#..3
「着いたな・・・」
「CENTRAL、か・・・」
二人の兄妹は、大きな都市の入り口を前にして、ポツリとため息のようにつぶやいた。
「ここが、全ての出発点」
「ホント、大きな都市だね。私たちがいた土地が田舎なだけかもしれないけど」
「さぁて、行くとするか」
門のところに立っていた用兵に身分証明書を渡し、CENTRALの玄関をくぐる。
人が多い、がやがやしたユーラシア大陸中心部のCENTRALは、新しい人間が入ってきても、誰も気付かない。
皐月と水落の出身地であるJAPANの片隅では、人が一人入ってきただけで、そこら辺の人はみーんな新入りを探索しに行ったのに、大違いだ。
「んー・・・」
皐月が大きく伸びをすると、その後ろを歩いている水落に、霊気がざっと降りかかった。
「・・・皐月兄、霊がいっぱい着いてきてるんだけど」
「マジで?・・・あら」
水落が明様に嫌そうな顔で皐月を見上げる。
皐月がさっと手を横に振ると、霊気がよけた。
「皐月兄の霊は、私の言うことなんて一つも聞かないから」
水落が小さくため息をつく。彼女も、あまり力は無くとも、霊能力者の端くれだった。
「仕方ねーじゃん。俺だって、好きでまとってるわけじゃないんだし。とりあえず、おじさんを探してくれ」
「わかった」
皐月が少しふくれっつらをしたまま、水落のほうをちらりと向く。
水落は、なんのためらいもなく、目を閉じた。
「・・・リヴェ噴水の前」
「了解」
皐月はそれから地図も見ないで歩き出す。彼の頭の中には、もう既に、この町の地図が完璧にインプットされていた。
「リヴェ噴水の前なんかで、何してんだ?」
「田舎じゃ見なかった出版社の新聞読んでる。この間あったときより、白髪増えてるね」
「マジかよ」
彼女の台詞に、皐月は思わず苦笑する。
二人の横を、古い呼び名で言うなら「西洋人」や「東洋人」が歩いていった。
「CENTRALは、ホントにいっぱい人がいるんだ」
リヴェ噴水のあたりで、自分たちと同じような黒髪を持つ人を見つけ、思わず水落がつぶやく。
「俺たちみたいな肌の奴はいないみたいだけどな」
その心情を察してか、さつきも相槌を打った。
そして、探していた人を見つけたのか、金髪で眼鏡をかけた男性に向かって呼びかける。
「おじさん!」
「おぉ、皐月と水落か!大きくなったなぁ」
彼もこちらに気付いたようで、にっこりと二人に笑いかけた。
「おじさんこそ、ずいぶんふけたんじゃないですか?」
皐月の皮肉も、やわらかい笑顔でかわす男性は、白髪交じりの金髪に、すこしやせこけた頬をしている。
薄汚れたワイシャツとジーンズが、なぜかしら似合っていた。
「君たちの噂は時々耳にするよ」
「へぇ、あんな田舎にずっといたのにですか?」
「メルウェイ兄妹といえば、ここでも有名だ」
「それは光栄です、ロザおじさん」
「・・・腕を上げたな、皐月」
やわらかく笑うロザの胸には、金色のバッジが光っている。
「ようこそ、CENTRALへ」
それが、軍の幹部の証であることは、二人とも心得ていた。




