがダンに小声で言った。


「……何を見張るんだ、我々は」


ダンが同じく小声で答えた。


「……わかりません」


昨日レーザーを運んだ兵士の一人が、まだClaudeを見ていた。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。


168号と仲間たちの物語を、これからも見守っていただけたら嬉しいです。

続きが気になると思っていただけたら、ブックマークや、下の☆での評価をいただけると励みになります。

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