↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
岡っ引きの源さんは、今日も朝帰り  作者: ねこまんまときみどりのことり


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

31/32

人事の移動

 近江儀三郎の祖父、酒井家の前当主である酒井琢磨は、近江儀三郎と共に記した書簡を庵原家の当主に届けた。


 進之介の祖父である庵原家の当主雪之丈は、差出人を見て不思議に思った。


(北町奉行の近江儀三郎殿から、進之介の有能さを書いた文が届けられた。それに彼の祖父である酒井琢磨殿からも、庵原家の後継に進之介は適していると……。さてはて、進之介は何処でこの両人に気に入られたのか? 今まで聞いたこともなかったが。

 第一線を退いたと言えど、未だ琢磨殿の影響力は強い。それに儀三郎殿の人気も侮れぬし。今後の付き合いを考えれば、進之介が庵原家を継ぐのは良いことかもしれんな)




 様々な後継候補を検討していた雪之丈だが、その手紙が後押しとなり進之介が庵原家に迎え入れられることになった。


 後に進之介が庵原家に入れた要因が、近江儀三郎らの手助けだったことを知り、彼は苦悩することになる。そして疑問を晴らす為に近江家へ訪問し、心のうちを伝え合うことに。それ以来彼らは多くを語り合い、共に江戸を守って行くのであった。




 そして…………。


 今まで次期後継が進之介であった片切家は清次郎が継ぐことになり、正式に分家より籍が戻されることに。

 分家の片切家は新たに後継候補を探すことになるが、部屋住みとなっている旗本の子息達は多くいる為、後釜はすぐに見つかるだろう。


 庵原家の後継争いは特に競争率が激しく、進之介は強い焦燥感を抱いていた。事件捜査に多少無理があったのも、その影響があった。


 引き継ぎは滞りなく行われていき、水面下で情報は広がるだろう。次の人事移動の際には、知らされていない末端の者が多少混乱するだけだ。



 役職移動の直前にそれぞれの籍は移され、人事は滞りなく変わった。



 片切進之介は庵原進之介となり、老中に就任した。

 浅賀清次郎は片切清次郎に戻り、与力となった。元々清次郎は片切清次郎であり、養子に行った際も片切清次郎もままであった。

 けれども今までは、進之介の指示で同心として勤務する為、浅賀清次郎と名乗っていたのだ。

 詳細を知る者は少なからずいるが、騒ぐことなく黙していた。


 源やお菊は、清次郎が片切清次郎だったことを知らない。町民達も同じだ。


 だからこそ、祝福の声が届く。


「清次郎さん良かったね。大出世だね」

「大きい旗本の家の養子になったんだろ? それに同心から与力になんて、すごいじゃないか?」

「もう下町には来ないのかい? 寂しいねえ」

「頑張ったから偉くなったんだろ。良いことじゃないか。祝福してやろうぜ!」


 そんな感じの声が清次郎に届いた。


 浅賀清次郎としての人生は、お菊が5歳の時から始まった。約10年の同心生活により、清次郎は下町にすっかり馴染んでいた。


 だからみんなの清次郎は、浅賀清次郎なのである。最初は「同心なんて身分が低い役を、何故僕が!」と、兄(進之介)の命令に嫌々従う清次郎だったが、今は彼を取り囲む人達のことを大好きになっていた。


 特に源とお菊のことは、家族のように思っている。

 しかし今後は住む場所も変わり、公に二人に関わることは出来なくなるだろう。


 会う際は捜査の関係はない、ただの訪問だけで……。



 今回の決定に清次郎は口を挟む隙はなく、全てが事後報告で決められていた。


 それでも悪意はなく、誰もが良かれと思ったことだろう。これまでの苦労が実ったと思う者も、多かっただろう。



「もう気軽に話すことも出来ないのだろうか?」



 本来の身分に戻り良かった筈なのに、心には孤独が押し寄せていた清次郎。生家に戻り両親に迎えられたのに、何故か違和感が拭えなかった。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。