#..4
「・・・そうか、水落のあの能力と、母親をね」
事情を粗方説明し、実の伯父はふぅんとため息をつく。
皐月が、続けて言った。
「あぁ。何か手は無いですか?ロザおじさん」
「そうだな・・・軍の幹部を使えば方法は見つかるかもしれないが・・・なかなか面倒なことになりそうだね。これは止めておいたほうがいいし・・・。
そうだ、私の上司に紹介しておこう。うまくいけば、秘密施設なんかに入りやすくなる」
「頼みます」
用事は、案外すぐに済んだようで、二人はロザの書斎を見せてもらおうと立ち上がった。
「ちょっと待ってくれ」
それを、ロザが引きとめた。
「おじさんの書斎も、何にも参考になるものは無かったね」
「まぁ、軍人だからな。霊能力者じゃねぇんだ」
「まぁね」
オープンカフェに上がりこみ、小さくため息をつく二人。
「その上司とやらが、変な奴じゃなかったらいいんだけどな」
「うん。正義主義者だったら、私殺されるよ」
「笑えない冗談言うな」
時間をもてあまして、退屈げにため息をついていた彼らの周りの空気が、少し和らぐ。
と、そのときだった。
「・・・皐月兄」
「あぁ、これぐらいなら、俺でも気付くよ」
反射的に皐月が目を細める。
すぐそばの大神殿の柱の陰。人影がこちらを向いていた。
その目が、敵意を含んでいることぐらい、誰が見ても明らかだろう。
「・・・雑魚か」
その様子を見て、皐月が判断を下し、ため息をつく。
普通、今から相手に飛びかかろうと思うとき、自分の存在は消さなければならない。
しかし、今見えている男は、自分の「気」どころか、姿すら隠せていない。
皐月が確認するようにあたりをちらりと見ると、あちこちから人影が伺えた。もう一度ため息。
と、同時に、四方からその人影と同じ服装の男たちが現れる。
店の客、店員の姿は見えない。店の中に避難した後なのだろう。
さらに大きくため息をついて、皐月はティーカップを持ち直した。
水落は、瞬時に机の下に飛び退き、首から提げた水晶のペンダントをぎゅっと握る。
男たちの様子を見ることもなく、皐月はカップを持たない手を頭の上で振った。
「皐月・K・メルウェイと水落・L・メルウェイだな」
「・・・そうだけど?」
「本当にこんなチビだったとは・・・」
その言葉に少しかちんと来たのか、皐月はいつもだったらあきれる表情を見せるところを、滅多に見せない鋭い目で男たちを見る。
「で、僕らに何の用事が?」
睨まれたことで、男たちもむっとしたようで、懐から短刀などの武器を取り出した。
「貴様を始末する」
「何のために?」
「霊能力者など、必要ないわ!」
その言葉に、皐月はコーヒーをすすって、肩をすくめる。
こんな低脳な人たちに怒るだけでも、体力の無駄だと顔が言っていた。
水落は、机の下に潜ったまま、様子をうかがっている。
自分が入る必要はないと思っているのだろう、その目が徐々に好奇に満ち始めていた。
「皐月兄相手に何秒持つかな、この人たち?」
小さく、そうつぶやいたのは、皐月の耳にも、男たちの耳にも入っていた。
「何秒持つも何も・・・この人たちはもう勝つことはできないんだけどな・・・」
困ったように皐月が頭を掻く。
「餓鬼が・・・なめやがって!」
皐月の言葉に完全にキレた男たちは、二人に飛びかかった。




