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不滅のダンジョンマスター  作者: やみあるい
第四章 迷宮再始動の章

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129.守護者フォレストウルフ

あらすじ


他のグループが未だ第一階層を彷徨う中、合同探索グループは第二階層へ踏み込んだ。複製体の種族が変わったことで、最初は少し苦戦したコボルトたちだったが、すぐ戦いに慣れていく。だが、そこでトロールたちの弱点が露わになる。連携の取れないトロールたちは、速さで翻弄する複製体ファングウルフに攻撃を当てられずにいた。最終的には助けに入ったコボルトたちの手で、複製体ファングウルフは倒されてしまったが、私はこの先で待つ守護者戦に僅かな勝機を見出す。




 そこは第二階層の最奥、守護者の待つ階段部屋の手前。

 四日の時間をかけて、三パーティーによる合同探索グループはそこまでやってきていた。


 ちなみに、第一階層を探索していた他のパーティーの状況にも、この四日間で色々と変化がある。例えば、リザードマンたちのパーティーである子竜の塒は、すでに第一階層の守護者であるゴブリンリーダーたちを倒し、第二階層まで進んでいた。今は第二階層の探索に精を出している。一方でオークたちのパーティーである大食い同盟は、ほんの一日前に第一階層の探索の途中で引き返し、すでにダンジョンから撤退していた。なんでも、このダンジョンの複製体は魔力の味が悪いとかなんとか。どうやら、大食い同盟の今の興味はダンジョンよりも、その外に広がる病魔の森にあるようだ。……魔力の味?


 まあ、それはともかく。

 さあ、いよいよお待ちかねの第二階層守護者戦が始まる。



 第二階層の守護者は、フォレストウルフと四体のファングウルフたち。それを確認した合同探索グループからは、コボルトたちのパーティーであるエムカトラムの猟犬が進み出てきた。

 あー。やはり、トロールたちのパーティーであるヘッドクラッシャーは出てこなかったか。まあ、道中であれほど手玉にとられてきたのだから、真っ当な思考を持っているなら、そう判断するだろうな。

 魔狼たちの動きに翻弄されるトロールたちを観戦できないのは残念だが、だからと言ってこちらが不利になったという訳でもない。トロールたちは魔狼の戦法を苦手としているようだが、それでもヘッドクラッシャーが未だこの合同探索グループで一番強いというのは事実。それが出てこないのであれば、こちらとしてはむしろありがたい程だ。それに相手がエムカトラムの猟犬に属するコボルトたちであっても、こちらに勝算があることは未だ変わらない。

 道中では複製体の魔狼たちを連携でうまく倒していたようだが、守護者を任せている魔狼たちの強さは、それらとは別格だ。『連携』のスキルに任せた単純な連携しか出来ない複製体の魔狼たちと同じ感覚で相手にしたら、あっという間に終わってしまうかもしれない。

 第一階層では守護者に僅差で敗れたエムカトラムの猟犬だったが、果たして今回はどうなるかな?



 五体で集まり、じりじりと進んでいくエムカトラムの猟犬のコボルトたちに対して、フォレストウルフは仲間たちを背後に残したまま一体で進んでいく。そして次の瞬間、フォレストウルフの身体に魔力が巡り、その動きが加速する。右、右、左と三つほどの牽制の動きを混ぜ込んで、コボルトの一体に襲い掛かるフォレストウルフ。

 だが、その突撃は二体の間に割り込んできたコボルトシールダーの盾によって防がれる。防がれたフォレストウルフは即座に反転して、コボルトたちから距離を取った。それを合図として、四体のファングウルフが四方からコボルトたちに襲い掛かる。さらにフォレストウルフも再度、襲い掛かると、激しい戦いが始まった。


 今のところ、戦況は守護者である魔狼たちの有利に思える。自慢の足を活かした速度で、四方からの攻撃と撤退を繰り返す守護者の魔狼たち。それに対して、コボルトたちは一塊になって、絶えず四方から襲い掛かる守護者たちの攻撃を防ぎ続けていた。

 完全に防戦一方となっているコボルトたち。しかし、守護者たちの攻撃もコボルトに届いている訳ではない。つまり、未だ完全に守護者の優勢という訳では無いのだ。恐らく、コボルトたちは防御を固めながら、守護者たちの隙を伺っているのだろう。

 実はここまでのコボルトたちの戦い方は、道中で複製体を相手にしている時と根本的な部分では変わっていない。襲い来る攻撃を防ぎ、隙をついて集団で逃げ道を塞ぎ、一斉に攻撃してトドメを刺す。

 しかし、心なしかその動きは今までよりも慎重なようだ。相対している間に、守護者たちの力をしっかりと感じ取ったのだろう。つまり、コボルトたちに油断は無いということだ。

 少し不味いな。このままだと守護者たちが隙を見せた瞬間、戦況は一気にひっくり返る。

 ただ、守護者のリーダーを任せているフォレストウルフとて、考え無しという訳ではない。これまでのコボルトたちの動きから、それを察しているはずだ。実際、四方からの攻撃が完全に防がれているのを理解しており、先ほどから少しずつ連携の動きを変えている。

 全員で一体の敵を集中して狙ったり、時間差をつけて攻撃したり、相手を分断させようと狙い方を変えたり、防御の隙をつこうとしたり。

 観察している私からすると、どれも悪くない戦術に思えた。仲間たちとの連携もしっかりと出来ている。しかし、その全てが悉く、コボルトたちに防がれていた。同じ守護者であるゴブリンリーダーの戦術は、しっかりと通用していたのに。

 そこで私は、第一階層の守護者であるゴブリンリーダーたちの戦い方を『記憶』から参照し、それとフォレストウルフたちの戦い方を比べてみた。この二つには何か、違いがあるはずだ。すると、次第にフォレストウルフたちの欠点が読めてきた。

 恐らく違いは、それぞれの戦術の使い時だ。ゴブリンリーダーはそれが的確で、フォレストウルフはその辺りがまだ、いまいち甘い。そのせいで、どれだけ新しい戦術を繰り出そうと、コボルトたちにはすぐ対処されてしまう。

 ただ、フォレストウルフにはフォレストウルフの強みがある。第二階層の守護者である魔狼たちには、第一階層の守護者であるゴブリンたちが持たない速度と力があった。それ故にコボルトたちは、未だ防御に専念しているとも言える。そうでなければ、フォレストウルフたちの戦略に対応できているコボルトたちは、とっくに攻撃へ転身していたことだろう。

 特に魔力を用いた『身体強化』の使い方は、明らかに魔狼たちの方が上である。今だってゴブリンリーダーたちが『身体強化』を使う際に消費する魔力と比べて、明らかに少ない魔力量なのに、フォレストウルフたちの『身体強化』はゴブリンリーダーたち以上に身体能力を強化していた。

 しかし、だからと言ってその力は、コボルトたちの防御を正面から突破できるほどではない。その結果が、現状の膠着状態を作り出していた。


 そうして、暫く戦いが続いた頃、コボルトたちにより膠着を打ち破る一手が打たれる。もう一つのコボルトたちのパーティーである鮮血の牙が、戦いに参戦してきたのだ。

 勿論のこと、道中の複製体程度といい勝負をしていた鮮血の牙が、複製体よりも遥かに強い守護者たちとまともに戦えるはずもない。鮮血の牙全員でファングウルフ一体を相手に、防戦一方となるのが精々だ。しかし、エムカトラムの猟犬と相対する守護者たちが、一体減るという事実は、戦況に大きく影響を与えた。

 さらに、コボルトスカウトの『投擲』により投げられた丸い魔道具。それは人間の冒険者たちも時折、使っていた投擲用の魔道具だ。それが地面に落ちた瞬間、衝撃が小部屋内に広がって、近くの守護者たちの動きが一瞬止まる。それに合わせて、コボルトたちが一体のファングウルフへと狙いを定め、一気に総攻撃を加え、討ち倒した。

 これで、五対三。状況は、守護者たちの不利へ一気に傾く。


 しかし、そこで戦場に更なる変化が起きる。


 ファングウルフが討たれた直後、私はフォレストウルフの体内で魔力が暴れるのを感じ取った。そうして次の瞬間、フォレストウルフの身体が爆ぜるように地面を駆け、エムカトラムの猟犬に属するコボルトの一体へ襲い掛かる。ファングウルフを一体仕留めた直後という状況に加えて、その急激に上がった速度に虚を突かれたのか、防御が遅れるコボルト。

 そうしてフォレストウルフは、コボルトの片腕に深く噛みつき、地面へと押し倒した。さらに続けて、フォレストウルフは次のコボルトへ狙いを定め、動き出す。

 一拍遅れて、コボルトシールダーが防御に回るが、フォレストウルフは盾を構えたコボルトシールダー目掛けて、全力の体当たりをぶちかます。その一撃でコボルトシールダーは後方へと吹き飛ばされ、地面へと強かにその身体を打ち付けた。

 そして、間髪入れずに次のコボルトへ飛び掛かったフォレストウルフだったが、そこでようやくコボルトたちが体勢を立て直し、飛び掛かってきたフォレストウルフを打ち落とす。

 しかし、フォレストウルフはその状態から無理やり身体を起こし、近くにあったコボルトの足に噛みついた。そこへ続くようにして、残る二体のファングウルフたちも、コボルトたちへ捨て身で突撃する。


 その後は、完全な混戦となった。

 もはやそこに、戦術などという高尚なものは存在せず、両者ともただ、力の限りに目の前の敵へ攻撃し続ける。荒々しい野生の戦いがそこにあった。完全に決死の戦いだ。どちらかが死に絶えるまで、戦いは終わらない。



 そうして、多くの傷を負いながらも、なんとか合同探索グループが勝利を収めたのだった。











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