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癒やしの力を奪われたモブ少女、死に戻りで復讐を誓う  作者: にのまえ


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4/11

4話

 うーん。アーシャルだけだったらまだいい。

 問題はガタイの良いアーシャルの兄弟たちだ。私は小柄で華奢だし、身長だってそれほど高くない。まともに力比べをしたところで、敵う相手ではない。


(当日の私の衣装がメイド服なら、まだワンチャンあるかもしれないけど……。ひらひらな、ドレスだったら話は別だ)


 小説はどうだったのか、思いだせない。まあ、いざとなったらスカートを掴んで、ヒールを脱ぎ捨てて走るしかないから、王城の中を詳しく知りないな。


(小さい頃、かけっこは早かったはず!)


 ……

 …………


「……はぁぁぁぁあ、協力者が欲しい」


 私一人ではまじで、力任せに逃げる未来しか思い浮かばない。そんな、自分に不安しかなかった。


〈なら、ぼくがお手伝いします〉


「⁉︎」


 いきなり頭の中に響いた声に、私はベッドから飛び起きる。すると私の目の前に淡い光が現れ、ぱんっと弾けて、なかから赤いリボンを首につけた黒猫が現れた。


(猫?)


 その猫は私を見ると、深く頭を下げた。


〈ああ、よかった。微量ではありましたが、魔力の痕跡を追って、ようやく見つけましたミサノお嬢様〉


「魔力? ミサノお嬢様⁉︎」


〈はい。あなた様は、魔巣のある辺境の地を治める、ストーリア男爵家のご息女ミサノ・ストーリア様です〉


「魔巣? 男爵? ミサノ・ストーリア?」


 その苗字は初めて聞くものだった。


(チラッと男爵の娘って書いてあったけど、ミサノって苗字あったんだ)


 黒猫は辺りを見て、尻尾をバシンバシン床に打ち掛けた。


〈まったく、ミサノお嬢様をこんなところへ追いやるなんて、許せませんね。あの人間を呪ってしまいましょうか? それとも、魔法で部屋の中を変えてしまいます?〉


「呪うのはいいけど……部屋の見た目は変えずに、ベッドだけふかふかにしてくれる?」


 メイドが食事を運んでくるたび、部屋に異変がないか確認している。あまり部屋の様子を変えてしまえば、怪しまれてしまう。


〈見た目はそのまま、ベッドだけふかふかですね〉


 黒猫が嬉しそうに尻尾を揺らすと、ベッドの上に淡い光がふわりと広がった。


〈できました。座って確かめてください〉


「もうできたの?」


〈はい〉


 見た目は何も変わっていない、古びたベッドも、薄い毛布もそのままだ。猫の言うとおりに、そっと腰を下ろしてみた。


「わぁ……!」


 身体がふわりとベッド沈み込んだ。あんなに固かったベッドが、まるで雲の上に座っているみたいに柔らかい。


「すごい。これなら、ぐっすり眠れそう」


〈ふふん。これくらい簡単ですよ〉


 黒猫は得意げに胸を張る。

 その横で私はベッドに横になり、ふかふかの感触を堪能する。すると黒猫が、ぴょんとベッドの上へ飛び乗ってきた。


〈それでは、次は枕もふかふかにしましょうか?〉


 黒猫が尻尾を一振りすると、枕まで見た目は同じだがふわふわになった。


「ふかふか最高」


 思わず頬が緩んだ。


〈人間め。ご主人様が、この公爵家の人々は何かを隠している、見張れと命令を受け。屋敷を見張っていたところ近くで、ご主人様とよく似た魔力を感じ。その気配を追い探し回った結果、地下室であなた様を見つけました〉


 私の魔力を感じた? さっき腕の傷を治したときに使った「ヒール魔法」かな。


「微量の魔力で見つけるなんて、凄いね」


〈あたりまえです。ぼくは優秀な使い魔ですから〉


 黒猫は嬉しそうに目をつぶる。


「ふふ、そうなんだ」


  なら、この子にここを出る手助けをしてもらえるかもしれない。そう思った瞬間、ふと家族のことが頭をよぎった。私の家族。確か小説では、アーシャルが公爵家の娘だと判明した後日、公爵が私の家族を探したものの、すでに亡くなっていたと聞かされていた。


(……それは、小説の内容と同じ)


 でもは、それが嘘だった。

 胸の奥に、嫌な予感がじわりと広がっていく。


(どうして……? 公爵たちはどうして、そんな嘘をついたの?)


 考えると、ひとつの可能性が浮かんだ。


『お前はひとりぼっちだ』

『誰も、お前を助けてはくれない』


 そう思い込ませ。


『大丈夫、私がそばにいるよ』

『私と一緒にいようね』


 アーシャルに依存させ、私から逃げる道を奪うため。

 もう、私の癒しの力を奪う計画が始まっている。そう考えた私の背筋がぞくっとした。

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