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癒やしの力を奪われたモブ少女、死に戻りで復讐を誓う  作者: にのまえ


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8/11

8話

 午後になり、約束の時間となった。地下室へ呼びに来たメイドに案内されて、私は使い魔のギギと一緒に庭へと足を踏み入れた。


(ま、眩しい……)


 薄暗い地下とは違い、柔らかな陽光に思わず目を細める。


 メイドはそんな私の様子も気にすることなく「こちらです」と案内され向かうと、庭の中央に白いテーブルが見えてくる。そのテーブルには金色の長い髪をしたアーシャルが座っていた。


「お嬢様、お連れしました」

「アーシャル様、お待たせしました」


 メイドと私が声をかける。彼女はテーブルから立ち上がり、迎えるように青い目を細めて微笑んだ。


「嬉しい。ミサノさん、来てくれたのね」


 けれど、その目が私の姿を捉えた瞬間わずかに見開かれるも、その表情はすぐに可憐な笑顔へと変わった。


 私はドレスのスカートを持ち、アーシャルにカーテシーをした。いつもとは違う、淑女らしいカーテシーにアーシャルの口元がぴくりと動いた。


 それを私は見逃さなかった。


「……ミサノさん、あなたの好きなお茶と苺のケーキを用意したわ」


 アーシャルはそう言って、優雅な仕草でテーブルへ視線を向けた。


 白いテーブルの上には銀のティーセットが並び、香り高い紅茶の湯気が立ち、真っ白な皿には艶やかな苺が飾られたケーキが用意されていた。


「美味しそうなケーキ」


「でしょう? さあ、こちらに座って」


 傍から見れば、仲の良い友人同士あるいは親友に見えるかもしれない。けれど実際は違う。彼女はこの屋敷のお嬢様で、私は地下室に閉じ込められている娘。


 近くに控えていた、メイドが椅子を引いてくれたので腰を下ろす。するとアーシャルが、ふと私の腕に視線を落として、じっと見つめる。


 そして。


「ミサノさん、腕の傷を治した?」


「えっ?」


(あの小さな傷に気づいたの?)

 

 驚いて足元を見ると、ギギもこちらを見上げていた。


〈この娘、魔力がないくせに。なかなか鋭い観察眼ですね〉


 記憶を思い出した後、試しに使った癒しの力。

 その傷を治したときの魔力で、屋敷を探っていたギギが気付き、私はギギと出会えた。


「傷ですか? アーシャル様どの傷でしょう?」


 私はわざと首を傾げながら、腕を差し出す。

 

 その腕には今も彼らに付けられた、無数の傷痕が残っている。その中でも、ひときわ目立つ大きな傷痕を見せると、アーシャルはわずかに身を引いた。


(私だって思うことだもの。こんな酷いキズは見たくないよね)


 けれどアーシャルはキズから目を逸らし、すぐに表情を整える。


「ごめんなさい。私の勘違いね」


 そして、アーシャルは話題を変えるように「ねぇ、ミサノさんは知ってる?」と微笑んだ。

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