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転生令嬢の本領発揮  作者: 田中響


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第29話 皇太子エドワードの過ち

エドワード・グレートブリテインは、王宮の自室で頭を抱えていた。

その原因は、側近のカインから渡された、婚約者であるエミリーの皇太子妃教育に関する報告書だ。

以前の婚約者であったマーガレットとは、幼い頃はそれなりに交流していて、彼女の誕生日プレゼントも自分で選んでいた。

だが、エドワードの能力は他人より少し優れているだけに過ぎなかった。

その上、2つ下の弟で第二皇子のウィリアムは飛び抜けて優秀で、エドワードは常に負い目を感じていた。

皇太子たる者、常にトップでなければと、貴族学院に進学してからは人一倍勉学や剣術に打ち込み、文武両道の皇太子として周囲に認められていた。

次第に、顔を合わせるのは週1回のお茶会やパーティーでエスコートするときだけになっていたが、マーガレットも皇太子妃教育で忙しいのか、何も言わなかった。

そんな中、学院で出会ったのが伯爵令嬢のエミリーだ。

昼休みに、模擬剣で素振りの自主練習をしているところに偶然居合わせた彼女は、率直にアーサーの努力を称える言葉を掛け、その後も汗を拭くタオルや冷えた果実水を差し入れてくれた。

社交界での、周囲からの媚びへつらいにうんざりしていたエドワードにとって、エミリーの真っ直ぐな行動は新鮮で、惹かれ合うのに時間はかからなかった。

エミリーと会う回数を重ねるうちに、彼女の金髪碧眼に比べて、マーガレットの黒い髪、黒い瞳が地味に見えてきた。

マーガレットに会う回数が少ないことが、彼女に愛想がないからだと思うようになった。

いつの間にか、マーガレットへの認識が、「お互いに忙しくてなかなか会えない婚約者」から「地味で愛想がない婚約者」に刷り変わっていた。


マーガレットと婚約解消をした後、エドワードはすぐに国王である父にエミリーとの婚約を申し出た。

父は何か言いたげな表情をしていたが、エドワードはそれがエミリーの伯爵令嬢で、皇太子妃になるにはいささか身分が低いからだと解釈した。

最終的には、1年以内にエミリーが皇太子妃として十分な知識と教養を身に付けることを条件に婚約が認められ、彼女もこれを受け入れた。

しかし、報告書によると、皇太子妃教育を始めてから半年ほど経つにも関わらず、定められた内容の3割りしか進んでいない。

このままでは、条件を達成するのは不可能だ。

「お茶会で皇太子妃教育の進捗を聞いても、話を濁すか教師の愚痴をこぼすかだったわけだ…」

それに比べて、マーガレットは文句のひとつも言わずにもくもくとやるべきことをこなし、アーサーの弱音を聞いてくれることもあった。

(マーガレットとのお茶会は、居心地が良かった。彼女なりに、私を思いやってくれていた…)

そう気付いた途端、アーサーは激しい後悔に襲われた。

「どうなさいますか、殿下」

「こうなったら、一か八か、やってみるしかない」

そう言うと、エドワードはペンを手に取った。

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