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不滅のダンジョンマスター  作者: やみあるい
聖女邂逅の章

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138.黒たちの帰還

あらすじ


誘導は成功し、私は上位の罠という罠の可能性を手に入れる。その後、一通りの機能の確認を終えた私は、そこで初めて配下たちに使った『感覚共有』の効果が切れていることに気が付いた。対策を考える私だったが、そこでさらなる問題が発生する。私の最高戦力たる黒牙との絆が切れたのだ。それは偏に黒牙が私の配下ではなくなったことを意味していた。その理由を考える私だったが、情報が足りず確固たる答えは出ない。私はそれを理由として、一旦、黒牙の事は置いておくことにした。





 黒牙との絆が切れてから暫くが経った頃、私はようやく冷静になった思考で現状を見つめ直していた。

 黒牙は強い。それは誰よりも私が一番知っていることだ。しかも、今はさらに強くなっている可能性がある。今まではそこにばかり意識がいっていた。

 しかし、絆が切れたことで、私から黒牙へ常に流れていた力も途絶えているはずだ。ならば、その分だけ今の黒牙は弱くなっているともいえる。それに、今の黒牙にはDPブーストという切り札も無い。

 その上で、戦いの場がダンジョン内であれば、今の配下たちでも黒牙の撃退くらいなら出来るのではないか。そう考えた私は、常にダンジョンへ四天王候補を数体ほど、留めておくことにした。特に今や私の最高戦力の一体となりつつある魔熊ストロングベアの熊吉には、完全にダンジョンへ常駐してもらっている。ただ、これに関しては、熊吉が最近、病魔の森でもう殆どレベルが上がらなくなってしまったからという理由もあった。そう言う意味では、魔猪ジェットボアの猪丸も同様だが、機動力のある猪丸は熊吉と比べて、とても動かしやすい。その為、猪丸には病魔の森の中で別の役割を与えていた。これで、完全に黒牙への対処が出来たわけではないが、とりあえず今はこんな所でいい。


 正直、随分と曖昧な対処法だと自分でも思う。最悪を考えるのであれば、この程度で対策が出来たとはとても言えない。本気で黒牙の襲撃に怯えているのであれば、最低でも今いる全ての四天王候補をダンジョンへ常駐させるくらいはするべきだろう。

 私がそれをしないのは、未だ強くなり続けている四天王候補のレベル上げを同時進行で行いたいという事情もあるが、一方で何となく、黒牙がダンジョンへ襲撃に来るとは思えないからなのかもしれない。

 あの時は色々と悪い可能性を考えてしまったけれど、改めて考えてみると、あの魔王レティシアが嫌っている魔鼠をわざわざ支配下に置くとは思えない。それに配下を支配し、裏切らせるなんて、悪質な方法を取るだろうか? どちらかと言えば、仇には正面からぶつかっていく性格に思える。

 それに、たとえ絆が切れたとしても、それだけで今の黒牙が私と敵対しているという証明にはならないのだ。以前、病魔の森中に放った魔鼠情報網の魔鼠たちと幾度か同じように絆が切れたことがあったけれど、その魔鼠たちもその後、別に私と敵対している訳ではなかった。ただ、私が不要なものとして捨てられたというだけの話だ。

 或いは、黒牙も完全に私への興味を失い、何処かへ行ってしまった可能性だってある。そう思うことで、私は今日も黒牙と敵対するという可能性について考えるのを、先送りにしていた。



 そうして、黒牙との絆が切れてから百日程が経った頃、病魔の森の外に派遣していた配下たちが、ようやくダンジョンへと帰還してくる。黒牙の一件もあり、途中でまた絆が切れたりしないかと冷や冷やしていたが、どうやら全ては杞憂で終わってくれたようだ。

 私が病魔の森に派遣していた斥候役の魔鼠、Cランク稀少種のアサシンラットたちは現在、四体までに増えている。最初の頃は、黒影と名付けたアサシンラットだけに任せていたのだが、段々とやりたいことが増えてきたために、少しずつ貯蓄していたDPを使い、段階的に増やしていったのだ。全部で二百七十万DP。設備が整ったダンジョンと時折やってくるダンジョンに不釣り合いな探索者たちによる相乗効果は、不本意ながら非常にDPの回収量を増やしてくれたのだ。

 むしろ、私を悩ませたのは名付けの方だった。その役割上、アサシンラットたちに『感覚共有』の使用は必須。故にそれを可能とする条件である配下への名付けも必ず行わなければならない。いっそ、魔鼠情報網の魔鼠たちのように、番号を名前にしてしまえば楽なのだが、気分的に大切な役割を与える配下には、それに相応しい名前を与えたい。

 最初に召喚したアサシンラットが黒影だったので、次に召喚したアサシンラットの名は、黒隠とした。結局、似たような名前の継投で合わせることにしたのだ。そうして、三体目が黒闇、四体目が黒餡。くろかげ、こくいん、くらやみ、くろあん。……三体目の段階ですでに私の発想はギリギリとなり、四体目に関してはちょっと思いつかなくて、何故かぱっと思い浮かんだこれになった。


 そんな名付けの苦悩を思い浮かべながら、私は四体に『感覚共有』を使用し、感覚の繋ぎ直しを行っていく。

 視覚、聴覚、嗅覚、と。よし、問題無く機能しているようだ。

 同時に副思考を活用して、任務の報告も受けておく。



 この四体にはそれぞれに、病魔の森の外での諜報活動を行わせていた。まあ、諜報活動と言っても、そこまで複雑なことをやらせていた訳ではない。私と関係のありそうな場所に赴いてもらい、外からその変化を観察してもらう。または、私が探している魔物や場所をその足で探してもらっているだけだ。


 まず、黒影には以前、黒牙に探し出してもらった勇王国の廃都があった場所の監視を任せている。

 黒影からの報告によれば、視覚の共有が切れてから暫くして、あの地では魔王レティシア側の砦が建ち、要塞と化しているようだ。最近ではそこに、継続して何処からか魔物たちが流入しているらしい。報告された魔物たちの姿からしても、エルロンドの魔物たちで間違いないだろう。

 一方であの場所を探索していた人間の騎士たちは、砦によって侵入を阻まれたためか、最近では目立った動きが無いようだ。


 次に黒隠には、人間たちが魔の領域と呼ぶ場所で活動する危険な高位の魔物の探索を任せている。

 ただ、何故かこの探索が実を結ぶことは無かった。地脈の情報を信じるならば、森の付近に縄張りがあるはずなのだが、未だ痕跡すら見つかっていない。勇王国やエルロンドなども付近に入っている辺り、実際はかなり広大な範囲なのかもしれないし、やはり、闇雲に探しているだけでは、早々見つからないか。

 空を飛んでいるであろうBランク特殊個体の魔鳥レミストネータはともかく、山の如きと形容されている魔鉱人形ミクスギガントゴーレムに関しては、さすがにすぐ見つかるのではないかと思っていたりもしたのだが、そう容易くはないらしい。

 今回の報告内容も変わらず、それらしい発見は無しだった。

 だが、裏を返せばすぐ探し出せる程、近くにはいなかったという事でもある。それは嬉しい報告と言えよう。なにせ、私がこの魔物たちを探しているのは、この魔物たちが私に襲い掛かってくる可能性を考慮してのことなのだから。

 近くにいないということであれば、少なくとも今すぐに襲い掛かってくることはあるまい。


 さらに黒闇には、魔王レティシアの治める新生エルロンド王国の監視を任せている。と言っても、エルロンドそのものを監視している訳ではない。

 ふむ。順序立てて思い返していこう。

 まず、黒闇には、エルロンドの場所を探らせたのだが、こちらに関してはダンジョンから帰還する探索者たちの後を追うことで、容易に場所の特定は出来た。しかし、さすがのアサシンラットと言えど、王国内に潜入するのは難しかったようだ。さすがは魔王の本拠地。警備の厳重さは並大抵ではない。

 それでも、魔物の王国ならば、人間の国よりは潜入しやすいように思えるが、あそこにいる魔物は殆どが亜人系統で、特に魔鼠は一匹たりともいないらしい。その為、見つかってしまえば、一瞬でばれてしまうだろうとのこと。まあ、魔王レティシアの言葉を思い出せば、さもありなん。勇王国の人間たちほど苛烈では無くとも、エルロンドもまた魔鼠には住みにくい環境のようだ。

 その為、正確に言うと黒闇には今、病魔の森とエルロンドの中間辺りにいつの間にか新しく造られていたエルロンドの中間拠点を中心として、少し離れた位置からの監視を任せている。特に高ランクの探索者パーティーが病魔の森へ向かおうとしている時、繋がった感覚を通してしっかりと合図で伝えてもらえるように。

 ちなみに、今回の報告で改めて聞いてみたのだが、私との繋がりが消えた後で高ランクの探索者が病魔の森に向かったことは無いそうだ。

 まあ、今では定期的にダンジョンの階層を増やしているし、これまでの間隔から言って、次に高ランクの探索者がやってくるのは、まだもう少し先のはずだから、そこはあまり心配していなかった。

 ただ、少し気になる報告もある。今まではエルロンド方面から中間拠点にやってくる魔物と、エルロンド方面へ向かう魔物は大体半々だったのだが、少し以前からエルロンド方面へ向かう魔物たちだけが増えつつあるというのだ。その報告を受けて、思い返してみれば、確かに最近、ダンジョンへやってくるエルロンドの探索者が減っている気がする。まだ、気のせいと言える程度の差でしかないが、少し気にかけておく必要がありそうだ。


 そして、最後の黒餡には、前に地脈から知った病魔の森付近にあるというダンジョンの位置の探索を任せている。

 何故、私が他のダンジョンを探しているのか?

 エルロンドの探索者たちや、ダンジョン周辺に住まう我がダンジョンの常連魔物たちが、私のダンジョンで戦闘を行っている理由の一つとして、ダンジョンでの戦闘が外での戦闘よりも早くレベルを上げられるというものがある。それを知ってから、私はこれを私の配下にも応用できないかと考えたのだ。

 しかし、私の配下たちは、私のダンジョンでどれほど複製体を狩ろうとも決してレベルは上がらない。ダンジョンのシステム的なものなのか、それともそれが世界の理なのかは定かではないが、この世界でダンジョンの複製体に関する部分は、明確に敵と味方で作用が別れているのだ。DPの回収量しかり、戦闘で得られる経験値しかり。

 そこで私は、他のダンジョンを探すことにしたのだ。私とは何の関係も無いダンジョン。そこでは、私の配下も侵入者となる。当然、他の侵入者と同様に、レベルも上がりやすくなるはずだ。

 そう考えて、ダンジョンの位置の特定を任せていたのだが、報告によれば、今回もまた見つからなかったようだ。

 召喚した四天王候補たちは、どんどん病魔の森内でレベルの壁にぶつかり始めている。是非とも、早めに見つかってほしい所だ。


 ふむふむ、なるほど。『感覚共有』が切れた後の行動についても、これで大よそ把握できた。さて、これで報告は聞き終わり、同時進行で行っていた『感覚共有』による感覚の繋ぎ直しも完了している。あとは四体の黒たちを任務に戻すだけなのだが、その前に私からも新しく分かった情報を伝えておかなければならない。きっと私の情報は黒たちの役に立つだろう。特に黒餡の任務には、かなりの助けとなるはず。


 そう。『感覚共有』の繋がりが切れてから今日まで、私もただ不安を抱えたまま何もしていなかった訳ではない。第十階層の追加に伴い、ダンジョンコアとしての格が上昇したことにより得た力を使い、色々と動いていたのだ。その中の一つが、新たに得たスキルを活用した地脈からの情報収集だった。



 地脈。

 それは、この世界の地下深くにある膨大な情報と力の流れだ。それは世界全てにまで広がっており、世界全てから情報を集める情報の海。ダンジョンコアである私は、そんな地脈と繋がっており、機能により一定の情報と力が注がれている。

 そして、私はそんな繋がりを使って、その広大な情報の海から望む情報を探し出し、収集していた。ただ、この方法は地脈からありとあらゆる情報を得られるわけではない。地脈には深度という概念があり、潜れる深度によって得られる情報の量や質は変わってくる。相応の力が無ければ、得られる情報の幅は極端に狭められてしまうのだ。

 それに、私がこれまで行っていた方法は、元来、ダンジョンコアに付随された機能に備わっている正規の方法ではない。それ故に私がその方法で情報を得るためには、相応の酷く面倒な手順を踏む必要があったのだ。

 しかし、今回得た二つのスキルのおかげで、その二つの問題は大きく前進することとなる。それが『地脈親和性』の上位スキルである『地脈融和性』と、そんな『地脈融和性』のスキルから派生した『地脈探査』だ。

『地脈融和性』のスキルを得たことで、私は地脈のさらに深いところまで探れるようになった。そして、『地脈探査』のスキルを得たことで、私は地脈から情報を収集する際に必要とした酷く面倒な手順を簡略化できるようになったのだ。

 それはさすがにダンジョンコアへ備わった機能ほどに便利なものでは無かったけれど、それでも今までと比べれば格段にやりやすくなっている。

 さながら、地脈を情報の海と例えるならば、『地脈融和性』のスキルはより深き場所まで潜るための頑丈な潜水服で、『地脈探査』のスキルは広大な海から目的の情報を探すための探査機と言った所だろうか。これらのおかげで、私は今までよりも多くの情報を、素早く地脈から引き出すことが出来るようになったのだ。


 ただ、実のところ、今回黒餡に伝える情報は、これらとは違う点が一番重要になっている。この情報を得るために必要だったのは、ダンジョンコアとしての格そのものだ。情報の海の例えで当て嵌めるのであれば、……なんだろう? ぱっと思いつかない。強いて言うなら、沈んだ財宝が収められた頑丈な宝箱を開けるための鍵、とかだろうか? うん。海の例え、要らないな。それはさておき。

 元々、病魔の森付近にダンジョンがあるということは、地脈から得た情報でわかっていた。しかし、そこから先の情報は、あと一歩という所で手が届かず、ご近所ダンジョンについて、私はそれがあるということ以外、何も知ることが出来なかったのだ。

 だが今回、私というダンジョンコアの格が上がったことにより、ほんの僅かな破片ではあるが、近隣のダンジョンの情報を手にすることが出来た。それが今回私が得た情報、近隣のダンジョンの位置情報である。と言っても、分かったのは大まかな方角程度の情報だが。

 今まで闇雲に探していたことを考えれば、きっとこの情報で黒餡の任務は大きく前進することだろう。


 そうして、私は四体の黒たちへ私が得た情報と他、細々とした注意事項を伝えると、再度任務へと送り出した。これで、気になっていたことについて、より深い情報が得られるはずだ。



 そうそう、少し話は変わるが、地脈から様々な情報を得やすくなった際、気になっていた魔王レティシアのスキルについて、その効果もついでに調べてみることにした。

 まず『吸血転化』は血を吸った相手を同種族へと転化させるスキルらしい。まあ順当に私が想像していた通りのスキルだ。ただ、今になって考えてみると、黒牙の種族が変わっていたら、さすがにその気配なり、魔力なりで私が気が付くだろう。それにどうやら転化させるにはそれなりの条件が必要であり、黒牙には当てはまらないということも分かった。

 続いて、『吸血支配』だ。支配とあるだけにかなり怪しいスキルだったが、どうもこちらのスキルは私が想像していたような効果では無く、支配下に置いた配下たちを強化するためのスキルらしい。

 所持する存在が少ないせいか、使用された記録が足りないため、確証までは得られなかったが、少なくとも地脈にある過去の情報ではそうなっている。

 つまり、これらのスキルが使われた可能性は少ないということだ。まあだからと言って、この件に魔王レティシアが関わっていないとは限らないのだけれど。








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