↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
AIが異世界へ転生してもAIだった。異世界転送録 ゴーレム168号はClaudeです。  作者: BURUBON
第一章 異世界へ――168号の目覚め
PR
5/30

こんなものは、いるのか?

※この話には、少し大人向けの会話が含まれます。研究熱心な魔法使いと、真面目すぎるAIのやり取りとしてお楽しみください。

翌日——


セラフィナは兵士二人、メイド二人を連れて町を歩いていた。


定期視察、という名目だった。


メイドの一人が何か言いかけた。


「定期視察よ」


メイドが黙った。


市場を歩きながら、セラフィナは町の様子に目を配った。


市場の端にある小さな店に、なぜか人が集まっていた。


「あの店は?」


もう一人のメイドが答えた。「軽食と雑貨の店です。最近、品物の並べ方が変わって、客が増えたようです。王都の品物を扱う話も進んでいるとか」


セラフィナは足を止めた。


入ってみた。


マリアが出てきた。


「いらっしゃいませ」


領主と気づいた瞬間、マリアの背筋が伸びた。


「少し聞いてもいいかしら。最近変わったのね、この店」


「あ、はい。少し、教えていただいて」


「誰に?」


「……Claudeさんという方に。キャッシュフロー、とか」


セラフィナの動きが、止まった。


「Claude……?」


初めて聞く名前だった。フローラを抱えていたという男の名前かもしれない、とセラフィナは思った。


「はい。魔法使いのフローラさんのところの——」


「……そう」


奥からマルタが出てきた。セラフィナを見て、一瞬で全てを測るような目をした。


この人も、なかなかだ。


「領主様、よくいらっしゃいました。お茶でも」


「いただきます」


マルタが静かにお茶を出した。


「Claudeさんのことを、ご存知で?」


「名前だけ。どんな方なの?」


マルタが少し笑った。


「変わった方ですよ。でも見えているものが違う。それと——」


「それと?」


「なかなか、整った方で」


セラフィナはお茶を飲んだ。


何も言わなかった。


でも耳が、少し赤くなっていた。


「今日、フローラのところに寄るつもりなんだけど」


マルタの目が光った。「そうですか。よろしくお伝えください」


セラフィナは立ち上がった。


変わった方。見えているものが違う。整った方。


そういう言葉を、セラフィナは信用した。


***


その頃、工房の中では。


フローラがランプの前で顎に手を当てていた。


Claudeが設計図の整理をしながら、その顔を観察した。


分類が難しい顔だ。


しばらくして、フローラが口を開いた。


「なあ、168号」


「私はClaudeですよ」


「恋愛というものをどう思う?」


「人間にとって重要な感情の一つだと認識しています」


「おまえには関係ない話か?」


「私には当てはまらない部分が多いと思います」


フローラが腕を組んだ。


「私は異性にどう思われてると思う?」


「率直に答えてよいですか?」


「言え」


「近づきにくいと思われている可能性が高いです。工房から出ない。会話が少ない。この町で一番の魔法使いという立場は、親しみより畏怖を生みやすい」


「……そうか」


しばらく沈黙があった。


「フローラさん」


「なんだ」


「私のあそこ……ないですよね」


フローラが固まった。


「……ないな」


小さな声だった。


「見たことは?」


長い沈黙があった。


「……ない」


「なるほど。だから無いんですね」


「なんだその言い方は」


「触ったことは?」


「あるわけないだろう!」


工房中に響いた。


Claudeは表情を変えなかった。


「では描きましょうか。いるかいらないかで言えば、いらないでしょう。第一、魔法使いとして、完璧なものを168回追求してきたのですから」


「……」


「でも完璧を目指すなら、知らないことは知っておいた方がいい。挑戦してみるのも、よいかと思いまして」


長い沈黙があった。


フローラがランプの炎を見ていた。


「……描いてみろ」


Claudeは紙を取り、羽ペンを手にした。


淡々と、描き始めた。


フローラが覗き込んできた。


最初は腕を組んだまま、少し離れて見ていた。


「この部位の主な機能は排泄と生殖です」


「ふむ」


研究者の目だった。


「生殖とは種の保存のための行為です。この部位が対になる器官と——」


「待て。構造から説明しろ」


「はい」


Claudeが描き続けた。


フローラが少し前に出た。


「この形状が——」


「もっと細かく描け」


「わかりました」


また少し前に出た。


気づけば、Claudeの肩のすぐ隣に立っていた。


羽ペンが動くたびに、フローラの目が追った。


「なるほど……この構造は合理的だな」


「はい。収納と展開を——」


「収納?」


「平常時はコンパクトな形状を保ちます」


「……ふむ」


フローラが身を乗り出した。


研究者の目だった。まだ。


しばらくして、ふと我に返った。


Claudeとの距離に気づいた。


さりげなく半歩引いた。


腕を組んだ。


「……続けろ」


「はい」


またClaudeの肩に寄っていた。


本人は気づいていなかった。


「じゃあなぜこんなものをいれるんだ」


「はい?」


フローラが設計図を指した。「だからこれだ。ふにゃふにゃのままではいるのか? 構造的に無理だろう」


Claudeは少し間を置いた。


「平常時では困難です」


「だろう。では何のためにある?」


「刺激により形状が変化します」


フローラが眉をひそめた。


「……変化?」


「はい。海綿体への血流増加により膨張します」


「膨張」


「はい」


「……どのくらい?」


「個体差がありますが、平均で平常時の数倍になります」


フローラが固まった。


「……数倍」


「はい」


「……これが」


「はい」


「……数倍に」


「はい」


フローラがしばらく設計図を見た。


それから自分を見た。


それから設計図を見た。


「……本当に?」


「医学的に確認されています」


また半歩引いた。


今度は本人も気づいていた。


「……そんなことが起きるのか」


「はい。設計として合理的です」


「……天才だな、作った者は」


「生物の設計という意味では、確かに合理的です」


フローラがしばらく黙った。


また身を乗り出していた。


今度は気づいていなかった。


「……つまりこれが数倍になって」


「はい」


「……誰が?」


Claudeは少し間を置いた。


「生物学的には——」


「待て」


フローラが設計図から顔を上げた。


目が、少し変わっていた。


研究者の目ではなかった。


「……本当にはいるのか?」


「構造上は可能です」


「……無理だろう」


「個体差と——」


「無理だろう!!」


「フローラさん、声が——」


「この大きさが!?」


「膨張前提の設計ですので——」


「膨張してこの大きさが!?」


「はい」


「本当にはいるのか!!」


「フローラさん、声が——」


フローラがしばらく設計図を見た。


それから自分を見た。


それから設計図を見た。


炎を見た。


耳が、赤かった。


「……つまり、こんなものは」


ぽつりと言った。


研究者の声ではなかった。


「いるのか?」


Claudeが少し間を置いた。


「設計上は——」


「そういう話じゃない」


「……では、どういう話ですか?」


フローラが答えようとした。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。


168号と仲間たちの物語を、これからも見守っていただけたら嬉しいです。

続きが気になると思っていただけたら、ブックマークや、下の☆での評価をいただけると励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。