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岡っ引きの源さんは、今日も朝帰り  作者: ねこまんまときみどりのことり


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3人の腰元達

 お菊を迎えに行く腰元達は、彼女の母神楽と既知の友であった。ただ家の外聞もあり、表だって付き合うことは少なくなっていたが、それでも文のやり取りは続いていた。


 神楽は家を支え、病の父親を支える為、生涯嫁ぐことはないと文には認められていたと言う。


 だからこそ伊折将勝に仕えていた腰元の彼女達も、主である彼と神楽が男女の仲になると思っていなかった。


 将勝の妻絹江も、腰元の女ならその可能性もあると様子を窺っていたが、家具や置物のよう身分が下の者には目もくれていなかった。神楽も範疇外で、主に懐く犬のようなものだと考えていた。


 それ故に発覚した際の、絹江の怒りは強かったのだ。目には見えていた、過剰に見えても排斥しておけば……と。



 腰元の青葉、葛樹、雨咲は、それぞれの邸宅で家庭内教師により教えを得ていた。

 読み書き算盤、道徳や裁縫、礼儀作法、薙刀などを神楽の母親の実優(みゆ)より。

 今は石高500程の旗本夫人であったが、生家は医師が多く輩出される、過去には殿の御典医も勤めた旗本である。

 ただ国の要職に就く者は少なく、欲のない学者家系と侮られてもいた。


 神楽の父が寝付いた時、みすみす旗本の称号を奪われたままでいたのも、その辺が関係していた。家内で争うよりも、神楽の父の治療を優先にしたいと思ったのだろう。それに下手に逆らえば、それこそ命を狙われかねない。

 



◇◇◇ 

 腰元達が江戸を出発する前。



 実優の繋がりで娘達は交流を持ち、友人となった。石高の差により経済面の違いはあったが、娘達は学問を通じてお互いを知り、とても穏やかな良い時間を持っていた。

 神楽の父が健在であったなら、今もそれは続いていたのだろう。神楽の母は、彼女が10歳の時に病でこの世を去り、父子で支えあってきたと言うのに。



 青葉は柳生青葉。武力に秀でた家の娘である。薙刀、弓道、鎖鎌や懐剣等も、父親の方針で扱える学んできた。

 

 葛樹は上杉葛樹。叔父が商売で有名な三井家。様々な仲介を行い、流通を動かして領地を裕福にしている。


 雨咲は池田雨咲。吟剣詩舞(ぎんけんしぶ)を嗜む家門。日本舞踊、能、歌舞伎にも造詣が深い。日本刀や扇(鉄扇)で舞い、時にはその型から攻撃も出来る仕様を編み出す。



 そんな3人は疑われずにお菊に近付く術を考えていた。ちなみに全員独身(離縁、未婚、寡婦)である。



「自然に近付く方法かぁ? どうしよう」と葛樹(くずき)が呟くと。


「用心棒はどうかしら? 得手物は持ってきたし。私が何人でも倒してあげるわ!」とシタリ顔の青葉(あおば)


「馬鹿ねえ。目立つでしょ、そんなことすれば。あくまでも自然にしなきゃ」と雨咲(うさき)が呆れ顔で言う。



 色々考えた3人。暫くしてから、一番先に雨咲が閃いたとばかりに目を見開く。


「小間物売りにしましょう。青葉、あんたは背も高い方だし、男顔だわ。それも若い娘が好むようなね。商品は葛樹の家で見繕って貰いなさい。伊折様の使いで江戸に行くから、装飾品を3人分見繕ってとね。お代は後払いにして貰って。私達で高く売って、差額を調査費に当てましょう。良いわね!」


「私が男装なんて、無理よ」

「出来るでしょ。いつもガハガハって笑ってるし、イビキが酷くて離縁したでしょ?」

「くぅ~、酷いけどその通りよ」

「それに旅をするなら、女だけより(男装でも)男連れの方が安心でしょ?」

「ま、まあ、そうよね。それには同意するわ」



「お父様を騙すの? そんなの無理よ」

「騙さないわ。私達で売るのだもの。京の素晴らしい技術で作られた簪を、江戸で売り込むチャンスなのよ。女が外に出ることなんて、なかなか出来ないことなんだから」

「そ、そう言われると、そうね」



 ※小間物売りは、髪を結う為の元結や簪、櫛、口紅やおしろいなどの化粧品などを扱った。女性客が多かったため、得意先回りはもっぱら色男が多かった。




 何だかんだと丸め込み、計画は進んでいく。雨咲は既に将勝より資金を預かっていた。余裕のあるくらい十分に。けれど雨咲は、その資金以上に長く腰を据えて、お菊と関わるつもりである。


 将勝の邸では雨咲が父に依頼し、人を送り込んでいる為人員的に問題はない。彼女の母方は公家の血を引いている名家であり、絹江でも下手に口を出せない。寡婦となり勤めに出た娘を案じる彼女の父は、全面的に味方をするつもりである。


 青葉と葛樹は親に内緒にしているが、雨咲は将勝に承諾を受け、父親だけに詳細を伝えている。その為護衛が、20名程着いていく予定である。



 そんな感じで作戦が決まり、彼女達は京を出発したのだった。



 ※老中は4、5名が配置されている。現在将勝は息子の葬儀の為、京の邸に戻っていた。




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