貴女にもあの女にも興味がない
いつもよりさらに短いです。
また馬車に乗せられて運ばれる。
どれだけ遠くに行けば気がすむのだろうか。
こんなに時間をかけて誘拐してたら、探して下さいって言っているようなものだ。
「さあっ、着きましたわサラ様!ここがあなたの最後の地ですわよ」
目隠しを外される。
見えるのは海。
王都の近くにも海はあるがそことは色が異なる。
「ここ最近の私の悩みはサラ様に溺死をプレゼントするか、餓死をプレゼントするかでしたの。
しかし、決め切れなかった私は一番いい方法を思いついたのですよ。
サラ様にはこの船に乗って海へ出てもらいますわ。
溺死するか餓死するかはサラ様の運次第ですわよ」
嬉々として話し続けるリティーン・ヘルデルは完全に自分に酔っている。
あいにくだが私は溺死も餓死もする予定はない。
「体当たり女と共謀していたのではなかったの?」
まあ、海に出るよりここで兄様たちが迎えに来るのを待っていて方が賢明なので話を引き延ばす。
助けてと叫びたいところだが、お腹が痛くて大きな声を出せる気がしない。
「体当たり女?………あぁ、アリア・オトレッメ子爵令嬢のこと?あんな馬鹿と本気で手を組むわけないでしょ」
心底馬鹿にしたようにいうリティーン。
「そうなの?」
私がそう聞くとまた1人で話し続ける。
「そうに決まっていますわ。
たかが子爵令嬢の分際で格上である我が家や、殿下をはじめとした方々と自分は同等だというような振る舞い。
呆れるしかありませんでしたわ。
幼子ならまだしも16になる令嬢としてはあるまじき姿ばかり見せ、手を組んでからは私と共にいるのだから何もないところで転ぶのをやめなさいと、無闇矢鱈と殿下に話しかけるなと散々言って聞かせたのに何1つ守れないのですわよ。
捨て駒にするに決まっているでしょう」
まあ、そうだろう。
私でも体当たり女と組めと言われたらかなり困る。
「こんなことしてバレないと思っているの?」
「バレてもいいようにしているに決まっているでしょう。これはアリアと私の従者である彼が仕組んだということになるのよ」
そう言ってリティーンは自分の隣にいる男性の腕を掴んだ。
「人のせいにするのね」
「当たり前ですわ。なぜ、私が責任を取る必要があるのです」
彼女はきっと典型的な貴族のご令嬢なのだろう。
聞いた話だとリティーンはヘルデル家で蝶よ花よと育てられているそうだ。
彼女には年の離れた兄がいるが、その兄は家に無関心で伯爵と夫人は遅めにできた娘を溺愛している。
アリアも自分が世界の中心だという考えだが、リティーンも大概そうだ。
いや別に世界の中心が自分なのはみんなそうだからいいのだが、父様のことで私が巻き込まれているのが気に食わない。
「さぁ、サラ様のお話もこのあたりでやめておきましょう。名残惜しいですが、さようならの時間ですわ」
リティーンがそう言うと彼女の従者が私に近づいてくる。
その2人のさらに向こうに手で大きく丸を作るトムが見える。
それを確認した瞬間、僅かだが自分の口角が上がるのがわかった。
たった2人で我が家を出し抜けると本当に思っていたのだろうか。
大きく息を吸う。
リティーン・ヘルデル、さようなら。
「助けて!」
ぐたぐた喋っていただけな気がします。
実は目隠しを外されてからはずっと視界にトムが入っていました。
トムが口の前でバツを作っていたので助けを求めなかっただけで、いつでも助けを求めることはできました。




