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ホックス王国にてレッドアン大森林にダンジョンが発生した可能性が高いと国からの発表があった翌日、冒険者組合の一角にはダンジョン調査依頼専用の掲示板が出来たのだが、ダンジョン調査以来の大きな依頼の他、様々な情報に混じって謎の貼紙が張り出されていた。
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<ダンジョン調査依頼>
・大森林内にて魔獣の分布、植生の変化、地形の変化など大森林の状態についての調査を依頼する。
なお、大森林内にて遭遇した魔獣は可能な限り退治すること。
大森林への出入りの際には必ず指定されている場所にて常駐している国軍や組合職員へ申告をすること。
・基本報酬:1日10~30エービス
その他、情報及び討伐実績により追加報酬あり。
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<調査の拠点情報>
塩樹の森沿岸部に井戸及び調理場が設置されているベースキャンプは、無料で使用できます。
なお、併設の温泉は有料です。
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<注意!!>
体に青いラインの入ったユニコーンウルフ、フォレストウルフはダンジョン調査協力者配下の魔獣なので、討伐対象からは外れます。
敵対行動は禁止となります。
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ホックス王国は大森林があるとはいえ危険な魔獣が少なく、国内の治安も良い為に冒険者への依頼も少なくて専業で常時動いている者は50人もいないだろう。
それも半数は駆け出しや、やっと一人前になった程度であり、3レベル冒険者は10人程、4レベルとなるとすでに引退している者が2人いるだけで現役では存在しない。
ハッキリ言って各地の組合の中でも弱小の部類に入るのだが、4レベル魔獣など数年に1度、出るかどうかな上、そうなると国軍がしっかりと対処してしまうので仕方のないことだった。
そもそも人族にとって3レベルまでは生きてさえいればなんとか到達可能なレベルだが、4レベル以上になれるものはほんの一握りなのだ。
絶対数が少ない上、大した仕事もないこの国に居着くことはほとんどない。
今日は現役の冒険者がほとんど集まっており、皆がダンジョンの話で持ち切りだったのだが、女冒険者のコンビがその様子を見て驚いていた。
「へえ! ダンジョンが発生したんだ。良いね、これで近場で稼げそうじゃない。ってカオ? なにを見てるの?」
「……変わった貼紙」
「ん? どれどれ……塩樹の森に温泉なんかあったっけ?」
「ユニコーンウルフ。始めて聞く魔獣」
「魔獣使いなんてホックスには居なかったと思うけど、組合でダンジョン攻略用に呼んだのかな」
2人は先日20歳の若さで3レベルに到達した若手のホープとして冒険者組合でも注目されているユウとカオ。
商人の護衛任務で2ヶ月ほど留守にしていた為、帰ってくるなりのこの騒ぎで状況がまだ良く分かっていなかったので、とりあえず皆が群がっている掲示板を確認しに来たのだが、ダンジョンの発生という大事件に驚きながらも喜んでいた。
なにしろホックスでは3レベル以上の冒険者が必要とされる依頼が少ない。
実際3ヶ月ほど前に3レベルと認められた2人だったが、2レベルでも受けられる依頼しかなく今回の護衛任務も2レベル冒険者の報酬に気持ち上乗せがある程度の報酬でしかなかった。
依頼の報酬額は依頼達成に適性だと判断されたレベルによって決まるので、やっと3レベルになったというのに稼ぎが変わらないという現実に苛立っていたのだった。
そこにこのダンジョン発生だ。
国、そして民にとっては厄介な出来事だとは重々承知しているが、やっと稼げると喜ぶのは仕方のないことだろう。
「ユウさん、カオさん、帰ってきたばかりなのにもう次のお仕事ですか?」
「稼げる時に稼いどかないと」
「ん、大切なこと」
2人は馴染みの受付嬢を見つけ依頼を受けるついでに詳しい話を聞く。
「つまり目的は魔獣の間引きとダンジョン中心部の特定ね」
「はい、森林型ダンジョンはとにかく広いことが多いのですが、中央に向かうにつれ高レベルの魔物が出てくる傾向がありますので、魔獣を討伐してくだされば組合で情報をまとめてさせていただき、中心部の割り出しを行います」
「最終的にどうするかは決めてる? まさか攻略を目指すとかじゃないよね?」
「組合としては出来るだけ残したいと王国に進言していますが、ダンジョンの危険度次第でしょうね」
「安全第一」
「まあそうなるよね、ならやっぱり稼げる内に稼いでおかないと」
饒舌で社交的なユウと寡黙で内向的なカオ。
まったくタイプが違う2人だが冒険者になる前からの付き合いであり、現在でも互いへの信頼は厚い。
役割分担もしっかりしているので、今も主に話すのはユウでカオは時折ボソリと言葉を挟むだけだ。
「それで調査場所のオススメとか要望とかあるの? 出来るだけ聞くよ」
「まだ調査を始めたばかりですので出来るだけ広範囲の調査をお願いします。あと、帰りには塩樹の森にあるベースキャンプがオススメです」
「へえ、ベースキャンプ? そんなに使いやすいの」
「使いやすいと言いますか……温泉、ですね。うん温泉は良いものです」
「温泉?」
楽しそうになにかを思い出している受付嬢はとにかく行ってみれば分かるからと言うだけで詳しいことは教えてくれなかった。
そして最後に注意することとして、青いラインが胴体から尻尾にかけて入っているフォレストウルフには手を出してはいけないと2人に教えた。
「キャンプスペースの管理人をしている魔術師の方の使い魔とその仲間でして、危険はありませんのでお願いします」
「つまり……群れのボスを使い魔に?」
「へえ、それは珍しいね。よっぽど凄腕の魔術師なの? やっぱり白ヒゲのおじいさんとか?」
「それが驚くほどの美少女なんです! 研究や知識の収集がメインだと言っていましたが、魔術の腕前もかなりのものでしょうね」
最後に受付嬢はその魔術師の研究の成果だという、森林型ダンジョンの特徴や大森林で確認された魔獣の対策法などをまとめた本が、数冊複製されており資料室で閲覧できるのでぜひ読んだほうが良いと薦めた。
「うわ、なにこれ。めちゃ具体的だしその辺の図鑑とかよりも凄く詳しい!」
「……勉強になる」
「え、ユニコーンウルフって4レベルに区分されてるじゃない」
「4レベル魔獣を使い魔にしている魔術師……面白そう」
薦めに従い資料室を訪れたユウとカオは、結局日暮れまで資料室に篭ってしまった。
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2日後、ユウとカオの冒険者コンビは大森林を塩樹の森に向けて歩いていた。
「いやー、大漁大漁! ハンマーヘッドボアを狩れるなんて幸先良いね!」
「ん、マジックバック買って良かった」
「貯金をほとんど使っちゃったけど、この分ならすぐ元が取れそう」
昨日、樵の集落から大森林に入り1日の探索を行って夜営。
今日も午前中は探索を行い帰ってきたところなのだが、午前中の探索でハンマーヘッドボアを見つけて狩ることが出来たのだった。
ハンマーヘッドボアはトンカチ状に変形した牙を持つ猪の3レベル魔獣だ。
牙と毛皮が素材として売れる上に肉も高額で売れるので実入りの良い魔獣だが、今まで大森林では滅多に捕れることがなかった。
その上、ゴブリンやサヴェッジラビットなど定番の魔獣も狩れたのだから、2人としては大満足の探索だった
「そろそろ塩樹の森の近くだけどホントに温泉なんてあるのかな?」
「さあ? ……なにか居る!」
「え、こんな浅いところまで魔獣が出るの!?」
音を立て薮の中から姿を表したフォレストウルフにいち早く反応したカオの言葉に、鼻歌を歌いながら歩いていたユウがすばやく剣を構えたが、カオはそんなユウを手で制した。
「……青いラインがある」
「え? あ、ホントだ。ってことは」
2人の前に表れたフォレストウルフはその茶色の体の数箇所に細長い青のラインが走っていた。
それをしっかり認識したことを理解したのか、フォレストウルフが小さく鳴いて先導するように歩き出した。
「あれって道案内ってことかな?」
「……振り返って待ってる」
「あー、そうみたいね。とりあえず行ってみようか」
半信半疑で2人がフォレストウルフに着いていくとすぐに人の声が聞こえてきた。
「案内してきてくれたんだ、ありがとうね」
木々が無くなり見通しの良い場所に出ると、お座りしているフォレストウルフの頭を撫でている少女が居た。
そのさらに先にはいくつかのテントと木製の建物があるのも見える。
フォレストウルフが嬉しげに尻尾振って森へ戻っていくと、少女は2人の冒険者に笑いかけた。
「いらっしゃい。魔女のベースキャンプへようこそ」




