忘れられた証言
前書き
町は覚えている。
事件は忘れても。
噂は消えても。
人の表情だけは残る。
十二年前。
祭りの翌日。
海鳴町の人たちは、
何を見たのだろう。
⸻
第47話
忘れられた証言
⸻
午後三時。
⸻
榊原は言う。
「怪談を追っても犯人は捕まらん。」
「まずは人や。」
⸻
四人は聞き込みを始める。
⸻
古い和菓子屋。
⸻
魚屋。
⸻
クリーニング店。
⸻
床屋。
⸻
昔から町に住む人ばかり。
⸻
しかし、
全員同じ反応をする。
⸻
「祭りの日?」
⸻
「知らん。」
⸻
「昔のことや。」
⸻
「もう忘れた。」
⸻
あまりにも揃いすぎている。
⸻
榊原が小さく呟く。
⸻
「忘れたんやない。」
⸻
「忘れるようにしとる。」
⸻
その言葉に、
町全体が何かを隠している雰囲気が生まれます。
⸻
夕方。
⸻
最後に、
小さな駄菓子屋へ入る。
⸻
九十歳近い老婆。
⸻
耳は遠い。
⸻
だが、
メアリーを見るなり、
手を震わせる。
⸻
「……帰ってきたんか。」
⸻
悠たち全員が固まる。
⸻
老婆は、
メアリーが見えているように話し始める。
⸻
「また夏が来たんやねぇ……。」
⸻
「かわいそうに。」
⸻
榊原も息を呑む。
⸻
「おばあさん。」
⸻
「何を知っとる。」
⸻
老婆は静かに言う。
⸻
「春人は悪い子やなかった。」
⸻
「ほんまに怖かったんは……。」
⸻
そこで、
店の奥からガタンと物音。
⸻
老婆は口を閉ざす。
⸻
「あんたら。」
⸻
震える声。
⸻
「早う帰り。」
⸻
「夕方のサイレンが鳴る前に。」
⸻
「まだ、あの子は歩いとる。」
⸻
その瞬間、
午後五時を知らせる防災無線が町中に流れ始める──。
⸻




