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Appearing ― 突然、君からのメッセージ ―  作者: 和泉發仙


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88/90

明日へ

Appearing


― 突然、君からのメッセージ ―


第86話・最終話


明日へ


前書き


事件には。


終わりがある。


捜査が終わる。


記録が残る。


名前が戻る。


でも。


人生には。


そのあとがある。


三か月。


半年。


一年。


時計は。


もう。


止まらない。


⸻


三か月後


十一月十八日。


海鳴町。


秋。


海。


夏より。


暗い。


風。


冷たい。


悠。


駅。


降りる。


久しぶり。


というほどではない。


あれから。


何度か。


来ている。


それでも。


駅前。


出るたび。


少し。


思う。


あの夏。


ここへ。


戻ってきた時。


自分は。


過去を。


探しに来た。


今日。


違う。


スマートフォン。


震える。


圭介。


『着いた?』


悠。


『今』


圭介。


『遅い』


悠。


『まだ約束の10分前』


圭介。


『俺はもういる』


悠。


『知らん』


送信。


歩く。


普通の。


メッセージ。


それだけ。


少し。


笑う。


⸻


午前十一時十二分


海鳴町・臨時捜査本部跡


もう。


看板。


外されている。


榊原。


ファイル。


閉じる。


宮本。


向かい。


座る。


十二年前。


海鳴町で。


起きたこと。


人間の側で。


確認できることは。


ほぼ。


整理された。


橘依子。


旧社地下から。


発見された遺骨。


身元。


確認。


当時。


町を捨て。


姿を消した。


教師。


ではなかった。


最後まで。


生徒を。


助けようとした。


教師だった。


メアリー・アンダーソン。


十二年間。


失踪者。


だった少女。


証言。


遺留品。


録音。


写真。


残された記録。


それらが。


一つずつ。


繋がった。


藤崎隆志。


供述。


続けた。


大石俊郎。


当時の。


記録。


対応。


隠したこと。


変えたこと。


調べられた。


藤崎正臣。


二〇二〇年。


死亡。


十二年前には。


生きていた。


一九五三年。


写真に。


写っていた。


少年。


それも。


確認された。


ただし。


怪異。


時計台。


十八時十分。


消えた町。


戻ってきた人。


その全てを。


警察の。


記録に。


書けるわけではない。


宮本。


「結局。」


「全部。」


「説明できませんでしたね。」


榊原。


「当たり前や。」


「説明できんもんを。」


「無理に。」


「説明したら。」


「それは。」


「事実やなくなる。」


宮本。


「……はい。」


榊原。


ファイル。


指。


叩く。


「それに。」


「十二年。」


「経っとる。」


「証拠。」


「足らん。」


「本人。」


「死んどる。」


「証言。」


「食い違う。」


「全部が全部。」


「綺麗に。」


「裁けるわけやない。」


宮本。


「それでも。」


榊原。


頷く。


「記録は。」


「直せる。」


ファイル。


表紙。


名前。


橘依子。


メアリー・アンダーソン。


榊原。


「おらんかったことには。」


「させん。」


宮本。


小さく。


頷く。


「はい。」


⸻


橘依子は。


生徒を置いて。


逃げた教師ではなかった。


メアリー・アンダーソンは。


何も言わず。


勝手に消えた少女ではなかった。


二人とも。


あの日。


ここにいた。


そして。


帰ろうとしていた。


それが。


十二年。


遅れて。


記録の中へ。


戻った。


⸻


午前十一時四十八分


中村写真店。


ベル。


鳴る。


「こんにちは。」


中村。


奥。


「遅い。」


悠。


「何で。」


「みんな。」


「先に来とる。」


悠。


店。


見る。


圭介。


いる。


紗季。


いる。


春人。


いる。


透。


蓮。


直哉。


ヨル。


久我。


レイ。


悠。


「何で。」


圭介。


「お前が。」


「最後。」


「約束。」


「十二時だろ。」


紗季。


「中村さんが。」


「十一時半って。」


「聞いて。」


悠。


中村を見る。


「俺。」


「十二時って。」


「言われましたけど。」


中村。


「知らん。」


「絶対。」


「わざと。」


「知らん。」


レイ。


「嫌われてんじゃない?」


「お前に。」


「言われたくない。」


中村。


奥。


戻る。


「ほな。」


「出すぞ。」


全員。


静かになる。


⸻


一枚。


大きな。


プリント。


中村。


置く。


朝。


海。


夏。


九人。


悠。


圭介。


春人。


紗季。


透。


蓮。


直哉。


ヨル。


そして。


真ん中。


メアリー。


金色の髪。


青い目。


普通に。


笑っている。


透けていない。


白い花。


そのそば。


悠。


笑っている。


悠。


しばらく。


何も。


言えない。


圭介。


「……いたな。」


紗季。


「うん。」


春人。


写真。


見る。


「いた。」


透。


何も。


言わない。


ただ。


笑う。


ヨル。


指。


伸ばす。


「メアリー。」


悠。


「ああ。」


中村。


「ええ写真や。」


悠。


頷く。


「はい。」


中村。


写真。


見る。


「もう。」


少し。


間。


「証拠にせんで。」


「ええ写真や。」


透。


顔。


上げる。


中村。


「誰かが。」


「おった証拠。」


「何かが。」


「起きた証拠。」


「そんなもん。」


「もう。」


「ええやろ。」


透。


写真。


見る。


十二年間。


撮った。


残した。


疑った。


比べた。


偽物。


本物。


写る。


写らない。


カメラは。


ずっと。


武器だった。


透。


「……はい。」


中村。


「写真は。」


「写真で。」


「ええ。」


透。


笑う。


「はい。」


⸻


午後零時二十三分


喫茶つばめ。


人数。


多い。


テーブル。


狭い。


圭介。


「俺。」


「バイト。」


「始めた。」


悠。


「何。」


「ホームセンター。」


レイ。


「似合う。」


「どういう意味。」


「何となく。」


紗季。


「私。」


「白石屋。」


「手伝ってる。」


圭介。


「卒業生。」


紗季。


「まだ。」


「言う?」


「すみません。」


春人。


コーヒー。


飲む。


悠。


「お前は。」


春人。


「まだ。」


「色々。」


「考えてる。」


「そっか。」


「十二年。」


「飛んだから。」


「急いでも。」


「仕方ない。」


悠。


「そうだな。」


蓮。


「俺。」


「学校。」


「戻ることにした。」


透。


「まだ。」


「手続き中。」


蓮。


「兄ちゃん。」


「それ。」


「俺が。」


「言うとこ。」


「事実。」


「細かい。」


透。


「あと。」


「部屋。」


「片付けろ。」


蓮。


「兄ちゃんも。」


「お前が。」


「帰ってきて。」


「散らかった。」


「嘘。」


二人。


言い合う。


直哉。


笑う。


少し。


疲れている。


でも。


笑う。


「俺は。」


「まだ。」


「警察。」


「行ってる。」


圭介。


静かになる。


直哉。


「でも。」


「毎日。」


「家。」


「帰ってる。」


悠。


「そっか。」


直哉。


「うん。」


「ちゃんと。」


「帰ってる。」


⸻


ヨル。


カレー。


食べる。


悠。


「また。」


「カレー。」


ヨル。


「今日は。」


「甘口。」


久我。


「こいつ。」


「辛いの。」


「無理やった。」


ヨル。


「痛い。」


レイ。


「辛い。」


ヨル。


「同じ。」


久我。


「まだ。」


「言うとる。」


みんな。


笑う。


ヨル。


スプーン。


持ったまま。


笑う。


もう。


誰かの。


名前を。


借りていない。


誰かの。


顔を。


借りていない。


ヨル。


それだけ。


⸻


午後二時〇八分


秋山家。


透。


一人。


棚。


箱。


出す。


古い。


カメラ。


置く。


十二年間。


一緒。


だった。


レンズ。


傷。


ある。


ストラップ。


擦れている。


透。


電源。


入れない。


箱。


中。


入れる。


蓮。


扉。


ところ。


「捨てるの?」


透。


「捨てない。」


「じゃ。」


「何。」


透。


蓋。


閉じる。


「しまう。」


蓮。


「もう。」


「撮らない?」


透。


「撮るよ。」


「新しいので。」


蓮。


「高いんじゃ。」


「高い。」


「買える?」


「……。」


「兄ちゃん。」


「仕事。」


「する?」


透。


「するよ。」


「たぶん。」


蓮。


「たぶん。」


透。


「うるさい。」


箱。


棚。


入れる。


終わり。


ではない。


役目が。


終わった。


それだけ。


⸻


午後三時十六分


墓地。


白い花。


春人。


置く。


まだ。


新しい。


墓標。


橘依子。


少し。


離れた場所。


メアリー・アンダーソン。


春人。


しゃがむ。


「今度は。」


花。


置く。


「三か月。」


メアリーの。


墓。


見る。


「早いやろ。」


風。


吹く。


返事。


ない。


春人。


笑う。


「十二年より。」


「マシか。」


立つ。


「また。」


歩く。


今度は。


十二年。


待たない。


⸻


半年後


二月。


横浜。


午前七時十三分。


アラーム。


鳴る。


悠。


止める。


「……眠い。」


起きる。


冷蔵庫。


開ける。


何も。


ない。


「……。」


閉める。


もう一度。


開ける。


当然。


増えてない。


スマートフォン。


見る。


仕事。


メッセージ。


今日。


出勤。


面倒。


変わらない。


悠。


顔。


洗う。


着替える。


玄関。


出る。


以前と。


同じ。


ように。


見える。


でも。


少し。


違う。


駅。


向かいながら。


スマートフォン。


予定。


開く。


次の休み。


日曜日。


何も。


ない。


悠。


少し。


考える。


『日曜 海』


入力。


止まる。


消す。


『日曜 どこか行く』


保存。


それで。


いい。


行き先。


まだ。


決まってない。


明日。


決めれば。


いい。


⸻


昼休み。


レイ。


メッセージ。


『今度ライブ来る?』


悠。


『いつ』


『来月』


『行けたら』


すぐ。


『それ来ないやつ』


悠。


『じゃあ行く』


『素直でよろしい』


次。


圭介。


『スマホ変えた』


写真。


送られてくる。


最新機種。


悠。


『使えるのか』


圭介。


『失礼』


『昨日店員に電話の切り方聞いた』


悠。


『使えてない』


圭介。


『うるさい』


悠。


笑う。


周り。


会社員。


弁当。


食べる。


普通の。


昼休み。


怪異。


ない。


時計。


止まらない。


それで。


いい。


⸻


一年後


八月十五日。


海鳴町。


祭り。


人。


多い。


焼きそば。


匂い。


子ども。


走る。


金魚。


水。


跳ねる。


悠。


歩く。


去年。


ここ。


みんな。


帰ってきた。


メアリー。


隣。


いた。


今年。


いない。


それを。


ちゃんと。


分かっている。


時計。


見る。


午後六時九分。


悠。


立ち止まらない。


六時十分。


鐘。


鳴らない。


町。


消えない。


誰も。


消えない。


六時十一分。


時計。


進む。


六時十二分。


進む。


悠。


もう。


見ない。


スマートフォン。


震える。


一瞬。


足。


止まる。


画面。


見る。


三浦圭介。


『どこにおるん』


悠。


吹き出す。


一年。


経って。


母親と。


同じこと。


言っている。


悠。


『祭り』


すぐ。


返事。


『知ってる』


『どこ』


悠。


『時計台の近く』


『俺ら白石屋の前』


続けて。


『早く来い』


悠。


『今行く』


スマートフォン。


閉じようとする。


少し。


止まる。


写真。


開く。


朝の海。


あの一枚。


みんな。


いる。


中央。


メアリー。


笑っている。


白い花。


悠。


隣。


あの時。


中村。


言った。


もう。


証拠にしなくていい。


悠。


今なら。


分かる。


これは。


メアリーが。


いたことを。


証明する。


写真ではない。


一緒に。


いた。


日の。


写真。


ただ。


それだけ。


それで。


十分。


悠。


画面。


閉じる。


「行ってくる。」


小さく。


言う。


返事。


ない。


通知。


来ない。


それで。


いい。


⸻


白石屋。


前。


見える。


圭介。


手。


振っている。


「悠!」


紗季。


いる。


春人。


いる。


透。


いる。


新しい。


カメラ。


首。


下げている。


蓮。


隣。


いる。


直哉。


少し。


遅れて。


来る。


ヨル。


久我。


一緒。


レイ。


屋台。


何か。


食べている。


悠。


歩く。


圭介。


「遅い!」


悠。


「約束。」


「してないだろ。」


「祭りの日は。」


「集まる。」


「去年。」


「決まった。」


紗季。


「今。」


「初めて。」


「聞いた。」


圭介。


「今。」


「決めた。」


春人。


「適当。」


透。


カメラ。


構える。


悠。


見る。


「撮るの?」


透。


「ああ。」


「何の。」


透。


少し。


考える。


「別に。」


シャッター。


切る。


悠。


「別にって。」


透。


画面。


見る。


「祭り。」


「来たから。」


「撮っただけ。」


悠。


笑う。


「そっか。」


「うん。」


写真。


それで。


いい。


⸻


夜。


花火。


上がる。


誰か。


笑う。


誰か。


食べる。


誰か。


喋る。


悠。


空。


見る。


一年前。


少女。


言った。


何でも。


終わる。


でも。


終わるから。


今日。


楽しい。


悠。


今。


少し。


分かる。


十二年前。


俺たちは。


明日を。


失った。


だから。


ずっと。


昨日を。


探していた。


あの日。


何が。


あったのか。


誰が。


消えたのか。


誰が。


嘘を。


ついたのか。


どうすれば。


戻れるのか。


でも。


明日は。


探すものじゃない。


今日の。


次に。


来る。


⸻


スマートフォン。


ポケット。


中。


静か。


もう。


突然。


君からの。


メッセージは。


来ない。


それで。


いい。


悠。


前。


見る。


「悠!」


圭介。


遠く。


呼ぶ。


「何してんだよ!」


レイ。


「置いてくよ!」


ヨル。


「焼きそば。」


「なくなる。」


悠。


「お前ら。」


「待てよ。」


歩く。


少し。


速く。


なる。


そして。


走る。


時計台。


午後六時十三分。


秒針。


一つ。


進む。


また。


一つ。


進む。


誰も。


止めない。


誰も。


戻さない。


時間。


前へ。


進む。


悠。


人混み。


中。


手。


上げる。


「今行く!」


⸻


明日。


何をするか。


まだ。


決めていない。


だから。


今日。


考える。


それで。


いい。


また。


明日。


⸻


Appearing


― 突然、君からのメッセージ ―

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