第11話 アイテムは何故効かなかったか?
今日で2012年は終了しますね。
この一年、いかがでしたか?
私は、二次創作の『けいおん!』を完結させ、小説家になろうにて新作を書き、二作品も投稿しましたが、なかなか人気が上がらなかったり、挫折したりと色んな体験をしました。
来年も小説を書き続けるかどうかは分かりませんが、来年もよろしくお願いしますね。
Side 『ないとめあ』
今日は絶対何かおかしい。
そう思った潤は、部活やお風呂を済ませ、九重優や有希に自分の部屋で勉強するから、あまり構わないでと伝え、自分の部屋に鍵を閉めて、「どこでも行けるくん」にて、『ノア』に帰還した。
そして、潤はメンバー全員がいるであろう会議室へと向かって、メンバーがいる事にほっとして一安心したのも束の間。それよりも、大変な事が起きたので、報告する事にしたのだ。
「ぼ、ボスっ!あ、あのっ!た、大変なんですっ!」
「何?何かあったの?」
「あ、あの、ゆ、優にっ、アレをですねっ」
「いいから落ち着いて、ね?いい子だから」
慌てている潤に、ボスは頭を撫でて潤を落ち着かせようとします。潤は、ひとまず深呼吸して、可愛らしい口を開く。しかし、まだボスに頭を撫でられている。
「あ、あのぉ、お、落ち着いたから、撫でないで・・・は、恥ずかしいのっ」
潤は頬に朱を浮かばせて、照れる。子供はいつまで経っても子供だから仕方ないとボスは未だに頭を撫で回し、このまま続けて報告してほしいと命令を下す。
「あ、あのね、魅惑する香水がターゲットに効かなかったの。他の人には効いたけど・・・」
「な、なんですって?!」
潤の報告に耳を疑うボス。しかし、潤の頭を撫で回す手は止まらなかった。
「で、でね?あぅ・・・そのターゲットは鼻を押さえたり、何かを詰めたりとか匂いを嗅がないような仕草とかね、なかったの・・・どうしてだと思う?はぅっ」
頭を撫でられるという事に耐性がない潤は、顔を赤らませて俯き、変な声で時折報告するが、それを聞いたボスはもっと自分に甘えてほしいと願いを込めて、潤の頭をポンポンと叩く。そして、撫で回す。
「そうなの・・・うーん、そうね、なんでだろう・・・」
ボスは潤の頭を撫で回しながら考えているが、撫でられている本人は止めて欲しそうに顔を真っ赤にしている。それを見かねたメンバーの一人である見た目が五歳くらいの女の子・・・コードネーム・ガブリエルが口を開く。姿は皆と同じように全身を隠すようにフード付きの黒いコートで隠しているが・・・コートが大きくてダボダボな為、袖から手は出せず、フードが大きくてあまり前が見えない。だったら脱げばいいじゃないか、と思われる方がいるのだが、彼女曰く『自分だけ正体を晒すのはイヤ』というワガママで今至る。
閑話休題。
「あ、あのぉ、多分、たぁげっとが宇宙人だからかにゃ?あぅっ、かんだ・・・」
舌っ足らずな彼女は、言葉を噛んだ事により、涙目になり、もじもじと身体をよじらせ、発言する。確かにその魅惑する香水は人間に通用する筈なのだ。故に同じ人間である九重優にも通用するのだが、通用しなかったのだ。
「ううん、それはないわ。サドキエルが恋を調べている間に、こちらで九重優の色んな情報を調べたけど、やっぱりニンゲンなの」
ボスの説明に、会議室は静まりかえる・・・だが、この『ないとめあ』内で、屈指の頭脳派の彼女・・・コードネーム・ラファエルが口を開いた。
このラファエルは、ガブリエルと同じ子供のような容姿だが、見た目は九歳ぐらいの非常に可愛い女の子だ。髪型や顔の輪郭は見えない。何故なら、ラファエルもフード付きの黒いコートを身に纏い、顔や体型を隠しているのだから。
「ボス、ザドキエルが使ったというアイテムの効果を教えてっ」
「いいわ。魅惑する香水という香水を自分に付着して、その匂いを嗅いだ人から自分に対してとても素敵な人なんだ、って思われるアイテムなの。」
ボスは、丁寧にラファエルに説明した。それに潤も、鼻を摘んだり、何かで鼻を防いだりしていないと供述して、ラファエルは、しばらく『うーん、うーん』と唸りながら考え、数秒後閃いた。
「ねぇ、ボス。それってさ、付ける前から素敵な人なんだ、って思われても効果あるの?」
「あっ!そ、そっか!だからそれで・・・っ!」
ラファエルとボスは何故九重優にアイテムが効かなかったかが分かったらしい。少し遅れながらも他のメンバー達は理解した。
「つ、つ、つ、つまり、アイテムを付ける前から私は素敵な人って優に想われている?!!だから、アイテムを付けても普段通りだったんだ!」
潤は、はにかみながら嬉しそうに甘い声をあげてしまい、今まで潤と苦楽を共にしたメンバーは、初めて見る潤の異変に、信じられないという視線を送り、その視線を感じた潤は、顔を赤く染めて、俯いてしまった。
「へぇ、恋っていう病は面白い症状を見せるわね・・・やっぱり恋は侵略に使えるわっ!そして恋でニンゲンを苦しめられるわ!」
ボスは潤の恋に興味津々なご様子なのだが、侵略に使えるかどうかは・・・さてはて、どうなる事やら・・・
「では、ザドキエル!恋をもっともっと研究しなさいっ!ターゲットともっともっと接触しちゃいなさい!」
「うんっ!じゃ、行ってくるねっ!」
ボスの命令に従い、潤は満面の笑顔をメンバーに向けて、「どこでも行けるくん」にて九重宅に向かったのであったーー。
一方、『ノア』内では・・・
「うふふっ、ホントに楽しそうで良かったわ」
「んねぇねぇ、ボシュっ!あぅ、またかんだ~・・・わたしも頭なでなでして~」
「あら、ガブリエル~。よしよし、甘えん坊さんねっ」
「わたしもっ!わたしもっ!さっき、役に立ったからっ!」
「あらまぁ、ラファエルも~?仕方ないな~、おいで?」
頭を撫でられるブームが巻き起こっている・・・らしい。
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side 九重優
早朝、布団を蹴飛ばし、洗面所前まで行き、誰かいるかを確認して、顔洗いや歯磨きをして、寝癖をとり、朝食を済ませ、制服へと着替えるというパターンが身体に染み付いているので、無意識にやってしまうのだ。
さて、今日はオレ達一年生を歓迎する為、歓迎遠足という行事が行われるのだ。学校の近くの公園にわざわざ遠回りしてえっちらおっちらと歩くらしいが・・・やる気が起こらねぇ・・・
リビングへと足を運ぶと、ソファーに座っている制服姿の潤と有希の姿を発見。
「あっ、優~っ!おっはよ~っ!」
潤はオレの存在に気づいて、無邪気な笑みを浮かべて手を振るのだが・・・日に日にテンションが上がるのは何なんだ?まぁ、仲良くなる事は悪くない事なのだが・・・
「おう、おはよ」
テンションが上がる潤に驚きを隠せないオレは、有希の右隣に座ろうとするのだが、有希の左隣に座っている潤が頬を膨らませてオレを睨んでいるのだが・・・何なんだ一体・・・
「優っ!こっちに座るのっ!座らないと怒っちゃうぞ!地球を今すぐ侵略しちゃうぞ!」
潤は、席が空いていると、潤の左隣の席が空いているとアピールするように、ポンポンとソファーを手で叩くのだが・・・潤のキャラってこんなんだったな・・・自らの事を宇宙人と名乗り、地球を侵略すると宣言してしまうからな・・・この電波お嬢様は・・・
「へいへい、地球を侵略されちゃ、人々は困るな。お前の要求通りにしてやろう」
オレは潤の脅しに成す術もなく、潤の左隣に座る事にしたのだ。すると、潤は顔を真っ赤にさせて、俯いてしまった・・・本当に何がしたいんだ!お前は!
「むふふふっ。やっぱりねぇ、潤は優の事が・・・キャーッ」
オレと潤の反応を楽しむようにニタニタ笑う有希。この野郎、この状況を楽しんでやがるな?しかし、何がやっぱりなのか分からない・・・や、待てよ・・・有希がここまではしゃぐから、恋関係の話に違いないと思うのだが・・・勘違いするなと言ってもムダだな・・・
「はぁ・・・」
オレは色々と諦めて、ため息を吐くしかなかったのだ・・・
「あら?元気ないわね、優。いつもの顔だけど・・・」
エプロン姿で現れた母親。どうやら、オレ達の朝食や弁当を作り終えたらしい。一応、オレと潤の弁当の中身は別々にしろと命じたので、またオレ達の弁当の中身を見られても、困らない工夫をした。
しかし、その母親から、驚きの発言を耳にした。
「あ、それから今日のお弁当はね、潤が作ったのよ~。楽しみにしててねっ」
真実かどうかを潤の表情を見たら、顔を赤くして俯いていた・・・そういえば、料理が得意という設定があったなぁ・・・
「うんうんっ、これでますます優と潤が・・・キャーッ!」
恋を夢見る有希は頬に両手を添え、くねくねと身体を動かしていた・・・本当に恋に関する事が好きなんだな?女ってのはよ・・・
「まぁ、なんだ・・・楽しみにしてるよ」
「うんっ!楽しみにしててねっ!優ぅ~」
オレに懐くかのように甘い声を出し、頬を赤らめてニコニコと笑みを浮かべる潤・・・はぁ、何を狙っているのだろうか?この電波お嬢様は・・・
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学校へと行き、教室へと向かい、教師の遠足のルートや交通安全の説明を聞き流し、運動場に全校生徒集まり、学年ごとに目的地へと向かう。
オレ、潤、桐島聡、濱田利香を筆頭にした一年一組の連中も仕方無さそうに、えっちらおっちらと足を運ぶのだが・・・マジで面倒くさいな・・・何故わざわざ遠回りするのか分からんぞ。
「九重・・・お前、めんどくさそうに歩いてんな・・・いつもの真顔だけど、何となく分かるぞ?なっ、夕崎さんっ」
「そ、そうだね、妖精さん・・・」
「ちげぇよっ!いつまでそのネタ引っ張ってるんだよっ!」
潤と桐島の漫才を聞き流しながらも、遠回りしながら目的地へと向かうが・・・
「優~っ、助けてよ~っ。妖精さんが怒ってるよ~」
潤は桐島に慣れていないのか、身体をビクビクさせながら、オレのブレザーの袖を摘む。はぁ、何故オレばかりに懐くのだろうか?
「仕方ないさ・・・ヤツは、何度言っても言う事聞かないドアホだからな・・」
「ドアホ言うなっ!」
今度はオレに桐島が突っかかってきた・・・マジで面倒くさい・・・
「クスクスっ、やっぱり九重くん達は楽しそう・・・」
濱田利香の呟きが聞こえたような気がしたが、あまり聞き取れなかったので、そっとしておいたのであったーー。




