散文詩 110 「読書会」
日々、心に残ったことを文字にしてみた
「読書会」
読書会というものに長く憧れていた。
欧米のBook Clubブッククラブである。
期日までに課題の本を各自読んできて、
読書会の日に自分の考察を発表して話し合うのである。
同じ本を読んでも、読む人によって解釈も感想も異なるものである。
私は他者の感想や意見が聞いてみたかった。
そして自分の考察を議論してもらったり、他者の考察を教えてもらったり、
どうしてそう思うのか知りたかった。
そして最近、憧れの読書会をみつけて参加した。
課題図書は、私にはグロテスクで異様で奇妙な作品だった。
映像にするならば、セピア色を基調に
無数のおどろおどろしい怪物が登場してくるような物語だ。
しかし読書会の大半の感想は「美しい」だった。えっ、どこが?
私とは全く異なる感想がたくさん出て来てとても面白かった。
各人の考察を順に話した後、主催者が解説や総評をして終了。
私が一番楽しみにしていた議論の時間は全くなかった。
なぜこの作品を「美しい」と感じたのか聞くことはできなかった。
この会には、他人の意見を批判してはいけないという約束事がある。
だから全員がそれぞれの感想を述べて、それでおしまいなのだ。
私の考えも、みんなの考えも、吐き出されて空中に浮いたまま消えていった。
昨今の風潮なのか、他者に意見することは憚られる。
自分の考えを主張したり、他者の考えを批判することをみな避けているようだ。
他者とうわべだけで関わるだけなら、人間として生まれた甲斐がない。
批判されたら、傷つけられたと思うのだろうか。
自分と違う考え方に触れる機会がなかったら、社会にいる意味がないのに。
傷ついたなんて自分がそう思っているだけ、思考の中だけだ。
どんどん傷ついて、どんどん強くなればいい。
柔軟性や深さや幅のない人間じゃつまらない。
こんなふうに考える人は、いなくなったのだろうか。
私はもう読書会に参加しなくなった。




