第32話 結婚式に向けて
無事に謁見を終えたマーガレットとアーサーは、侯爵邸に戻ってきた。
「ただいま戻りました」
「2人ともお帰り。首尾はどうだ?」
フレデリックに謁見の内容を伝えると、彼はほっとした表情を浮かべた。
「陛下は、身分に関わらず公平なお方だ。きっと、適切な処置をしてくださるだろう」
「はい。ただ、今回の件の決着を見届けてから辺境領に帰りたいところですが、結婚式の準備など、やることがあるのですぐに帰らなければなりません」
「…そうか。寂しいが、仕方ない。2人の結婚式、楽しみにしているよ。身体に気をつけて」
「はい。お父様もお元気で」
フレデリックに別れを告げ、2人はノースフォード辺境領への帰路に着いた。
帰りは行きほど急ぐ必要はないため、マーガレットは馬車酔いせずに済んだ。
「お帰りなさいませ」
セバスチャンとアンの出迎えに、マーガレットは気持ちがほぐれていくのを感じだ。
「ただいま戻りました」
「セバスチャン、変わったことはなかったか?」
「問題ございません。全て順調でございます」
「マーガレット様、お部屋に良いものが届いております!参りましょう!」
「良いもの?もしかして…!」
マーガレットは期待に胸を膨らませながら、部屋に向かった。
部屋に入ると、予想通り、マーガレットの目に純白のウエディングドレスが飛び込んできた。
「…うわぁ」
その素晴らしさに、マーガレットは思わず感嘆の声を漏らした。
マーガレットが選んだウエディングドレスは、Aラインと呼ばれるものだ。
袖はロングスリーブになっていて透明感と上品さがあり、ウエストから裾にかけてふんわりと広がる仕上がりになっている。
「さすが王家御用達のマダム•コネット。素晴らしい仕上がりね」
「試着なさいますか?」
アンがそっと尋ねてきたが、マーガレットは首を横にふった。
「そうしたいけど、万が一汚してはいけないし、結婚式当日までの楽しみに取っておくわ」
「承知しました」
「そうだ。アーサー様にお礼を言いに行かなければ」
確か、このドレスはアーサーのポケットマネーで仕立てたものだ。それを思い出したマーガレットは、お礼を伝えに行くことにした。
執務室では、アーサーがセバスチャンから不在中の報告を受け終わったところだった。
「アーサー様、不在中にウエディングドレスが届きました。素晴らしいドレスを贈っていただき、ありがとうございます」
「そうか、気に入ってくれたのなら何よりだ。ちょうど良かった。私もマーガレットに用があったんだ」
そう言うと、彼はマーガレットに紙束を渡した。
目を通すと、人名がずらりと並んでいる。
「セバスチャンがまとめてくれた、結婚式の招待客リストだ。結構な人数だが、覚えてくれ」
「承知しました。皇太子妃教育で、主な貴族の方については勉強したので、問題ないと思います」
「さすがマーガレットだな」
マーガレットの頼もしい言葉に、アーサーは微笑んだ。
数日後、エドワードは不適切な行動により王位継承権を剥奪されたこと、それによって国王の弟であるグレートブリテイン公爵の養子となり、王家に仕える立場になったこと、新たな皇太子には、第二王子のウィリアムが即位したことが正式に発表された。




