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不滅のダンジョンマスター  作者: やみあるい
聖女邂逅の章

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140.黒餡とダンジョン探索

あらすじ


サンジュウイチと名付けたフォレストラットが、森の中を一人で歩く人間らしき存在の目撃情報を伝えてきた。私はサンジュウイチに『感覚共有』を使うと、その人間の捜索と監視のため、送り出す。

数日後、数匹の魔物を引き連れた少女がサンジュウイチの視界に映った。その人間は魔物に出会うと、『神聖魔法』の壁で自身を守り、何やら不可思議な儀式を行い、その魔物を仲間に引き入れる。その光景が私には、何処か恐ろし気に映った。




一時期はひっきりなしにやってきていたエルロンドの探索者たちだったが、ここ最近ではそれも全くやってこなくなってしまった。しかし、ダンジョンの周辺に住処を構える常連魔物たちは引き続き、ダンジョンにやってきては戦い、成長を繰り返している。その為、一時期のようにDPを荒稼ぎすることは出来なくなったが、DPの回収が止まることは無かった。

魔王レティシアの思惑通りに動くのは癪だが、黒牙というBランクの切り札が無くなった今、Cランクの配下たちだけの守りでは不安が残る。新しく手に入れた上位の罠という機能を有効活用するためにも、またさらなるダンジョンとしての成長を目指すという意味でも、階層の追加への準備は引き続き、行っていた。しかし、全てのDPを階層の追加につぎ込む訳にもいかない。階層追加用の貯蓄は続けながらも、裏ではしっかりと戦力の増強にも手を付けている。

そうして、つい先ほど、そこにさらなる進展を期待できる情報が入った。病魔の森の周辺にあるという唯一のダンジョンの場所を探索していた黒餡が、ついにお目当てのダンジョンの入り口らしきものを発見したのだ。



それは荒野に空いたお椀状の穴の中心にポツンと存在する不思議な建造物だった。遺跡のように古びた黒い石造りのそれが、どうやらダンジョンの入り口らしい。

見つけたのが魔物としては比較的小さな方である魔鼠アサシンラットの視界だということを抜きにしても、かなりの大きさだ。周囲に比べられる大きさが無いので、確かなことは分からないが、それはまるで巨大な神殿のようだった。しかし、これがダンジョンの入り口であることは確からしい。

その証拠として、黒餡からは事前の取り決めにあった聴覚を利用した合図が送られてきている。少し入ってみた感触からしても、ダンジョンで間違いないそうだ。

これで私以外のダンジョンの位置は把握できた。『空想空間』の力を使い、『記憶』を改めて整理し直せば、詳細な地図を他の配下たちに教えることも可能だろう。

ならば、次はこのダンジョンの傾向と配置されている複製体の種類、階層の環境、罠の有無と中の広さを把握しておきたい。

私が事前に伝えていた通り、黒餡は慎重にダンジョン内へ侵入していく。私はそんな黒餡から送られてくる感覚に、意識を集中した。


ダンジョンの内部は私のダンジョンの見た目とはかなり違っていた。酷く高い天井と、かなり横幅のある石畳の階段を降りた先にあったのは、入り口部分と似た重厚な雰囲気を醸し出している黒い石レンガで作られた遺跡のような造りの部屋。壁には等間隔に松明が置かれているが、その程度の光ではとても巨大なダンジョン内全体を照らすには足りていない。むしろ、影をより濃くしているとも言える。まあそう言う意味で言えば、ダンジョン内全体の薄暗さは、私のダンジョンと少しだけ似ているとも言えなくもない。

何だろう、激しく負けた気分になった。

いや、私のダンジョンだって、環境変更を活用した森の階層を増やしている。それ以外の階層だって、洞窟という環境が配置した魔物たちにあっているから、そのままにしているだけで、別に手抜きって訳では無い。……無いのに、いや、DPの節約という意味もあるにはあるのだけど。

この第一階層からは、ダンジョンマスターのこだわりのようなものが、伝わってくる。第一階層は言わば、ダンジョンの玄関口だ。もしや、ダンジョンとしての格を上げるためには、そう言った所にもしっかりとこだわるべし、ということなのか。

いやいや、何だか変な思考に陥っている気がするぞ。今の私は見た目に拘れるような状況では無いだろう。やるべきことは、他に山ほどあるのだから。

それよりも重要なのは、このダンジョンが私の配下たちのレベル上げに適しているかどうかだ。そちらの方が遥かに重要である。



実のところ、ここに出てくる魔物については、少しばかり思い当たることがあった。それは今や大分、昔のことにようにも思える記憶。あれはまだ勇王国にダンジョンが見つかったばかりの頃。二組目の人間たちがやってきた日の事。

以前、勇王国から三人の騎士がダンジョンの調査に派遣されたことがあった。その時の三人が話していた会話で、魔の領域にあるダンジョンの情報があったのだ。確か、三人の中の一人が、以前、魔の領域のダンジョンに行ったことがあるという話だった。

そこは石レンガで加工されており、薄暗い。

僅かな情報ではあったが、今のところこのダンジョンと辛うじて一致している。そもそも、私が地脈で調べた通りに、このダンジョンが病魔の森の周辺にある私以外の唯一のダンジョンであるのなら、それは同時に勇王国周辺にある唯一のダンジョンとも言えるはずだ。

だとしたら、第一階層に出てくる魔物は、牛頭の亜人系魔物タウロス。あれらの言葉が正しければ、それはCランクの魔物らしい。

格上のダンジョンだとは分かっていたが、もしそれが複製体だとしたら、このダンジョンの難易度は私が想像している以上のものとなるだろう。

ただ、あの騎士たちはダンジョンというものについて、そこまで詳しいわけではなさそうだった。もしかしたら、第一階層で出会ったその魔物は複製体では無く、このダンジョンのダンジョンマスターが召喚した配下という可能性もある。

さあ、果たして、その辺りはどうなのか。このまま黒餡がダンジョンの奥に進んでいけば、すぐにそれも分かることだろう。


『影魔法』を駆使して、ダンジョンの通路に出来た僅かな影に潜みつつ、黒餡は慎重にダンジョンを進んでいく。黒餡の種族は魔鼠アサシンラット、Cランクの稀少種だ。それ故に、種族的な強さで言えば、Cランクの中でも上位に位置する。だが、隠密行動ばかりさせていた弊害でレベルはそれほど高くは無く、戦闘経験も以前の黒牙よりは少ない。そもそも、種族的特性として、アサシンラットは正面からの戦闘が苦手だ。だからこそ、戦闘は出来るだけ避けたい。

さすがにこのダンジョンのダンジョンコアが有するであろう知覚を欺くことは出来ないだろうが、ダンジョンの守りとして配置されている魔物たちを出し抜くことくらいは出来るだろう。そうして、ダンジョンを進んでいくと、ついに黒餡の視界に魔物の姿が映った。


筋骨隆々とした大柄な人型で、その頭部だけが牛。その手には巨大な両手持ちの斧を携え、のっしのっしと通路を歩いている。醸し出される雰囲気だけでも明らかに強そうだ。ステータスを確認したわけではないけれど、恐らくあれがCランクの魔物、タウロスで間違いないだろう。あの見た目からして、正面から戦うのは得策ではない。直接対決だけは、絶対に避けるべきだろう。

黒餡も私と同じことを感じたようだ。慎重に通路を後退して、曲がり角まで戻った黒餡は、そこにあった深い影に潜む。あれが複製体であろうと、ダンジョンマスターの配下であろうと、同ランク帯の稀少種であり、且つ隠れることに特化したアサシンラットが本気で隠れ潜んだのだ。これで、あのタウロスに見つかることは無くなったと言っていいだろう。

しかし、それもダンジョンマスターが絡んで来たら、変わってくる。ダンジョンコアの機能の一つであるダンジョンマップを使えば、ダンジョン内に隠れてる黒餡の位置もあっさり見つかってしまう。さらにもう一つの機能である配下への命令を使えば、あのタウロスにその場所を指示することも可能だ。そうなれば、どれだけ黒餡が敵から隠れ潜んだとしても、無意味となる。何とも厄介な機能だ。私自身も使っている機能だが、使われる側に回るとその便利さが身に染みる。

しかし、だったらもう見つかったも同然かというと、そう言うわけでも無い。以前までの私なら、侵入者の情報を余さず確認し、その行動を逐一観察していた。だが、侵入者が増えてきたことで、それも段々と変わってきている。守護者を倒し、次の階層へ踏み込む者や、深層へ近づいてきた者ならともかく、第一階層に侵入してきた者たちにまで、あまり気を回さないようになってきたのだ。

このダンジョンはその格から、私以上に成長しているはずだから、侵入してくる者もかなりの数に上るだろう。そうなると、第一階層に侵入してきた新参のCランク程度なら、見向きもされない可能性は十分にある。

もしかしたら、機能を使う者の違いも現れてくるかもしれない。私はダンジョンコアそのものなので、常にダンジョンコアの機能を身近に置いている。むしろ、機能は私の体の一部と言っても差し支えない。だが、相手はダンジョンコアを操るダンジョンマスター、のはずだ。ならば、常にダンジョンコアの機能を使い続けている訳では無い可能性もある。いや、この辺り、ダンジョンマスター不在の私に、断言できることではないのだけれど。

どちらにせよ、普通のダンジョンというものを知らない私にとって、全てが想像の域を出ない。だからこそ、その辺りも含めての情報収集だ。

さて、このダンジョンでは、どちらの結果になるだろうか?


今のところ、タウロスの動きにおかしな点は無い。見つけた時と同じようにダンジョンの通路を歩き続け、黒餡が隠れている暗がりのすぐそばを通り過ぎていく。

その様子から見つかっている可能性は低そうだ。そのままタウロスは通路の先へと向かって、歩き去った。

ふむ、やはり気づかれている様子は微塵もない、と。そこはいい。しかし、そこで新たな疑問が生まれた。それは、黒餡が動かなかったことだ。

黒餡には事前に、ダンジョンの探索で出会った魔物が倒せそうならば、黒餡の判断で倒してくるよう伝えている。いくら正面からの戦闘が苦手なアサシンラットであろうと、あそこまで無防備に背を向けて立ち去るタウロスは、『暗殺術』のスキルを持つ黒餡にとって、恰好の的だったはず。にも拘わらず、黒餡はあのタウロスを見逃した。それが意味するところは、あのタウロスが今の黒餡では不意を突いてさえ殺しきれないほどに強かったということだ。

以前の黒牙と同じCランク稀少種の魔鼠アサシンラットである黒餡が、『暗殺術』の条件を整えてさえ、勝てない相手。それではまるで、あのAランク冒険者イグニスのようではないか。その事実に私は一瞬、恐ろしい想像をしたが、即座に思い直す。

どうしても、アサシンラットというと黒牙の印象に引っ張られてしまうが、私の『記憶』に強く残る黒牙は、今の黒餡より遥かにレベルやスキルレベルも高く、幼いころからの戦闘経験も有した状態だった。それに、大魔王に憑依されてからの黒牙は、その強さが僅かに残ったらしく、他のアサシンラットと同じように比べてよいものか、疑問が残る。思い返せば、黒牙の強さは同じアサシンラットの中でも、かなり異質な方だったのかもしれない。

そう考えてみれば、確か黒餡は『暗殺術』のスキルレベルも、一のままだった。殆ど使っていないと考えてよいだろう。戦闘経験が殆どない黒餡では、さすがに同ランク帯の相手は難しかったか。

とはいえ、さすがの黒餡でも明確な格下相手であれば、躊躇わず倒すことが出来ていたはずだ。だとすれば、やはりあれは、複製体では無かったのだろう。なにせ、複製体だとすれば、元となった魔物の強さから、ある程度劣化しているはずだから……。

私がそんな結論を出そうとしたその時、影に隠れて周囲の気配を探っていた黒餡が、そっと地面をその爪でひっかいた。幾度か、規則的に。

それは事前に決めていた黒餡からの合図の一つだった。合図の内容は、先ほどの魔物タウロスに関して。黒餡の感覚を信じるならば、あれはこのダンジョンに配置されている複製体だ、という。


黒餡が同格、もしくは格上と感じ取れるほどの強さを有している複製体? しかも、第一階層からCランクの複製体を配置している、と。

どちらも信じがたい事だが、相手は私より遥かに格上のダンジョンコアだ。


きっと、それも不可能では無いのだろう。









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