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不滅のダンジョンマスター  作者: やみあるい
聖女邂逅の章

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152.ミーシェの正体

あらすじ


ダイアウルフが私を捨てて、ミーシェに恭順を示した。混乱しつつも、私はその状況をミーシェに悟られぬよう釈明する。そして、話の流れから、自身が付近のダンジョンのダンジョンマスターであると告げた。

ミーシェと対話を行いつつ、裏で状況を考察していた私は、ダイアウルフとの絆が切れた原因に行き着く。しかし、肝心のダイアウルフが私を見捨てた理由がわからない。私は未知の要素が関係している可能性を疑いつつ、一先ず、ミーシェに直接の原因となった名づけを行わないように伝えた。





「そうだ。マスターさん。私、魔の領域のダンジョンに興味があるの。よければ、ちょっとだけ案内してくれないかな?」


 一息ついたところで、ミーシェからそのような要望があった。

 どうせ、このままミーシェがこの森を彷徨い続けていれば、近いうちにダンジョンの場所は知られるだろう。ならば、ここで応じぬとも同じことか。


 ――奥までは案内出来ぬぞ


「ええ。勿論、それでいいわ」


 一応、そこに断りを入れておくと、ミーシェは嬉しそうに了承した。その言葉には相変わらず、悪意も、敵意も、嘘も無い。いっそ、清々しい程に。


 ――分かった


 こうして私は、ミーシェ一行をダンジョンまで案内することにした。




「ここがマスターさんのダンジョンの入り口なの?」


 ――ああ、そうだ


 ミーシェは私が案内したダンジョンの入り口から内部をじっと見つめている。恐れから入るのを躊躇しているのかとも思ったが、どうやらそう言う風でも無い。なんだ?

 そう言えば、以前ダンジョンにやってきた騎士が、私のダンジョンの事を悪し様に罵っていたが、もしかして、今回もまたそう言う感じか?


 ――何か、我がダンジョンにおかしなところでもあったか?


「あ、ううん。こういうタイプのダンジョンは初めて見たから」


 伝えてきた言葉は真実なのだろう。だが、『読心』の精度が良いせいか、そのイメージの裏に何かを隠していることも、透けて見えた。


 ――ミーシェは違うダンジョンを見たことがあるのか?


「うん。と言っても、私が知ってるのは、人間の領域にある神々が創られたダンジョン、神の試練だけだけど」


 神の試練。その言葉を聞いた瞬間、『記憶』が魔王レティシアとの対話を思い起こさせる。思い返せば確かに、魔王レティシアもそのような事を言っていた。確かダンジョンの有用性を示す際に、チラリと出た言葉だったか。


 ――神の試練? それは、このダンジョンとは違うのか?


「うん、結構違うかな。神の試練だとね……」



 私の問いに答え、ミーシェはそこから神の試練について解説してくれた。多少、説明に分からない点もあったが、その都度、尋ねればミーシェは快く捕捉してくれる。そのお陰で、私は人間が神の試練と呼ぶダンジョンの事を、大よそ理解することが出来た。


 神の試練。

 それは、ダンジョンを嫌う領域教会が唯一認める、領域教会に属する神が作り出した人間の領域にのみ存在するダンジョンの総称なのだそうだ。

 神の試練は、神のいる国には大抵一つ存在しており、領域教会の管理の下で多くの者たちに門戸を開いている。そんな神の試練の外観は、全てが一様に塔のような形をしており、利用者は上を目指して上っていく。また、その内装は非常に整備された美しい造りだという。

 他に違いを挙げると、神の試練では人を惑わす迷路や罠の類いは一切、存在しない。代わりに宝箱のようなものも置かれてはいないそうだ。さらに、塔内を徘徊するのは魔物では無く、神獣と呼ばれる存在らしい。この神獣の強さは塔を上に進むほど、強くなっていくそうだ。そうして、そのダンジョンの最上階に到達すると、人間は神から様々な祝福を授かるらしい。

 故に、人間はこのダンジョンを神の試練と呼ぶそうだ。



 ミーシェはダンジョンと一括りに呼んでいたが、どうも話を聞いていると、通常のダンジョンとは違う気がする。そもそも、神の試練にはダンジョンコアが存在しないそうだ。代わりにダンジョンの管理は、そのダンジョンを管轄する神が行っているらしい。それは果たして、ダンジョンと言えるのだろうか?

 一応、倒しても復活する神獣がダンジョンたる由縁とされているらしいが、ダンジョンコアたる私から言わせてもらえば、それをダンジョンと呼ぶのは憚られる。完全に似て非なるモノだ。


 しかし、そうだな。ダンジョンと区別する意味も込めて、私もそれのことは神の試練と呼んでおくか。尤も、呼ぶ機会があればの話だが。



 一通り、神の試練に関する話をした後、ミーシェはお友達をダンジョンの手前に待機させると、ダンジョンへ足を踏み入れた。その瞬間、ミーシェのステータスが私へ開示される。

 そうして、何気なく確認したステータスに記された言葉に、一瞬、私は主思考を止めた。



 名前:ミーシェ・エトローダス

 種族:人間 職業:聖女

 年齢:17

 カルマ:-99

 LV:1/99

 スキル:『信仰LV10』『神聖魔法LV10』『神託』『魔力感知LV5』『魔力操作LV5』『生活魔法LV5』『魔法陣学LV3』『筆記LV5』『計算LV5』『礼儀作法LV5』『森歩きLV1』『採取LV1』

 称号:【愛されし者】【聖女神リクシルの寵愛】【古都ノムカピテールの民】【聖女神リクシルの使徒】【博愛の聖女】【癒し手】【鉄壁】



 …………聖女?

 確か、魔王レティシアとの会話で、こちらもちらっとその名が出てきたことがあったはずだ。なんでも、勇者と聖女は領域教会が認定するとか。

 ミーシェがその聖女?

 多少の驚きもあったが、同時に何処か納得している自分もいた。ミーシェが使っていた『神聖魔法』は『信仰』と深い繋がりのあるスキルだというのが、私の中での定説だ。ミーシェがその強力な使い手なのだとしたら、『信仰』の対象であろう神が集う領域教会の関係者という肩書は、順当なものと言えるだろう。少なくとも、ありえないと言い切るほどに筋違いなことではない。

 ただ、そうなると気になるのは、ミーシェの魔物たちへの態度だ。魔王レティシアから聞いた話では、領域教会の者たちは魔物を毛嫌いしているという話だった。その嫌悪から魔物と関係の深いダンジョンまで駆逐している、と。だが、ミーシェの今の状況は、明らかにその情報と矛盾している。

 魔王レティシアが嘘を付いたとは思えない。言っていないことがあったとしても、嘘はついていないはずだ。

 では、魔王レティシアが話を盛っていたのだろうか?

 それとも、このミーシェが領域教会の中で異端なのだろうか?

 或いは、私はミーシェに欺かれているのか。いや、それは無いように思う。

『読心』で読み取ったミーシェから伝わってくるイメージは純粋そのもので、そこには一欠けらの嘘も含まれているようには思えない。『敵意感知』で敵意を一切感じ取れないことも鑑みれば、少なくともミーシェに欺かれているということは無さそうだ。


 他にミーシェのステータスで気になる点はというと、『神託』というスキルの存在か。スキルレベルの表記が無いということは、何か特殊なスキルのようだが、地脈を探ってもいまいち情報が出てこない。スキルレベルが表示されないということは、ユニークスキルか、ギフトスキルか、もしくは種族固有スキル。地脈を探っても出ないということは、人間側にのみ存在するスキルだと思われる。

 スキル名から連想するに、ミーシェが信じる神と繋がる何かだろうか。イメージとしては、受信専用っぽいが。もし、送信も可能だとしたら、かなり面倒だ。最悪、神へと私の情報が伝わり、また人間がここへ押し寄せてくるかもしれない。

 とはいえ、もうミーシェと接触してしまった以上、今更どうすることも出来ない。なるようになると考えるしかないが、一応、心にだけは留めておこう。



 ダンジョンへ侵入したミーシェは、暫く入り口付近で周囲を見回した後、周囲に淡く光る球体を生み出すと、意を決して奥を目指して歩き始めた。その歩みはとても堂々としたもので、分かれ道を前にしても、一切の迷いすら無く進んでいく。まるで最初から全てを理解しているかのように。

 ステータスに探索系のスキルは無かったはずだが、一体、何を指針として歩いているのだろうか?

 と、そうして観察していたら、ミーシェが勢いよく罠を踏み抜いた。それはもう、堂々と。

 当然の如く、発動する罠。それは一直線に、ミーシェへと放たれた。

 が、放たれたものは、ミーシェに当たることなく、ミーシェの手前で透明な壁に阻まれる。

 まあ、どうせ第一階層の罠だ。当たったところで大したことは無い。放たれたのは少量の冷水だから、当たっても少しひやっとするだけである。

 とはいえ、驚きすらしないとは。そもそも、発動した罠に気づいてすらいないようだ。

 鈍感なのか、それとも大物なのか。判断に迷うな。


 それにしても、これがミーシェの使う透明な壁。

 冷水が当たった瞬間、当たった場所へダンジョン内の知覚を集中させると、その瞬間、そこに何かが存在したことは分かった。しかし、それがなんであるかは分からない。分かるのは、それが魔力とは違う何かによって構成されていることだけ。

 ふむ、確かにこれは壁だ。触れた感触から受けるイメージはガラス。全く引っかかりの無い綺麗な透明の壁。だが、その強度は桁違いなのだろう。触れた感触だけでそれを確かめることは出来ないが、これまでの監視結果がそれを証明している。



 それにしても、不味いな。少しダンジョンを確認する程度かと思っていたのだが、この様子だと何処までも先へ進んでいきそうだ。幸か不幸か、罠には気づかなかったようだが、このまま進めば遠からず、ミーシェはダンジョンを徘徊する複製体と出会う。

 そうなれば、どうなるか?

 何故か、ダンジョンマップにはミーシェが赤い点で表示されている。つまり、ミーシェはダンジョンにとって、侵入者ということだ。ならば、出会った複製体は確実にミーシェを侵入者として襲うだろう。ダンジョンの複製体とはそういうものだ。第一階層の複製体程度でミーシェに傷をつけられるとは思わないが、さすがに今回はミーシェも攻撃されたと気づくはず。そうなったら、このダンジョンのダンジョンマスターを名乗った私がミーシェを攻撃したと思われないだろうか?

 ふむ。複製体に一時的な徘徊経路の変更を命令しておくか。もしくは、ミーシェに攻撃しないよう命令しておけば、解決はする。

 しかし、ダンジョンとは元来、危険なものだろう。ここで、そのような小細工を弄したとしても、このダンジョンの異質さを際立たせるだけだ。

 とりあえず、このまま様子を観察してみるか。



 そうこう考えていると、ミーシェに一匹の魔物が飛び掛かっていった。ダンジョンを徘徊している複製体ゴブリンだ。当然のことながら、そんな複製体ゴブリンの攻撃も、ミーシェの透明な壁にあっさりと阻まれてしまう。しかし、さすがに罠の時とは違って、ミーシェもその存在に気が付き、そこで立ち止まった。そうして、ミーシェは暴れ続ける複製体ゴブリンを前に、じっとその姿を観察し続けている。


 ふむ。森で魔物と遭遇した時と同じ対処法だ。やはり、自分から手を出す気は無いのか。

 そう言えば、魔物たちは複製体を本能的に同族ではないと見做していたようだが、人間はその辺り、どう感じているのだろう?

 少なくとも、今のミーシェの反応からして、森で出会う魔物と区別している様子はない。ただ、複製体と野生の魔物たちとでは、確実に違う点が一つある。それは生物としての意思があるか、ないかだ。森の中の魔物たちであれば、いずれは攻撃の通らない状況に別の方法を考えるだろう。だが、複製体はそういった命令が無い限り、そのまま延々と攻撃を続ける。

 つまり、ミーシャが今まで魔物たちを撃退してきた方法では、この複製体を撃退することは出来ないのだ。その上、ミーシェは今、自慢のお友達を全て、ダンジョンの手前に置いてきてしまっている。当然、そちらに頼ることも出来ない。


 さあ、ミーシェはこの状況をどうする?









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