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ラミアの独り言 ---「気がついたらラミアに」サイド・ストーリー ---  作者: 並矢 美樹


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分かりたくない

 キースが死んだことを、僕は領主館に居て知った。


 僕の領内での担当は、教育関係と図書館だ。

 実際は図書館関係に関しては、もうほぼ僕が関わる以前から担当しているラーリド様に全面的に任せてしまっている。 僕がするのは、新たな図書を買い付けるための予算と、結構膨大な量になる紙などの必要資材をハキと一緒に買い付けたりすることだけだ。 それだけでも結構大変だけど。

 そして教育関係も、学校の方は今現在の学校はシルクが校長を務めているので、そっちもほぼお任せだ。 学校にはレンスとサーブも関わっていて、もっと上にイクス様がいて、相談役みたいになっている。 ま、こっちも心配はない。 領内のラミアの里以外の場所の基礎教育はハーピーの女性が主に回って、教育内容の統一を図っている。 町や村に元からあった学校も、少なくとも基礎教育は領として教科書を配ったりしているので、大丈夫だろう。

 ということで、僕が新たに取り組んでいるのは、基礎教育だけでなく、高等教育をこれからどうしようかということだ。 まあ、色々と事務仕事は回ってくるのだけど、それは仕方ない。


 で、その担当している仕事だけなら、僕はラミアの騎士の中では割と仕事量が少ない方になると思うのだが、いや、たぶん最も忙しくはなかったのではないかと思うのだが、実際はそんなことはなくて、クラッドさんと共に、領政全般をなぜか総括するような、非常に忙しい立場に立っている。

 つまり、アルフさんを補佐する立場、昔のカーライルさんやストーム師匠の立場になってしまっている。

 これがめちゃくちゃ忙しい。

 同じアルフさんの補佐的な仕事ではあるのだが、エーレアたちは秘書的な仕事だし、シトリさんは純粋に事務官という感じ、まあその仕事で最初は領主館に来たのだから当然だ。 そしてシルヴィさんは貴族関係というか王都との諸々の相談役という感じだ。

 ま、それぞれに役割があって、忙しくしている。

 で、僕とクラッドさんはというと、諸々全てという感じで、色々なことをアルフさんと共に割り振ったり、決断したり、考えたりということになる。 自由裁量権も他の人に比べると遥かに大きく感じてしまうことになっている。

 うーん、どうしてこうなった。

 みんなに、僕とクラッドさんに押し付けて来られた気がするんだよね、もう。


 ま、そんなことになってしまっている為、僕は最近はラミアの里の家に居る時間よりも、領主館に居ることの方が多い感じになってしまっている。

 領主館の中に、仕事のための個室以外に、自室もあって、最近は順番で一緒に来るのに、子供たちまで下の半分は連れて来てしまっている。


 それだから、僕は今回のことをアルフさんと共に知ることになった。

 驚きと悲しみに襲われていると、すぐに第二報として、アレクが王都へと急行したと連絡が入った。

 僕は即座に、アレクがどうして王都に大急ぎで向かったかの理由が理解出来た。 それは僕に限らず、アルフさんもクラッドさんも理解しただろう。 ブマーはどうだろう、そういうタイプではない気がする。


 やはりアレクは、ハーピー族が英雄視するだけあるというか、英雄の器だと僕はその時感じた。

 僕はキースのことを聞いて、頭が悲しみに支配されてしまって、その事件の詳細をまずは知りたいという気持ちに引き摺られてしまったのだが、アレクは僕よりもキースとの付き合いが深く、それが故に悲しみも深いだろうに、その気持ちを押し込めて自分のしなければならないことを優先したのだ。

 アレクのその即座の動きは、その動きを知れば、ある程度諸々の事情に詳しい立場にある者なら、その意味はすぐに理解できるだろう。

 だが、それが理解できるからといって、即座にその行動が取れるかどうかは全くの別問題だ。 僕がすぐにその行動の意味が分かったように、その行動を取らねばならないと気づく者も多いと思う。 でも、即座に動くというのはとても難しいと思うし、即座に動いたことによる、嫌な変な言い方だけど、利点はとても大きい。僕はそんなことも即座に理解した。


 僕はその第二報を聞いた後、即座にラミアの里に戻った。


 数日後、僕はラミアの里で、アルフさんとボブを迎えた。

 2人は前線本部となったばかりのラミウィン領邸から、わざわざ馬を走らせて来たのだ。


 王太子殿下と、アレク、デイヴ、それにトルセン子爵はカドス邸に行ったのだという。

 その不在時を利用して、2人は忙しくしていて疲労もしているだろうに、わざわざ僕を訪ねて来たのだ。

 わざわざ来た理由は分かっている。 だから、わざわざ来てくれなくても良かったのに。

 でも、来てくれて、直接僕に頼んでくれた、その心はとても嬉しい。


 「エレク、なんで急にラミアの里に戻ったのかと思ったのだが、こういうことだったんだな。

  私は鈍いから、後から気がついたよ」


 「いえ、あの時、アルフさんは領内の全体というか、多くの人に命令を出さねばならなかったですから、そっちに気を取られていたから」


 「エレク、すまねぇ。

  お前に辛い役目をさせることになってしまった。 俺だけじゃなくて、みんな、分かっている。

  本当はみんな一緒に出来れば良いのだけど、本当にすまねぇ」


 「ボブ、分かっているよ。

  分かっているから、そんなに済まなそうな顔をしないでくれ。

  みんな、それぞれにしなければならないことがある。 そして今、ラミアの里で出来るのは僕だけなんだ。 僕がするに決まっているだろう。

  そうじゃなきゃ、誰がやるんだ。 ラーリン様たちラミアだけに任せるのは、もっと酷なことだろ」


 「そうなんだけど、それは分かっているのだけど、そんな酷なことを俺たちはお前1人に任せるしかねぇ。 本当にすまねぇが、よろしく頼む」


 「ああ、ボブ、分かっている。 みんなの気持ちも何もかも。

  安心してと言うのは変だけど、僕が代表して執り行うから、任せてくれ」


 時間のない2人は、すぐにラミウィン領まで迎えに行くアーリンさんたちと戻って行った。



 僕が大急ぎでラミアの里に戻って来たのは、キースたちの遺体を火葬しなければならないからだ。

 ケンたちが死んだ時に、僕たちは死んだ時には火葬にして家族一緒の墓に埋葬されるようにしようと決めた。

 ケンたちの時には、水難事故で遺体がなかったので、そう決めただけで事が済んでしまった。

 僕たちは、その時に自分たちが死んだ時のことを真剣に考えておく必要があることを痛感したのだけど、それでもやはり現実認識に逃げていた。

 火葬と決めたのに、その火葬のための設備を作っておかなかったのだ。


 火葬と一言で言うが、遺体を燃やして骨にするのは、意外に難しい。

 ゴブとの戦いで討ち取ったゴブは全て焼いて処理したのだが、燃えやすいゴブでも、野焼きにするとかなり大変だ。

 それに、あまり描写したくはないが、生き物はそのままの姿で焼くと、かなり動くのだ。 肉を焼いた時に縮むのと同じ原理だ。

 それを目にするのは、あまり気持ちの良い者ではない。


 そこで、人を野焼きする時には、燃え残ることが無くなるようにする意味も兼ねて、遺体を布でグルグル巻きにして、その布にたっぷり油を浸すといった前処理をする。 それでも多々動いてしまうので、酷いと言って良いか、それとも丁寧と言って良いかわからないが、丁寧な処理をするところでは、遺体の腱を切ったりもしたりするという。

 僕はそんなことはしたくない。


 それを避けるには、遺体を焼くための特製の炉を作らねばならない。

 この地方では土葬が普通だったので、僕も詳しくは知らなかったので、急いで文献で調べたり、火葬が普通の王都付近に済んでいた移住者なんかに話も聞いた。

 大体の感じとしては、鉄の精錬のための反射炉の小型版のような炉を作れば良いらしい。

 僕は大急ぎでラミアの里に戻って来て、多くの人にも手伝ってもらって、キースたちの遺体を火葬するための炉を作っていたのだ。

 火葬を提案した時に、即座に後のために作っておかねばならない施設であったのに、それを怠っていたから、こんな突貫工事になってしまったのだ。 完全に提案した僕の怠慢だ。


 でも、工事の作業に没頭している時はいい。 だけどふと思ってしまうのだ。

 こんな火葬用の炉の必要になんて気付きたくなかった。 自分がキースたちを仮装しなければならないなんて、自分で分からなければ良かった、と。


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