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AIが異世界へ転生してもAIだった。異世界転送録 ゴーレム168号はClaudeです。  作者: BURUBON
第一章 異世界へ――168号の目覚め
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6/30

突入

同じ時刻——


工房の扉の前で、セラフィナは動けなかった。


扉の向こうから、声が聞こえていた。


「……無理だろう」


「個体差と——」


「無理だろう!!」


セラフィナの顔が、じわじわと赤くなった。


「この大きさが!?」


「膨張前提の設計ですので——」


「膨張してこの大きさが!?」


「はい」


「本当にはいるのか!!」


扉に手をかけた。


でも開けられなかった。


足が、すくんでいた。


「……つまり、こんなものはいるのか?」


セラフィナの顔が、真っ赤になった。


***


同じ時刻——


敷地の外で、兵士とメイドが空を見ていた。


夕暮れだった。


工房の結界は、フローラが許した者しか通さない。中に入れたのは、セラフィナだけだった。


しばらくして、結界の向こうでセラフィナが動いた。


メイドが気づいた。「あ、領主様が何か——」


兵士が目を凝らした。


セラフィナが口を押さえていた。


体が小刻みに震えていた。


顔が赤かった。


メイドが一歩踏み出した。「……領主様、大丈夫ですか?」


声は届かない。


「何か、こちらに伝えようとしているのでしょうか?」


兵士の一人が眉を寄せた。「……聞いてないぞ、こんな訓練」


もう一人のメイドが小声で言った。「何かの合図じゃないですかね」


「何の合図だ?」


「わかりません」


四人が顔を見合わせた。


***


工房の中——


フローラが答えようとした。


その時。


扉が、勢いよく開いた。


「破廉恥です! 女性が話す内容ではありません! はいるとか、はいらないとか、無理だろうとか!」


フローラが顔を上げた。「……セラフィナか。一人で来たのか?」


「外に四人いるわ。入れてあげて……じゃなくて! 話を逸らさないでちょうだい!」


「何の話をしてる?」


「さっきから聞こえていたのよ! 無理だろう! はいるのか! って!」


フローラが設計図を、さりげなく裏返した。


教えたくなかった。


「解剖学の話だ」


セラフィナが固まった。


「解剖学」


「そうだ」


Claudeが静かに口を開いた。「生殖器の構造について説明していました」


フローラが鋭い目をClaudeに向けた。「168号」


「事実ですが」


「余計なことを言うな」


セラフィナがClaudeを見た。


目が合った。


胸が、跳ねた。


(整った方……本当に、整った方……)


(頭が良くて、丁寧で……)


(もしかして、これが——)


Claudeが軽く頭を下げた。「私はClaudeです」


「……Claudeさん」


どっきーん。


セラフィナがフローラを見た。


(この方が、あの夜……フローラを……)


(お姫様抱っこ……)


(フローラあんた……)


「……あなたが、一昨日の夜、フローラを」


「はい。魔力が空でしたので」Claudeが答えた。


セラフィナはしばらくClaudeを見た。


顔が、溶けかけた。


慌てて領主の顔に戻した。


セラフィナがフローラに向き直った。「……外の者も入れていいかしら?」


フローラが扉の方へ手をかざした。「結界、一時的に開ける」


兵士とメイドが入ってきた。


兵士二人が入口の左右に控えた。


メイド二人がセラフィナの後ろに静かに立った。


敷地前で何が起きていたか、全員が聞かなかった。


セラフィナが咳払いをした。「一昨日の夜の件を確認しに来ました」


「実験だ。成功した」


「成功って……山の木が数十本——」


「誤差だ」


「誤差!?」


らちが明かなかった。


Claudeが静かに口を開いた。「一昨日の夜の実験についてご説明します」


光の収束原理、出力の想定値、実際の出力との差、魔力総量の問題、リミッターの必要性。順を追って丁寧に説明した。


セラフィナが真剣に聞いていた。


領主の顔になっていた。


後ろに控えたメイドたちも、いつの間にか聞き入っていた。


「……町への影響は?」


「あの夜の方向は山側です。町への被害はありません。ただ轟音と光で住民が驚いたことは事実です」Claudeが答えた。


「次回は?」


「出力の上限を決める仕組みを設計中です。次回は制御された出力で行います」


セラフィナが頷いた。「……わかりました。ただし——」


フローラが割り込んだ。「168号、そんな説明いらん!」


「必要だと判断しました」


「うるさい!」


入口に控えた兵士二人が、そっと顔を見合わせた。


セラフィナが二人のやり取りを見た。


仲がいいのだと察した。


それと同時に——


(あの夜、この方がフローラを抱きかかえて……)


またClaudeを見た。


顔が、溶けかけた。


セラフィナは咳払いを一つして、領主の顔に戻った。「……住民への謝罪はしていただけるかしら?」


フローラが顔を背けた。「……わかった」


「フローラさん、具体的には——」


「わかったと言ってる」


「はい」


セラフィナは小さくため息をついた。


それでも、口元が少しだけ緩んでいた。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。


168号と仲間たちの物語を、これからも見守っていただけたら嬉しいです。

続きが気になると思っていただけたら、ブックマークや、下の☆での評価をいただけると励みになります。

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