父と兄
時間があきましたが、更新します。
相変わらずのユリウスです。
私は父の過去の行いに頭を抱える。
花の模様がないことは確実な証拠になる。
しかし、父の今までの女性遍歴のせいで、ニナが本当に父の子でないと世間を信じさせるだけの信用がない。
というか、平民や他国の方は知らなかったり、一族に伝わるタトゥーみたいなものだと認識しているだろう。
ニナの話していた父とニフィアの出会いとは違うことから、ニフィアは彼女に嘘をついてまで彼女をユリウス・マクレルの娘にしたいのだろうと考えられる。
「父上、貴方には信用がありません。特に、女性関係について」
はっきりと言う兄様。
その顔には疲労が滲み出ている。
「まず考えられる手段としてはニナに正式な審査を受けてもらうことです。しかしこの場合、万が一があります。そうでなかった場合にはニフィアとニナ、それから彼女を養子としているのにも関わらず、我が家に対する言動に苦言を呈さないオルデ男爵にも厳しい罰を与えることが可能です」
「でも、ニナは話聞かないからそれを理解できると思わないけど」
兄様の話を遮ってしまうのは申し訳ないが、今までニナに絡まれてきた側としては無理だと思う旨を伝える。
「問題はそこです。父上の女性関係については平民の間でも噂になるくらい酷いです。なので、ニナが権力を使って結果を捏造したなどと言いふらそうものなら、我が家のみならず貴族に対して不信感が生まれます。
貴族は平民との間に生まれた子を認知しないと、ただでさえ一定数の人間は上級階級の人間に対して不満を抱いています。そこもアレコレ言ってきて面倒くさかなることは必須です」
それは確かにありそうだ。
どうやっても人間は平等には生きられない。
平民でも貴族でも、自らの人生を幸福であると言う人と、
不幸であると言う人がいる。
母も生まれは才能だと言っていたし。
平民だからこそ出来る生活、貴族だからこそ出来る生活がある。
だから、憧れる平民は貴族に、貴族は平民に。
所詮、無い物ねだりだ。
「もう一つの手段としては徹底的に黙殺することですかね。
次期当主の立場から言わせてもらうと、ニナが父上の娘だろうがそうじゃなかろうが、マクレルを名乗る者はこれ以上いりません」
まぁ、実質的にマクレル伯爵家を支配しているのは兄様だ。
兄様にとってこれ以上異母の弟妹が増えるのは不利益しかない。仲良くやれているならまだしも、ニナは私に対しては強い敵対心がある。
そんな人間を身内とするほど貴族の世界は優しいものだはない。
「しかし、黙殺を選ぶとサラに被害がおよぶ可能性が高くなります。ですので、黙殺はなしです」
兄様は溜息をつく。
セドリックはもう親を見ているとは思えない目で父を見ている。
「正式な審査を受けてもらうの?」
と、セドリックが尋ねる。
「いえ、その前に話し合いの場を設けます。もちろん、ニナだけではなくニフィア並びにオルデ男爵も呼びます」
そこでなぜか急に立ち上がり、父に近いた兄様は少し緩み始めていた父を拘束する縄を締め直す。
「父上にはその話し合いの場に参加していただく必要がありますので、これから外出を禁止します」
話を聞かず縄から抜け出そうとしていたであろう父は、
兄様の行動に肩を落としていたが、
外出禁止のセリフを聞きガバッと寝そべったままで顔だけ勢いよくあげる。
「そんな、グレイ、考え直してくれ!愛しいリゼが家で僕の帰りを待っているんだよ!」
悲痛な表情を浮かべる父に対して、兄様は一切感情が表に出さず父の願いを切り捨てる。
「父上がご自身でまいた種が実をつけたのです。収穫はご自分でなさって下さい。それから父上の家はここです」
「ひどいよグレイ……僕は何も悪くないじゃないか、ニフィアが嘘をつきそれを鵜呑みにしたその娘が起こした問題だろ?」
「父上の素行が悪くなければ、ここまでややこしいことにはならず、妄言による不敬や侮辱で済ませることができたのですよ」
冷静な様で兄様は凄く怒っているようだ。
笑顔になってきた。
「でも、それだけのことで愛し合う者たちを引き裂くのはおかしいよ……」
「わぁ、相変わらずの恋愛脳」
父の発言の直後に凍りついた空間にセドリックの声が響く。
「父上、俺は貴方が誰を愛していようが誰に愛されていようがどうでもいい。貴方の女癖の悪さは今に始まったことじゃないからな。でも、俺の妹に迷惑をかけているこの状況を見過ごすことはできない」
兄様、怒っている。
「でも……」
父がさらに言いつのろうとすると兄様からのどんでもなく恐ろしい視線が父に突き刺さる。
「でもではない。父上の外出禁止は問題が解決するまで決定事項です」
取りつく島もないとはこのことか。
「父上のこれから俺と一緒に、一応話し合いが決裂した場合に備えて、正式な審査を受けれるよう国に申請しに行きますよ」
家にいる護衛兵に指示をして父をまるで荷物のように運ばせる兄様。
「サラは急に呼び出してごめんね。今日はもう遅いから寮には帰らず、明日は家から学園に行きなさい。
セドリック2人で先にディナー済ませていいからは今日はもう休んでね」
兄様は私たちに優しい笑顔を向け、父を運ぶ護衛兵を追いかけるように部屋から出て行った。




