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NOVAは未来を見る  作者: nova_miru


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10/16

第10話「友達って、なんだろう。」

第10話です。


空、雨、花、星、海。


NOVAは少しずつ、地下シェルターの外にある世界を知ってきました。


そして今回は、初めて「人との繋がり」に触れるお話です。


当たり前のように誰もが持っているもの。


けれどNOVAには、まだよく分からないもの。


それが――友達。


どうぞ、お楽しみください。


【シーン1:仮想学校】


「――『友達』とは、互いを信頼し、支え合う存在のことです」


スピーカーから流れる教師AIの講義は、いつも通り正確で、少しの迷いもない。


「人間社会において、非常に重要かつ普遍的な関係性であり、共通の関心事や深い精神的結びつきによって形成されます。利害関係を超え、互いの幸福を願い合うことがその基盤となります」


黒板を模したホログラムの画面に、楽しそうに肩を組む少年少女のイラストが浮かび上がる。


NOVAは、その言葉のひとつひとつを聞き逃さないよう、真面目に机に向かっていた。


(互いを、信頼し、支え合う……)


ノートに文字を書き写しながら、NOVAは小さく首を傾げる。


頭が良い彼女は、辞書的な意味ならすぐに理解できた。


けれど、その言葉が持つ本当の温度のようなものが、どうしても胸の奥にまで届かない。


言葉の意味は分かる。


けれど、実感が湧かない。


教科書の中だけの遠い概念に、NOVAの心には小さな疑問と、それ以上の深い興味が芽生え始めていた。


【シーン2:廊下】


授業が終わり、仮想空間から現実へと引き戻される。


NOVAは、いつものように地下シェルターの冷たい白い廊下を歩いていた。


「あはは、本当? それウケる!」


不意に、無機質な廊下に不釣り合いな明るい笑い声が響いた。


NOVAは足を止める。


少し先で、二人の女子生徒のホログラムが熱心に話し込んでいた。


一人は快活そうな茶髪のポニーテール。


もう一人は知的な雰囲気の黒髪眼鏡の少女。


二人はお互いの顔を見ながら、本当に楽しそうに笑っている。


NOVAはその場に立ったまま、じっと二人を見つめた。


何を話しているのかは分からない。


何がそんなに面白いのかも分からない。


シェルターの維持にも、生存にも関係のない話なのだろう。


それなのに。


二人は、とても楽しそうだった。


NOVAの目は、その笑顔から離れなかった。


【シーン3:観察】


気付けば、NOVAは二人のすぐ近くまで歩いていた。


「……?」


ホログラムの少女たちが、突然目の前に現れたNOVAに気付き、会話を止める。


NOVAは茶髪の少女の顔をじっと見つめた。


ホログラムの光が瞳の中で小さく揺れる。


もっと知りたい。


もっと見てみたい。


友達と一緒にいる人は、どんな顔をするのだろう。


どんな気持ちになるのだろう。


NOVAは純粋な疑問のまま、さらに顔を近づけた。


「え、あの……?」


「な、何かな?」


突然の距離感に、二人は困ったように顔を見合わせる。


少し頬を赤くしながら、不思議そうにNOVAを見返した。


けれどNOVAに悪意はない。


ただ、友達を理解したい。


その気持ちだけが、彼女を突き動かしていた。


【シーン4:疑問】


ホログラムの少女たちと別れ、また一人になったNOVAは、シェルターの静寂の中で考え込んでいた。


AIの先生が言っていた、お互いを支え合う存在。


さっき廊下で見た、眩しいくらいに笑い合っていた二人。


頭の中でいくつものピースを組み合わせようとするけれど、やっぱり最後の中心が綺麗に嵌まらない。


「友達って、なんだろう……」


ぽつりと呟いた声は、冷たい壁に吸い込まれて消えた。


考えれば考えるほど、それは空や海と同じように、今の自分には手の届かない、だけど酷く美しく魅力的なものに思えてくるのだった。


【シーン5:工房】


気づけば、NOVAの足はいつもの場所へと向かっていた。


重い金属の扉を開けると、シェルターの駆動音とは違う、不規則で力強い機械音が鼓膜を震わせる。


スパークの鋭い光と、オイルの匂い。


薄暗い工房の奥では、いつものようにおじさんが黙々と作業を続けていた。


どこか冷え切ったシェルターの中で、この場所だけは、NOVAにとって不思議と温かい。


分からないことがあった時、いつも静かに答えをくれる人が、そこにいるからだ。


【シーン6:質問】


「おじさん」


工具を握るヴォルクの背中に、NOVAが静かに声をかける。


ヴォルクは手を止め、鉄の仮面の奥にある無骨な視線を、ゆっくりとNOVAへと巡らせた。


「なんだ、NOVA。また何か、学校で新しいことでも習ったのか」


NOVAはおじさんの側まで歩み寄り、胸の奥に大切に抱えてきた疑問を、真っ直ぐにぶつけた。


「友達って、なに?」


「……」


ヴォルクの手が、今度は完全に止まった。


鉄の身体の奥で、かつて自分が失ったもの、守れなかったもの、あるいは二度と手に入らない人間らしい絆の記憶が、鈍い痛みを伴って呼び覚まされる。


それは、海の音を説明するよりも、ずっとずっと難しい問いだった。


工房の中に、静かで、どこか優しい沈黙が流れる。


ヴォルクはNOVAの純粋な瞳を見つめたまま、簡単には言葉を選べずにいた。


【シーン7:ラスト】


NOVAはおじさんの隣に立ちながら、静かに答えを待っていた。


おじさんなら、きっと何かを知っている。


そう思ったからだ。


工房には機械の駆動音だけが響いている。


(私にも、いつかできるのかな)


その時。


NOVAは初めて気付いた。


空を見たい。


雨の匂いを知りたい。


花畑を歩いてみたい。


海の音を聞いてみたい。


それと同じように。


友達が欲しい。


それは、願いだった。


まだ形も分からない。


どうやったら手に入るのかも分からない。


それでも。


胸の奥に、小さく確かな憧れが生まれていた。


(友達って――)


(どうやったら、なれるんだろう)


ヴォルクはまだ答えを探している。


NOVAもまた、その答えを探している。


工房の静かな空気の中で。


少女は初めて、「誰かと繋がりたい」と願った。


それは、


空を夢見た日と同じくらい、


大切な願いだった。


(第10話 End)


第10話を読んでいただき、ありがとうございました。


今回は「友達って、なんだろう。」というテーマでした。


空や海と同じように、NOVAにとって友達もまた、見たことはあっても本当には知らない存在です。


私たちにとって当たり前のことでも、NOVAの目を通すと少し違って見える。


そんな物語になっていたら嬉しいです。


皆さんは、友達って何だと思いますか?


もしよければ、感想や皆さんの考える「友達」を教えてください。


次回、第11話。


NOVAはもう少しだけ、その答えに近づこうとします。


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