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癒やしの力を奪われたモブ少女、死に戻りで復讐を誓う  作者: にのまえ


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7話

「そうでした。お茶会へ行く前に、ぼくに名前をつけてください」


「あなたに名前をつける?」


「はい」


 黒猫はこくりと頷いた。


〈使い魔は名前を授からなければ、主人にお仕えできないのです〉


 そう言われ、私は黒猫の名前を考え始めた。


 タマ、クロ、ピエ、ジャック……。

 名前をつけるなんて初めてだ。どうせなら、前世で好きだったキャラクターの名前にしようか。


(そうだ、ギルバート様なんてどう?)


 ……うーん。やっぱり、それは少し気恥ずかしい。私はしばらく考えた末、ようやく名前を決めた。


「うん、決めた。あなたの名前はギギ。どうかな?」


〈ギギですか。なかなか素敵な名前ですね。では、ミサノお嬢様。ぼくの額に手を当ててください〉


 私は言われた通り、そっとギギの額に手を伸ばした。指先が触れた瞬間、まばゆい光が溢れ出し、空中に魔法陣のような紋様が広がった。


(これって、魔法陣?)


 やがて光が弱まり、魔法陣もゆっくりと消えていく。それと同時に、閉じられていたギギの目が開いた。


〈ただいまより、ぼくはミサノお嬢様の使い魔です。何なりとお申しつけくださいませ〉


「何でもいいの?」


〈はい。ただし、できないこともございます〉


 そう答えたギギは、ふいと視線を逸らした。


(もしかして、私に実力が足りないとできないこともあるのかな?)


 それなら、私がもっと力をつければいい。


「わかった。それじゃあ、このドレスを着るのを手伝ってくれる?」


〈かしこまりました〉


 ギギに手伝ってもらいながら、私はドレスを整えた。それから欠けた鏡と細いひびが入っている姿見をタンスの隙間から引っ張り出して、昔、髪が長かった頃によくしていた編み方を思い出しながらなんとか形にした。


「これでいいかな?」


 姿見に、自分の姿を映してみる。


(うん。久しぶりにしては、案外うまくできたわね)


「ありがとう、ギギ」


〈いいえ。しかし、ミサノお嬢様がお召しになっているドレスは、サイズが合っておりませんね〉


 サイズが合っていない……。


(ああ、やっぱり見ただけでわかっちゃうか)


 アーシャルとは身長も体格も違う。彼女のお古であるこのドレスが、私の体に合わないのは当然だった。


「これでいいの。このドレスしか持っていないから。それに、これを着ていかないとね」


 私は少し笑って答えた。

 ギギは眉をひそめたものの、それ以上は何も言わず、納得したように頷いた。


〈ぼくの姿は、ミサノお嬢様以外には見えません。お茶会にもお供いたします〉


「お供?」


 思いがけない言葉に、私は目を丸くした。


「えっ、一緒に来てくれるの? 嬉しい!」


 思わず声が弾んでしまった。

 そんな私を見て、ギギは驚いたように目を見開く。


 しまった。喜びすぎたかもしれない。

 私は慌てて口元を押さえ、笑って誤魔化した。


(だって、今日のお茶会で何を言われるかは、だいたいわかっているもの。一人で行くのは少し怖かったから、ギギが一緒なら心強いわ)


 姿見に映る自分を見つめながら、私は前回のお茶会を思い出した。


 アーシャルと庭園でお茶会が始まって間もなく、あの嫌な兄弟たちがニヤニヤと笑いながらやって来た。


『お茶してるのか?』


『あれ? ミサノさんもいたんだ?』


 彼らは私の乱れた髪や、サイズの合わないドレスを見るなり、馬鹿にするように笑った。その様子を、アーシャルはしばらく黙って眺めていた。


 そして、頃合いを見計らったように口を開く。


『私のお古だから、サイズが合わなかったのね。ミサノさん、ごめんなさいね』


 謝罪の言葉とは裏腹に、彼女の口元には笑みが浮かんでいた。それに続いて、兄弟たちも好き勝手なことを言い始める。


『はっ、お前には十分すぎるだろ?』


『そうそう。むしろ、着られる服があるだけ感謝しないとな』


『……』


 容赦のない言葉が次々と浴びせられる。

 私は膝の上でぎゅっと手を握り、ただ俯いて耐えるしかなかった。


 そんな私の反応を面白がるように、彼らはしばらく嘲笑を続けたが。やがて飽きてきたのか、兄弟の一人が面倒くさそうに手を振った。


『もういいか。さあ、帰った帰った』


『ああ、面白かった。用事は済んだから、もう帰っていいよ』


 彼らは空いた席にどかっと腰を下ろすと、まるで邪魔者を追い払うかのように、しっしっと手を振った。


 最初から、私を傷つけることだけが目的だったのだ。あのお茶会は、彼らにとってただの憂さ晴らしにすぎなかった。


 そして今日のお茶会でも、同じことが繰り返されるはず。

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