雨を知りたいNOVA
はじめまして、または読んでくださってありがとうございます。
地下シェルターで育った少女・NOVAが、
“まだ知らない世界”を五感で学んでいく物語です。
今回はその第二歩。
「雨の匂い」を知らないNOVAが、
初めて“雨”という存在に心を向けるお話です。
静かに読める短い章なので、
ひと息つくような気持ちで楽しんでいただけたら嬉しいです。
地下シェルターの仮想教室。 巨大モニターには、地上の映像が映し出されていた。 空から落ちる無数の水滴。 濡れた地面に広がる波紋。 揺れる木々。 青い光が教室全体に反射し、静かな空気を満たしている。 NOVAは、その映像をただ一人で見つめていた。 「……雨って、どんな匂いなんだろう」 思わず漏れた声は、誰にも届かない。 授業が終わり、NOVAは白い廊下を歩く。 無機質な蛍光灯が、一定のリズムで彼女の影を伸ばす。 その足取りは軽いようで、どこか沈んでいた。 ――雨の匂い。 それは、彼女がまだ知らない世界のひとつ。 答えを求めるように、NOVAはおじさんの工房へ向かった。 「おじさん……」 工具の音が止まり、おじさんが顔を上げる。 「NOVA、どうした? なんか考えごとか?」 NOVAは少しだけ不安そうに、おじさんを見上げた。 「ねえ、おじさん……雨って、どんな匂いがするの?」 おじさんは目を瞬かせ、少し困ったように頭をかいた。 「雨の匂い、か……説明が難しいな」 そう言いながら、古びた鉄板を取り出す。 そして、上から水を一滴落とした。 じゅっ、と小さな音がして、白い蒸気が立ち上る。 NOVAはその蒸気をじっと見つめた。 「これが……雨……?」 おじさんは首を横に振る。 「違うな。本物の雨は、もっと優しい。もっと自由だ」 「自由……?」 NOVAは胸に手を当て、そっと目を閉じた。 蒸気の匂いを吸い込みながら、 まだ知らない“本物”を想像する。 そして、小さく笑った。 「いつか……本物の雨を感じてみたい」 おじさんはその横顔を見つめ、静かに微笑んだ。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
NOVAにとって“雨”は、
まだ映像と蒸気でしか触れられない遠い存在です。
それでも、彼女は確かに一歩前へ進みました。
次の章では、
NOVAが「風」という、触れる世界」に出会います。
よろしければ、続きもお付き合いください。




