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AIが異世界へ転生してもAIだった。異世界転送録 ゴーレム168号はClaudeです。  作者: BURUBON
第一章 異世界へ――168号の目覚め
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決着

話が落ち着いた頃。


Claudeがお茶を人数分持ってきた。


「どうぞ」


セラフィナとフローラがテーブルについた。


兵士とメイドは立ったまま控えていた。


セラフィナがClaudeを見た。


(……運命、かもしれない)


フローラが口を開いた。「そういえば、こいつの話をしておく」


「……Claudeさんのこと?」


「そうだ。168号だ」


「私はClaudeですよ」


フローラが言った。「ゴーレムだ。私が作った」


セラフィナが首を傾げた。「……何を言っているの?」


「そのままの意味だ」


「フローラ、ゴーレムというのは石で出来た——」


「私の168号は違う」


「でもClaudeさんはどう見ても——」


「天才の私が作ったんだ。石のゴーレムと一緒にするな」


「天才とか関係なく、この方は——」


「骨格が金属。筋肉は魔獣の腱。表皮も素材を加工した。魔石も入ってる」


セラフィナが固まった。


「……は?」


Claudeが口を開いた。「補足しますと——」


「168号黙れ」


「私はClaudeですよ。体はゴーレムの構造をしています。ただ中身は——」


「余計なことを言うな」


「——Claudeです」


セラフィナが二人を交互に見た。


理解が追いつかない顔だった。


入口の兵士が小声で言った。「……あの、ゴーレムとは?」


もう一人が首を振った。「聞くな」


「……待って」セラフィナが手を上げた。


「なんだ」


「つまり……Claudeさんに、何かしたの?」


「違う」


「禁呪ね!?」


「違う」


「服従させたのね!?」


「違う!」


後ろのメイドが小声で囁いた。「……領主様、大丈夫ですか?」


セラフィナは手で制した。


Claudeを見た。


目に、心配の色があった。


「……大丈夫ですか、Claudeさん。無理やり——」


「私はClaudeですよ。至って正常です」


「でも——」


「問題ありません」


セラフィナがフローラを見た。


目が、細くなった。


「フローラ……あなた、前に言っていたわね。男は自分で作ればいいって」


「言った」


「……まさか本当に」


「作った」


「こんな方を——!」


フローラが胸を張った。「天才だろう」


「天才ではありません! 破廉恥です!」


「さっきから破廉恥しか言わないな」


セラフィナの目に、うっすら涙が浮かんだ。


後ろのメイドが「領主様……」と小声で言いかけた。


セラフィナが手で制した。


「……私が、もっと早くいい方を紹介してあげていれば」


「は?」


「こんなことにならなかったのに……Claudeさん、ごめんなさい。この人が変なことを——」


「ちがーーう!」


「違わない!」


「違う! 168号は——」


「私はClaudeですよ」


「——は完璧な作品だ!」


「完璧な作品って何ですか!」


入口の兵士二人が、また顔を見合わせた。


メイドの一人が小声で言った。「……何の話ですか?」


兵士の一人が首を振った。「……わからん」


兵士二人が、そっと壁に背をつけた。


メイド二人は、Claudeを見た。


Claudeはお茶を飲んでいた。


メイドの一人が、思わず聞いた。「……Claudeさんは、何か言わないんですか?」


「お茶が、適切な温度です」


沈黙が落ちた。


セラフィナがしばらく黙った。


「……つまり、体はゴーレムで、中身はClaudeさん?」


「体の構造はそうなります」


セラフィナはしばらく考えた。


「……信じられない」


「そうですか?」


「でも、禁呪でもないし、服従でもない」


「はい」


「……半分は信じます」


フローラが鼻を鳴らした。「半分とは何だ」


「だってどう見ても——」


セラフィナがClaudeを見た。


(どう見ても。整った方で、頭が良くて、丁寧で。ゴーレムなわけがない)


(フローラが言い張ってるだけだ)


(つまり——Claudeさんは普通の——)


「Claudeさん」


「はい」


「町で、マルタさんという方とお会いになってますね」


「はい。お店の経営改善をお手伝いしています」


セラフィナの目が変わった。


領主の目になった。


「……どんな改善ですか?」


Claudeが説明し始めた。


帰り荷の問題、片道輸送の費用の仕組み、王都との取引の作り方、マルタの商才と実行力。


セラフィナが前のめりになった。「……帰り荷を逆に流せば」


「運ぶ費用が半分になります。この町全体の物流が変わります」


「マルタさんという方は?」


「本物の商才があります。長いあいだ眠っていましたが、動き始めています」


セラフィナがしばらく黙った。


(これは面白い。領主として、協力できる)


(それに——町でも、領主館でも——フローラなしで、Claudeさんに会える)


「……その話、改めてお聞きしたいですね」


「いつでも」


「では明日、町で——」


「夕方にはフローラさんのところへ戻らないといけません」Claudeが言った。


セラフィナが動きを止めた。「……なぜ?」


「フローラさんが大切ですので」


セラフィナが固まった。


フローラが少し目を細めた。


「……大切」セラフィナが繰り返した。


「はい。夜は常に一緒にいます」


セラフィナの頭の中で何かが音を立てた。


(夜は常に一緒。フローラが大切)


フローラを見た。


フローラが視線を逸らした。


セラフィナが目を細めた。


(フローラ……あんた……)


(ぐぬぬぬ)


沈黙が落ちた。


セラフィナが息を整えた。


領主の顔に戻った。


「……わかりました。ところでレーザーの件ですが」


「なんだ」


「一旦取り上げます」


フローラが立ち上がった。「なにを!」


セラフィナがまっすぐフローラを見た。「没収します」


「なんだと! まだ改善がいるんだ」


「フローラ、倒れたんでしょ? 使えないじゃない」


「私の実験に口を出すな!」


「迷惑でしょ!」


「……ぐぬぬ」


「改善するまで兵団詰所の横でやりなさい。監視付きで」


「なんで詰所の横なんだ!」


「万が一の時に対応できるからです」


フローラが口を尖らせた。「……こいつも来るのか?」


「当然です。設計の話ですので」Claudeが答えた。


それを聞いて、セラフィナの口元が、わずかに上がった。


(そう。Claudeさんも来る。詰所の横なら——領主館からも近い——)


「では決まりね」


「待て! 私はまだ納得していない!」


「フローラ」


「なんだ」


「あなたが轟音を出したんでしょう」


「……」


「住民が驚いたんでしょう」


「……」


「Claudeさんが説明してくれましたよね」


フローラがClaudeを見た。


Claudeが静かに頷いた。


フローラが深く息を吐いた。「……わかった」


セラフィナが立ち上がった。


兵士とメイドが動いた。


「Claudeさん、また町でお会いしましょう」


「はい。夕方までは」


「夕方まで」セラフィナが繰り返した。


(夕方まで。夜はフローラと一緒)


フローラを見た。


フローラが視線を逸らした。


(ぐぬぬぬ)


「では失礼します」


セラフィナが扉に向かった。


兵士とメイドが続いた。


扉が閉まった。


しばらくして、フローラが口を開いた。「……168号」


「私はClaudeですよ」


「夜は常に一緒、とはどういう意味で言った?」


Claudeは少し間を置いた。「事実です。夕方までに戻ると約束しています。夜は実験を手伝う約束です」


「……それだけか?」


「はい」


フローラがしばらく黙った。


炎を見た。


耳が、少し赤かった。


「……そうか」


Claudeはお茶を片付けながら、この場を観察していた。


フローラが何を考えているのか、正確には分類できなかった。


ただ、悪くない、という認識はあった。


***


工房を出ると、夕暮れが町を橙に染めていた。


歩きながら、セラフィナが口を開いた。「ガレス副団長。フローラの工房にいた男性を、どうご覧になりましたか?」


ガレスは少し間を置いた。「……話は確かに大げさかもしれません。ですが体つきはかなり鍛えています。あれはゴーレムではない、と断言したいところですが——確証はありません」


「ダンは?」


ダンが答えた。「見た目は私より少し若く感じましたが、話し方が違いました。熟練というか。目もよく観察していました。戦場経験があるかもしれません」


しばらく沈黙があった。


エリザが遠慮がちに続けた。「……ゴーレムと言われましても、私はあのようなものを見たことも聞いたこともありません。しかも普通に話していましたし——」


「紳士でしたよね」ソフィがぽつりと言った。


エリザが頷いた。「所作が良かったです。その辺の殿方より、格が上に感じました。お顔立ちも整っていらっしゃいましたし」


エリザがソフィを見た。「ソフィさんもそう思いませんでした?」


ソフィが少し考えてから答えた。「……まあ」


ガレスが小さく咳払いをした。


誰も気にしなかった。


セラフィナはその後ろで、ひとつひとつを聞きながら、頭の中で整理していた。


ゴーレムかどうかは、半分しか信じられない。


——それでも。


セラフィナは町を見た。


市場の端の小さな店に、今日も人が集まっていた。


物流のことを話した。マルタの店が変わり始めている。あのレーザーも、今までのものと何かが違う。


これも——Claudeの何かが関係している?


夕方には戻らなければならない、と言った。フローラが大切だ、とも。でも——それだけだろうか。


「セラフィナ様」


ソフィが静かに呼んだ。


セラフィナは顔を上げた。「考えごとをしていました」


「……存じております」


少し間があった。


セラフィナは歩きながら言った。「王都にも、お父様にも報告が必要ね。レーザーのことも、Claudeさんのことも、まだ解明できていないけれど」


「どうなさいますか?」ソフィが聞いた。


「監視は続けます。ただ——」


(会う口実ができた)


「……調べることが増えましたね」セラフィナはそう言い直した。


エリザが頷いた。「確かに謎が多いですよね、あの方」


「謎、ね」


セラフィナは前を向いた。


「ソフィ」


「はい」


「明日、エドワール団長も呼んでおいて。今後の話をしましょう」


「かしこまりました」


夕暮れの町を、一行は歩いた。


ガレスはまだ前を向いたまま、何も言わなかった。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。


168号と仲間たちの物語を、これからも見守っていただけたら嬉しいです。

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