↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Appearing ― 突然、君からのメッセージ ―  作者: 和泉發仙


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
54/90

嘘をつく町

前書き


人は、


幽霊よりも、


人間に嘘をつかれる方が傷つく。


幽霊は、


最初から理解できない存在だ。


でも、


人間は違う。


笑って、


挨拶をして、


親切にしてくれる。


だから、


その人が嘘をついていたと知った時、


世界は静かに音を立てて崩れる。


⸻


Appearing


― 突然、君からのメッセージ ―


第53話


嘘をつく町


⸻


午後六時四十分。


⸻


海鳴町。


⸻


神社。


⸻


監視者は消えた。


⸻


残ったのは、


一枚の写真だけ。


⸻


三年前。


⸻


神社。


⸻


そこに、


悠が写っていた。


⸻


「ありえねぇ……。」


⸻


悠は何度も写真を見る。


⸻


「俺、


三年前は神戸にいた。」


⸻


レイも頷く。


⸻


「俺も知ってる。」


⸻


「お前、


夜勤してただろ。」


⸻


「毎日氷結飲んでた。」


⸻


「だよな。」


⸻


榊原が写真を受け取る。


⸻


裏返す。


⸻


印画紙。


⸻


現像番号。


⸻


メーカー。


⸻


全部、


本物だった。


⸻


「合成やない。」


⸻


宮本も写真を見る。


⸻


「年代も一致しています。」


⸻


「加工ではありません。」


⸻


静寂。


⸻


⸻


榊原が時計を見る。


⸻


午後六時四十五分。


⸻


「聞き込みや。」


⸻


「今日は町の人間だけを回る。」


⸻


⸻


交番


⸻


小さな木造交番。


⸻


当直。


⸻


駐在 大石俊郎(58)


⸻


海鳴町一筋三十年。


⸻


穏やかな人柄。


⸻


町の誰もが知っている。


⸻


「神崎春人?」


⸻


少し考える。


⸻


「ええ子やった。」


⸻


「メアリーちゃんも。」


⸻


「優斗も。」


⸻


「悪さする子らちゃう。」


⸻


榊原が聞く。


⸻


「事件当日は?」


⸻


大石は静かに答える。


⸻


「祭りで忙しかった。」


⸻


「喧嘩もあった。」


⸻


「酔っ払いもおった。」


⸻


「でも。」


⸻


少し黙る。


⸻


「殺人事件なんて無かった。」


⸻


⸻


「……。」


⸻


榊原はその一言を聞き逃さなかった。


⸻


「“無かった”?」


⸻


「失踪事件やないんか。」


⸻


大石は一瞬だけ固まる。


⸻


「……。」


⸻


すぐ笑う。


⸻


「言い間違いや。」


⸻


その笑顔が、


少しだけ不自然だった。


⸻


⸻


交番を出る。


⸻


榊原が小さく言う。


⸻


「聞いたか?」


⸻


悠が頷く。


⸻


「殺人事件って言いました。」


⸻


「誰も。」


⸻


「殺人なんて言うてへん。」


⸻


空気が変わる。


⸻


⸻


理髪店


⸻


「いらっしゃい。」


⸻


店主。


⸻


柴田一誠(65)


⸻


町で一番古い床屋。


⸻


ハサミを動かしながら笑う。


⸻


「事件?」


⸻


「知らん知らん。」


⸻


「昔のことや。」


⸻


その時。


⸻


テレビ。


⸻


地方ニュース。


⸻


海鳴町夏祭り特集。


⸻


画面に、


十二年前の映像が流れる。


⸻


人混み。


⸻


屋台。


⸻


花火。


⸻


そして。


⸻


一瞬だけ。


⸻


画面の奥。


⸻


監視者の青年。


⸻


悠が立ち上がる。


⸻


「止めて!」


⸻


テレビを巻き戻す。


⸻


店主も見る。


⸻


「おや。」


⸻


「この子。」


⸻


「昔からおるよ。」


⸻


静寂。


⸻


「え?」


⸻


「写真屋の弟子や。」


⸻


部屋が凍る。


⸻


悠。


⸻


レイ。


⸻


榊原。


⸻


宮本。


⸻


全員が同時に振り向く。


⸻


「写真屋の……弟子?」


⸻


「うん。」


⸻


柴田は当たり前のように言う。


⸻


「中村さんとこ。」


⸻


「昔、


高校生がおった。」


⸻


「よう写真撮っとった。」


⸻


榊原の瞳が鋭くなる。


⸻


「名前は?」


⸻


柴田は考える。


⸻


「確か……。」


⸻


「秋山。」


⸻


「秋山……。」


⸻


「秋山透。」


⸻


その名前を聞いた瞬間。


⸻


写真館の老人が、


「知らない」と言っていたことを、


悠は思い出した。


⸻


つまり。


⸻


老人は嘘をついていた。


⸻


その時だった。


⸻


ガラン!!


⸻


外で大きな音。


⸻


全員が飛び出す。


⸻


写真館。


⸻


中村写真館。


⸻


入口のガラスが割れている。


⸻


老人が倒れていた。


⸻


頭から血を流しながら。


⸻


榊原が駆け寄る。


⸻


「救急車!」


⸻


老人は、


震える手で榊原の袖を掴む。


⸻


息も絶え絶えに、


最後の力を振り絞る。


⸻


「……秋山は。」


⸻


咳き込む。


⸻


血が滲む。


⸻


「敵じゃ……ない。」


⸻


悠が身を乗り出す。


⸻


「じゃあ誰が!」


⸻


老人の瞳が、


ゆっくりと写真館の二階へ向く。


⸻


そこには、


割れた窓だけが見えていた。


⸻


老人は、


最後に一言だけ残した。


⸻


「現像室を……開けるな……。」


⸻


その瞬間。


⸻


二階から、


ギィ……


⸻


と、


ゆっくりドアが開く音がした。


⸻


全員が息を呑む。


⸻


誰も、


階段を上がろうとはしなかった。


⸻


――第53話・続く。


⸻


この回で大きく動いた伏線


* 駐在の大石が「殺人事件」と言い間違える。

* 監視者の青年の名前が判明する。秋山透。

* 秋山は「写真館の弟子」だったことが判明。

* 写真館の老人が嘘をついていた。

* 老人は「秋山は敵ではない」と証言。

* そして、新たな謎として写真館二階の現像室が浮上します。


ここからは、第2章のクライマックスへ向けて、「現像室」に残されたものが事件の核心へ繋がっていきます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。