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Appearing ― 突然、君からのメッセージ ―  作者: 和泉發仙


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83/90

今日から

Appearing


― 突然、君からのメッセージ ―


第81話


今日から


前書き


帰ること。


それが。


ずっと。


目的だった。


十二年前から。


帰れなかった人。


八年前から。


帰れなかった人。


名前すら。


持てなかった人。


みんな。


帰ってきた。


では。


そのあと。


何をするのか。


答えは。


怪異の中には。


なかった。


⸻


午前八時〇三分


海鳴町・駅前


悠。


メアリー。


歩く。


海から。


戻ってきた。


朝飯。


食べた。


結局。


悠。


寝なかった。


「眠い。」


メアリー。


「知らん。」


「六時に起こした人が。」


「海。」


「行きたかったもん。」


「十二年待ったんだから。」


「二十分くらい。」


「それ。」


「私が言うやつ。」


悠。


欠伸。


メアリー。


笑う。


町。


もう。


動いている。


コンビニ。


開いている。


バス。


走っている。


高校生。


自転車。


通り過ぎる。


会社員。


駅へ。


急ぐ。


昨日。


怪異。


終わった。


人。


戻った。


遺骨。


見つかった。


十二年前の事件。


動き出した。


でも。


町の大半。


そんなこと。


知らない。


普通に。


朝。


始まる。


メアリー。


高校生。


目で追う。


「学校。」


悠。


「行きたい?」


「ちょっと。」


「昨日まで。」


「行方不明者だった人が。」


「いきなり登校したら。」


「ニュースになるぞ。」


「もうニュースになるやろ。」


「それはそう。」


スマートフォン。


鳴る。


悠。


見る。


透。


『駅前にいる?』


悠。


『いる』


すぐ。


『こっち来て』


『全員いる』


悠。


「全員?」


メアリー。


「何?」


「透。」


「また何か。」


「もう。」


「事件は。」


「勘弁して。」


⸻


午前八時十七分


海鳴町・駅前広場


いた。


圭介。


春人。


紗季。


透。


蓮。


そして。


少し離れて。


レイ。


「遅い。」


透。


第一声。


悠。


「朝六時から。」


「海行ってたんだよ。」


圭介。


「二人で?」


悠。


「……。」


メアリー。


「二人で。」


圭介。


悠。


見る。


にや。


「へぇ。」


「何だよ。」


「別に。」


春人。


「朝から。」


「元気だな。」


メアリー。


「春人先輩。」


「昨日。」


「花。」


「ありがとう。」


当然。


届かない。


春人。


少し。


辺りを見る。


「……メアリー。」


悠。


「いる。」


春人。


「そっか。」


それだけ。


少し。


笑う。


紗季。


ベンチ。


座っている。


手。


スマートフォン。


ではない。


紙。


何枚か。


透。


「警察から。」


「説明。」


悠。


「何の。」


蓮。


「俺ら。」


「これから。」


その言葉。


悠。


止まる。


圭介。


「俺。」


「財布。」


ポケット。


探る。


「ない。」


レイ。


「そこから?」


「大事だろ!」


「十二年前の財布なら。」


「もっと面倒だろ。」


「あるけど。」


圭介。


出す。


古い。


財布。


レイ。


「……あるんだ。」


圭介。


中。


見る。


「千円。」


「使える?」


悠。


「使える。」


「よかった。」


レイ。


「そこは。」


「十二年経っても。」


「大丈夫。」


紗季。


「携帯。」


出す。


古い。


端末。


「これ。」


「使えない。」


レイ。


見る。


「……そりゃ。」


圭介。


「充電したら。」


「無理。」


「何で。」


「色々。」


蓮。


「俺のは?」


透。


「八年前の。」


「スマホなら。」


「まだ可能性ある。」


蓮。


「八年前。」


「そんな昔?」


透。


蓮を見る。


「お前にとっては。」


「違うんだろうけど。」


蓮。


黙る。


「……うん。」


八年。


兄。


歳。


取った。


自分。


取っていない。


その事実。


朝の光。


中。


妙に。


はっきり。


見える。


⸻


午前八時三十二分


レイ。


紙袋。


置く。


「とりあえず。」


「食え。」


圭介。


「何。」


「パン。」


「神。」


「安い神だな。」


「神。」


圭介。


パン。


取る。


春人。


「俺も。」


「どうぞ。」


紗季。


「ありがとう。」


蓮。


「いただきます。」


透。


取ろうとする。


レイ。


手。


叩く。


「お前は。」


「昨日。」


「食っただろ。」


「何で俺だけ。」


「八年。」


「まともに寝てない顔。」


「してるから。」


蓮。


「兄ちゃん。」


「寝た。」


透。


「二時間。」


レイ。


「寝てない。」


悠。


笑う。


昨日。


まで。


誰が。


消えた。


誰が。


偽物。


誰が。


生きている。


そんな話。


ばかり。


だった。


今。


パン。


スマホ。


財布。


寝不足。


どうでも。


よさそうな。


問題。


ばかり。


増えている。


でも。


たぶん。


これが。


生きる。


ということ。


⸻


午前八時四十八分


宮本。


来る。


ファイル。


抱えて。


「おはようございます。」


圭介。


「警察。」


少し。


身構える。


宮本。


「そんな顔。」


「しなくていいです。」


レイ。


「この人は。」


「割と普通。」


宮本。


「割と。」


「何ですか。」


悠。


「榊原さんは?」


「寝てません。」


「でしょうね。」


「今。」


「藤崎さん。」


「それから。」


「大石さん。」


「関係者の。」


「聴取。」


「続けてます。」


メアリー。


少し。


顔。


曇る。


宮本。


悠を見る。


「地下も。」


「鑑識が。」


「続いてます。」


悠。


「橘先生は。」


「まだ。」


「正式な身元確認は。」


「これからです。」


「ただ。」


少し。


間。


「帰せるように。」


「します。」


悠。


頷く。


メアリー。


「お願いします。」


宮本。


一瞬。


何もない。


悠の横。


見る。


「……。」


悠。


「何ですか。」


「いえ。」


ファイル。


開く。


「今日は。」


「事件の話。」


「じゃありません。」


圭介。


「じゃあ何。」


宮本。


全員。


見る。


「皆さん。」


「これから。」


「どうします?」


沈黙。


圭介。


「……。」


紗季。


「……。」


春人。


「……。」


蓮。


「……。」


宮本。


苦笑。


「ですよね。」


⸻


午前九時〇四分


駅前・喫茶スペース


テーブル。


紙。


並ぶ。


帰還者。


事情確認。


本人確認。


家族。


住所。


学校。


当時の記録。


必要な手続き。


宮本。


「一日で。」


「全部。」


「終わりません。」


圭介。


「一日?」


「はい。」


「数日。」


「ものによっては。」


「もっと。」


圭介。


頭。


抱える。


「怪異より。」


「面倒じゃん。」


レイ。


「役所だからな。」


宮本。


「聞こえてます。」


「すみません。」


春人。


書類。


見る。


「家族への連絡は。」


「希望する方から。」


「進めます。」


紗季。


手。


止まる。


「お母さん。」


宮本。


「白石屋。」


「今もあります。」


紗季。


顔。


上げる。


「……あります?」


「はい。」


その一言。


紗季。


目。


伏せる。


「そっか。」


メアリー。


紗季を見る。


「よかった。」


春人。


「俺の家は?」


宮本。


別紙。


確認。


「少し。」


「確認が必要です。」


春人。


「分かりました。」


顔。


変えない。


でも。


手。


握る。


圭介。


「俺。」


「母ちゃん。」


宮本。


「連絡。」


「取れています。」


圭介。


「……。」


「今。」


「電話。」


「できます。」


圭介。


「今?」


「はい。」


圭介。


急に。


立つ。


「いや。」


座る。


「待って。」


レイ。


「どっち。」


「心の準備。」


悠。


「十二年。」


「待たせてるぞ。」


「そういう。」


「正論。」


「今いらない。」


メアリー。


笑う。


「圭介。」


「変わってない。」


悠。


「らしいぞ。」


圭介。


「何が。」


「メアリーが。」


「変わってないって。」


圭介。


一瞬。


止まる。


「……そっか。」


それから。


笑う。


「そっちもな。」


メアリー。


「失礼。」


⸻


午前九時二十二分


圭介。


外。


電話。


全員。


少し。


離れている。


呼び出し。


一回。


二回。


三回。


繋がる。


「……もしもし。」


向こう。


声。


聞こえない。


圭介。


「俺。」


沈黙。


「圭介。」


さらに。


沈黙。


圭介。


顔。


崩れる。


「うん。」


「うん。」


「ごめん。」


「ごめん。」


何度も。


それだけ。


そして。


突然。


電話。


切れる。


圭介。


画面。


見る。


「……切られた。」


悠。


「え。」


また。


着信。


圭介。


慌てて。


出る。


「もしもし。」


向こう。


今度。


大きな。


声。


圭介。


スマホ。


耳から。


少し離す。


「うん。」


「うん。」


「分かった。」


「帰る。」


「帰るから。」


「うん。」


電話。


終わる。


圭介。


目。


赤い。


笑う。


「怒られた。」


悠。


「何て。」


「どこにおるん。」


少し。


笑う。


「十二年ぶり。」


「最初の言葉。」


「どこにおるん。」


レイ。


「母親。」


「強いな。」


圭介。


「うん。」


「強い。」


⸻


午前九時四十一分


紗季。


書類。


見ている。


一枚。


学校。


名前。


海鳴高校。


在籍。


十二年前。


途中で。


止まった。


紗季。


「これ。」


宮本。


「学校側にも。」


「確認を。」


「お願いしています。」


「当時の記録。」


「残っています。」


紗季。


「私。」


「卒業。」


言葉。


止まる。


宮本。


「していません。」


紗季。


「……ですよね。」


十二年前。


突然。


消えた。


卒業。


できなかった。


紗季。


紙。


見る。


「行っても。」


「いいですか。」


「学校。」


宮本。


「確認します。」


「今?」


「今。」


紗季。


頷く。


「行きたい。」


悠。


メアリーを見る。


朝。


海。


メアリーが。


言った。


学校。


行きたい。


悠。


「俺たちも。」


「行っていいですか。」


メアリー。


悠を見る。


笑う。


宮本。


「観光じゃ。」


「ないですよ。」


悠。


「分かってます。」


レイ。


「たぶん。」


「分かってない。」


⸻


午前十時二十六分


海鳴高校


校門。


夏休み。


静か。


部活動。


声。


遠く。


聞こえる。


紗季。


立つ。


「……。」


圭介。


「変わった?」


春人。


「少し。」


悠。


「体育館。」


「新しくなってる。」


透。


カメラ。


持っていない。


昨日。


首から。


外した。


そのことに。


悠。


気づく。


でも。


言わない。


蓮。


「俺。」


「ここ。」


「知らない。」


透。


「世代。」


「違うからな。」


蓮。


「兄ちゃんが。」


「高校生だったとこ。」


「そう。」


「変な感じ。」


メアリー。


校門。


見上げる。


「帰ってきた。」


悠。


「学校に?」


「うん。」


少女。


小さく。


「ここにも。」


⸻


午前十時四十三分


校舎・廊下


ワックス。


匂い。


掲示物。


知らない。


生徒。


知らない。


先生。


十二年前と。


同じ建物。


でも。


違う学校。


紗季。


ゆっくり。


歩く。


「ここ。」


「変わってない。」


春人。


「階段。」


「まだ。」


「軋む。」


圭介。


一段。


踏む。


ぎし。


「ほんとだ。」


教員。


一人。


案内。


してくれる。


事情。


聞いている。


でも。


どう。


接すればいいか。


分からない顔。


当然。


十二年前に。


行方不明になった。


生徒。


今。


目の前。


歩いている。


⸻


午前十一時〇二分


旧教室


机。


椅子。


全部。


違う。


窓から。


海。


見える。


紗季。


窓際。


立つ。


「私。」


「ここだった。」


圭介。


「俺。」


「後ろ。」


春人。


「寝てた。」


「寝てない。」


「寝てた。」


「お前も。」


「俺は。」


「考え事。」


「寝てた。」


メアリー。


笑う。


悠。


「何。」


「懐かしい。」


「うん。」


「でも。」


メアリー。


教室。


見る。


「知らない場所。」


悠。


「十二年。」


「経ったからな。」


メアリー。


「うん。」


「それで。」


「いいんやね。」


悠。


少女。


見る。


メアリー。


「同じじゃ。」


「なくて。」


「いい。」


⸻


午前十一時十八分


職員室前


一人。


男性。


待っている。


現在の。


校長。


当時。


別の学校にいた。


彼らを。


直接。


知らない。


それでも。


頭。


下げる。


「お帰りなさい。」


圭介。


困る。


「……ただいま?」


校長。


笑う。


「それで。」


「いいと思います。」


紗季。


前。


出る。


校長。


封筒。


一つ。


持つ。


「白石さん。」


「はい。」


「あなたの。」


「当時の記録を。」


「確認しました。」


紗季。


「はい。」


「正式な扱いについては。」


「教育委員会とも。」


「確認が必要です。」


紗季。


「はい。」


「ですから。」


「これは。」


「今ここで。」


「新しく。」


「卒業を認定する。」


「という話ではありません。」


紗季。


頷く。


校長。


封筒。


見る。


「ただ。」


「学校に。」


「残っていたものがあります。」


渡す。


紗季。


受け取る。


開く。


紙。


古い。


少し。


黄ばんでいる。


名前。


白石紗季。


紗季。


息。


止まる。


「これ。」


校長。


「当時。」


「渡されるはずだったものです。」


「学校側で。」


「保管されていました。」


紗季。


指。


文字。


なぞる。


「卒業証書。」


圭介。


「……。」


春人。


「……。」


悠。


何も。


言わない。


紗季。


「十二年。」


校長。


「遅れました。」


紗季。


顔。


上げる。


校長。


穏やかに。


「遅れても。」


「受け取れます。」


「学校に。」


「戻ってこられたなら。」


紗季。


泣く。


声。


出さず。


ただ。


涙。


落ちる。


「……はい。」


メアリー。


隣。


「紗季。」


笑う。


「おめでとう。」


紗季。


聞こえない。


でも。


証書。


胸。


抱く。


⸻


廊下。


出る。


メアリー。


悠の横。


歩く。


「校長先生。」


「優しい。」


悠。


「そうだな。」


「遅れても。」


「いいんやね。」


悠。


「何が。」


メアリー。


少し。


考える。


「いろいろ。」


悠。


「便利な言葉に。」


「するなよ。」


「十二年くらい。」


「許してくれる。」


「何を。」


メアリー。


笑う。


「内緒。」


悠。


怪訝。


顔。


その言葉。


あとで。


もう一度。


聞くことになる。


⸻


午後零時〇六分


旧写真部・部室


扉。


開く。


匂い。


紙。


埃。


棚。


昔の。


アルバム。


写真。


橘依子。


名前。


残る。


顧問。


欄。


メアリー。


「先生。」


悠。


「うん。」


透。


棚。


見る。


「残ってる。」


圭介。


「何が。」


透。


「写真。」


古い。


集合写真。


文化祭。


海。


教室。


笑う。


生徒。


その中。


昔の。


自分たち。


透。


カメラ。


ない。


手。


空。


それでも。


写真。


見る。


「俺。」


「ずっと。」


「残さないと。」


「消えると思ってた。」


蓮。


「うん。」


「でも。」


透。


写真。


戻す。


「残ってた。」


悠。


「全部じゃないけどな。」


透。


「それで。」


「いいのかも。」


メアリー。


古い。


写真。


覗く。


自分。


いる。


笑っている。


「私。」


「いる。」


悠。


「ああ。」


「ちゃんと。」


「いる。」


⸻


午後零時四十二分


学校・中庭


全員。


パン。


飲み物。


簡単な。


昼。


圭介。


「で。」


「俺。」


「帰る。」


紗季。


「私も。」


春人。


「俺も。」


蓮。


透を見る。


「俺は。」


「兄ちゃんと。」


透。


「そうだな。」


圭介。


「何か。」


「変。」


悠。


「何が。」


「昨日まで。」


「みんなで。」


「一緒にいないと。」


「ダメだった。」


誰か。


消える。


誰か。


忘れる。


誰か。


偽物になる。


誰か。


戻れない。


ずっと。


そんな。


世界。


だった。


圭介。


「でも。」


「今日。」


「別々に。」


「帰っていいんだな。」


春人。


「当たり前だろ。」


圭介。


「その。」


「当たり前。」


「久しぶり。」


紗季。


証書。


見る。


「うん。」


メアリー。


悠。


見る。


「いいね。」


「何が。」


「別々に。」


「帰れるの。」


悠。


「普通だろ。」


メアリー。


笑う。


「普通。」


「いいね。」


⸻


午後一時十七分


学校前


それぞれ。


行き先。


違う。


圭介。


母。


紗季。


白石屋。


透と蓮。


秋山家。


春人。


警察の支援を受けながら。


家族。


親族。


確認。


直哉は。


家族と。


その後。


警察。


ヨルは。


久我。


レイ。


「私は。」


「寝る。」


悠。


「それが。」


「一番正しい。」


「お前も寝ろ。」


「そのうち。」


圭介。


「じゃあ。」


手。


上げる。


でも。


歩かない。


「……。」


悠。


「何。」


圭介。


「いや。」


「また。」


言葉。


止まる。


「あとで。」


悠。


「?」


圭介。


「何でもない。」


「じゃ。」


「行ってくる。」


悠。


「ああ。」


紗季。


「私も。」


春人。


「また。」


蓮。


「兄ちゃん。」


「帰ろ。」


透。


「うん。」


一人。


一人。


違う方向。


歩き出す。


悠。


見送る。


メアリー。


隣。


「悠ちゃん。」


「何。」


「これ。」


「終わり?」


悠。


首。


横。


「違う。」


昨日。


透が。


言った。


言葉。


思い出す。


終わり?


違う。


じゃあ。


始める。


普通の生活。


悠。


「始まり。」


メアリー。


「何の。」


悠。


歩き出す。


「今日からの。」


メアリー。


少し。


遅れて。


ついてくる。


「それ。」


「いい。」


⸻


午後三時三十九分


海鳴町・商店街入口


悠。


メアリー。


圭介。


なぜか。


また。


一緒。


悠。


「お前。」


「帰ったんじゃ。」


「途中まで。」


圭介。


「何で戻ってきた。」


圭介。


頭。


掻く。


「いや。」


「何か。」


「一人で。」


「家。」


「近づいたら。」


「怖くなって。」


悠。


「……。」


圭介。


「十二年。」


「だぞ。」


「分かってる。」


「母ちゃん。」


「どんな顔。」


「してるか。」


「俺。」


「何て。」


「言えばいいか。」


メアリー。


圭介を見る。


悠。


「何でも。」


「いいんじゃない。」


圭介。


「何でも?」


「ああ。」


「ただいま。」


「とか。」


圭介。


「……。」


悠。


「向こうも。」


「たぶん。」


「同じだろ。」


圭介。


「何が。」


「何言えばいいか。」


「分かんない。」


圭介。


笑う。


「そっか。」


三人。


歩く。


商店街。


白石屋。


見える。


紗季。


もう。


そこには。


いない。


自分の。


家へ。


向かった。


圭介。


足。


止める。


「悠。」


「ん。」


「俺。」


「今度こそ。」


「行く。」


悠。


「うん。」


圭介。


歩く。


数歩。


また。


止まる。


振り返る。


「なぁ。」


時刻。


午後三時四十六分。


「また。」


圭介。


少し。


困ったように。


笑う。


「会えるよな。」


⸻


午後三時四十七分。


それは。


十二年前なら。


聞く必要のなかった。


質問。


そして。


今なら。


ちゃんと。


答えられる。


質問だった。


⸻


第81話「今日から」 了


次回 第82話「始まった場所」


帰ってきた人たちは。


それぞれの場所へ。


帰っていく。


十二年ぶりの母。


八年ぶりの兄弟。


家族。


警察。


花屋。


古時計店。


そして。


悠とメアリーは。


すべてが始まった。


あの公園へ戻る。

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