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不滅のダンジョンマスター  作者: やみあるい
第四章 迷宮再始動の章

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130.子竜の塒

あらすじ


合同探索グループが第二階層の守護者部屋へ到達した頃、子竜の塒は第一階層の守護者を倒し、第二階層へ足を踏み入れ、大食い同盟は探索を止めて、ダンジョンから脱出していた。そうしていよいよ、合同探索グループと第二階層の守護者の戦いが始まる。

前に進み出たのはコボルトたちエムカトラムの猟犬。最初、戦略による戦いを繰り広げていた両者だったが、エムカトラムの猟犬が一体のファングウルフを倒した直後から、戦況は一気に移り変わる。守護者フォレストウルフが捨て身で攻撃を始めたのだ。その結果、戦場は一気に混戦へと移行し、最終的に多くの負傷を受けながら、何とか合同探索グループが勝利した。





 第二階層の守護者と合同探索グループの戦いは、随分と激しい戦いとなった。決死の覚悟を持った守護者たちの攻撃は、結局、侵入者たちの命を奪う所まではいけなかったが、それでもこの戦いはきっと守護者たちにとって次に生きる戦いとなっただろう。

 ダンジョンに取り込まれ、守護者となったフォレストウルフたちは、たとえここで殺されたとしても、ダンジョンが無事である以上、守護者の機能によって何度でも復活が出来る。守護者たちには何度だって次があるのだ。

 フォレストウルフたちはもっと強くなる。

 この戦いを糧にして、次はもっと。



 さて、第二階層の守護者を倒した合同探索グループだったが、その過程で探索の中心を担っていたエムカトラムの猟犬が受けた傷は深い。三体のコボルトが何処かしらに深い傷が刻まれており、残る二体も浅くはない傷を負っている。一応、手持ちのポーションにより応急処置はされたようだが、それでも完全に傷が癒えたわけでは無い。実際、エムカトラムの猟犬から感じる気配は、戦闘前と比べて明らかに弱っている。だから私は、このまま引き返すかとも思ったのだが、どうやら侵入者たちは先へ進むことを決めたらしい。暫くその場で休憩を取った後、合同探索グループは第三階層へと続く階段を下り始めた。

 ちょっと無謀な選択にも思えるが、合同探索グループには強力な戦力であるトロールたちのパーティー、ヘッドクラッシャーが同道している。ここまでの道中ではエムカトラムの猟犬が探索と戦闘の両方を受け持っていたが、どちらかと言えば得意分野は探索の方だろう。そして、探索だけであれば、今の状態でも行うことは出来るはずだ。つまり、ここからはエムカトラムの猟犬が探索と戦闘の補助に回り、ヘッドクラッシャーが常に戦闘へ参加する。エムカトラムの猟犬の補助があれば、ヘッドクラッシャーの欠点もある程度は補うことが出来るだろう。まあ、倒した複製体からの少ない魔力吸収で健常な状態を保っている以上、今までのように延々と探索を続けることは出来ないだろうが、もう暫くなら探索をしていられるということだ。

 ただ、たとえエムカトラムの猟犬が受けた傷が無かったとしても、この侵入者たちの探索は次の階層で複製体と戦った時点で終わりを迎えただろう。どちらにしろ、次の階層に漂う複製体の魔物たちは、この侵入者たちではきっと倒せないはずだから。

 私が予想した通り、合同探索グループは第三階層を少し進んだ所で、この階層を守る複製体と交戦し、引き返すこととなった。


 第三階層に配置した複製体は死霊レイス。

 魔物としてのランクは前二つの階層にいた複製体と同じFランクだが、レイスには一つ特別なスキルがある。それが種族固有のスキルである、『霊体』だ。『霊体』を持つ魔物は、物理的な攻撃が効かず、物体を透過することが出来る。つまり、通常の物理攻撃では、第三階層の複製体を倒すことは出来ないのだ。

 物理攻撃を主体とする合同探索グループとの相性は最悪である。実際、侵入者たちはレイスと出会い、数度の攻撃を行った末に、相性の悪さを痛感したらしく、あっさりと第二階層へ戻っていった。

 エムカトラムの猟犬の体調から考えても、合同探索グループはこのまま探索を終了するつもりだろう。帰るというのであれば、こちらとしても邪魔をするつもりは無い。すでに復活している第一階層の守護者であるゴブリンリーダーには、下からやってくる者たちをそのまま素通りさせるよう伝えておいた。



 さて、と。

 これで未だダンジョン内の探索を続けている探索者たちは、リザードマンたちのパーティーである子竜の塒だけとなった。この探索者たちは現在、第二階層を進んでいる最中だ。ここまでの道中で確認してきた彼らの実力ならば、きっと第二階層の守護者も倒せるだろう。第二階層を抜けてしまえば、あとはダンジョンの拡張も仕上がっていないから、一つの階層を抜けるのに時間がかかることも無い。しかも、リザードマンたちの中には魔法系のスキルを覚えている者たちもいたから、合同探索グループと違い、第三階層でも止まることなく進めるはずだ。

 これはいよいよ、黒牙の出番かな?


 子竜の塒が第二階層の守護者の待つ階段部屋まで辿り着くのに、そこからさらに三日を費やした。その頃にはとっくに他の探索者たちはダンジョンを脱出しており、第一階層では病魔の森の常連たちがいつものように彷徨っている。


 そうして始まった第二階層の守護者と子竜の塒の戦いだが、その戦いは良く悪くもある意味順当なものとなった。


 このリザードマンたち。前回、ゴブリンリーダーたちと戦ったエムカトラムの猟犬に属するコボルトたちと比べると、ランクは同じDランクだが、それ以外のステータスは明らかに劣っている。レベルでも、スキルレベルでもコボルトたちの方が上回っていた。しかし、第一階層の守護者と戦う姿を観察した限り、明らかにリザードマンたちの方が強い。

 それは、なぜなのか。恐らく、その理由は種族の特性によるところなのだろう。コボルトたちが探索に向いた特性を持つのに対して、リザードマンたちは戦いに向いた特性を持っている。その最たるものが、リザードマンの持つ種族スキル、『硬鱗』だ。

 コボルトたちは格下を相手に戦うときでも、常に相手の攻撃を受けないよう立ちまわっていた。しかし、リザードマンたちは違う。それこそ、トロールたちのように攻撃を避けることなく、複製体たちを薙ぎ払っていた。『硬鱗』が全ての攻撃を弾いてくれるからだ。その結果、リザードマンたちは全く傷を負うことなく、ここまでやってきた。あの強固な鱗を突破して、リザードマンたちに傷を与えるためには、それなりの威力が必要となるだろう。まあ、その分、探索には多少の時間がかかったようだが。

 そうして向かえた第二階層の守護者との戦い。


 戦術でも、個の力でも、リザードマンたちの方が僅かに上回っており、要所要所でリザードマンたちが勝ち続ける。その結果は、語るまでも無いだろう。

 第二階層の守護者であるフォレストウルフたちも、先のエムカトラムの猟犬との戦いで、戦術の使い時というものをその身に刻んだとはいえ、それはまだたった数日前の話だ。糧として吸収するには、どうしても時間が足りなかった。

 そうして第二階層の守護者を突破した子竜の塒は、第三階層へと足を踏み入れる。



 私が想像していた通り、魔法系のスキルを持つ子竜の塒は、第三階層を彷徨う複製体のレイスたちをものともせず、先へと進んでいく。対策さえされてしまえば、レイスたちは非常に脆い。なにせ、威力の低い魔法であったとしても、一撃で倒せてしまうくらいだ。そうなってしまえば、まだ拡張が進んでいない第三階層など、あっという間に最奥まで辿り着いてしまう。しかも第三階層の階段部屋には、まだ守護者が置かれていない。先日、召喚した死霊系Eランクのゴーストはダンジョン内で少しずつレベル上げを進めているが、未だ守護者として配置するには心許無い強さだ。

 その結果、子竜の塒が第三階層を突破するのに、半日も掛かることは無かった。



 そうして、第四階層。

 ここにはまだ、複製体の配置すら出来ていない。今のところ、第四階層には十二の部屋が並ぶだけ。しかも、それらを繋ぐ通路は設置できる最短のもの。

 第五階層にも部屋が増えてきたことだし、もうそろそろ第四階層にも複製体なり、罠なり、配置してしまいたいところなのだが、未だ残る魔力供給路の乱れが気になって、ちょっと放置してしまっている。

 とはいえ、そんな事情など探索者たちには知る由もない。罠も魔物も存在しない階層に薄気味悪い何かを感じたのか、子竜の塒に属するリザードマンたちは他の階層よりも慎重に第四階層を進み、第五階層へと続く階段の前までやってきた。

 その先にあるのは、いよいよダンジョンコアのある第五階層。今はゴブリンたちの住む中部屋も存在するが、彼らは現在、万が一の可能性を考えて、ダンジョンコアのある小部屋に避難中だ。

 その代わりに中部屋で待っているのが熊吉と、黒牙。

 つまりここが、今の最終防衛線。俗にいう、死線というやつだ。



 来たいなら、来ればいい。

 ただし、ここから先は、今までとは訳が違う。

 たとえ、この探索者たちがあの危険な魔王に関係のある者たちだったとしても、これ以上、ダンジョンコアに近づこうとするならば、問答無用で返り討ちにしてやる。と、意気込んでみたのだが、第五階層へ降りる階段の前で、子竜の塒は急に立ち止まってしまった。

 何だろう? リザードマンたちの発する魔力からは、恐れのようなものを感じる。何かを恐れているのか?

 私、ではないよな。意気込んではいたけれど、実際にそれをするのは私ではない。私はただ、配下たちへ命令を下すだけ。たとえ、そんな私の意図が何かしらの影響でこの探索者たちに読まれたのだとしても、私を恐れるのはおかしいだろう。

 とすると、もしかして黒牙か?

 今、ダンジョンにいる者たちで、子竜の塒に属するリザードマンたちをあれほど恐れさせる力を持つものがいるとすれば、それは黒牙だけだろう。

 そう思い、黒牙に意識を向けてみると、黒牙の身体から流れ出した魔力が周囲に満ち溢れていた。ああ、これだと『魔力感知』に長けた者であれば、階段を降りる途中であっても分かってしまうかもしれない。

 下の階層に、危険な存在が待っている、と。



 結局、子竜の塒はそこで引き返すと、元来た道を帰っていった。私はそれを確認すると、各階の守護者たちに、下の階層から上がってくる侵入者を通すように伝えておく。さすがにそろそろ、探索者たちにはお帰り願いたかったからだ。


 そうして、最後の探索者たちがダンジョンから撤退していった。







八月は終わりましたが、もうちょっとだけ続きます

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