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Appearing ― 突然、君からのメッセージ ―  作者: 和泉發仙


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45/90

血痕

前書き


血は、


命の証だ。


だから人は、


血を見ると死を思い浮かべる。


でも。


血が流れたからといって、


必ず死んだとは限らない。


希望と絶望は、


案外よく似ている。


⸻


Appearing


― 突然、君からのメッセージ ―


第45話


血痕


⸻


午後一時四十分。


⸻


海鳴町。


⸻


旅館「松風荘」。


⸻


「海岸で血痕が!」


⸻


若い警察官の声が、


旅館中へ響いた。


⸻


榊原が立ち上がる。


⸻


「案内せぇ!」


⸻


「はい!」


⸻


宮本も資料を掴む。


⸻


悠はメアリーを見る。


⸻


「行けるか?」


⸻


メアリーは少しだけ迷った。


⸻


それでも、


ゆっくり頷いた。


⸻


「……うん。」


⸻


⸻


十分後。


⸻


海岸。


⸻


黄色い規制線。


⸻


パトカー。


⸻


鑑識。


⸻


制服警官。


⸻


騒然としていた。


⸻


潮風が強い。


⸻


「こっちです!」


⸻


若い警官が指差す。


⸻


岩場。


⸻


波打ち際。


⸻


赤黒い染み。


⸻


鑑識が写真を撮っている。


⸻


「量は?」


⸻


榊原が聞く。


⸻


「少量です。」


⸻


「DNA鑑定へ回します。」


⸻


宮本がしゃがみ込む。


⸻


岩を見る。


⸻


「争った跡があります。」


⸻


確かに。


⸻


砂が大きく乱れていた。


⸻


靴跡もある。


⸻


だが。


⸻


潮でほとんど消えていた。


⸻


「くそ……。」


⸻


榊原が舌打ちする。


⸻


「もう少し早ければ。」


⸻


その時だった。


⸻


メアリーが海を見つめる。


⸻


「……。」


⸻


呼吸が止まる。


⸻


「メアリー?」


⸻


悠が声を掛ける。


⸻


返事はない。


⸻


彼女は、


一点だけを見つめていた。


⸻


古い桟橋。


⸻


今は使われていない。


⸻


木は腐り。


⸻


立入禁止になっている。


⸻


「……あそこ。」


⸻


小さく呟く。


⸻


「私。」


⸻


「行った。」


⸻


榊原が振り返る。


⸻


「祭りの日か?」


⸻


メアリーは静かに頷く。


⸻


⸻


「鑑識!」


⸻


榊原が叫ぶ。


⸻


「桟橋も調べろ!」


⸻


警官たちが動き出す。


⸻


悠たちも後を追う。


⸻


ギシ……


⸻


ギシ……


⸻


古い板が鳴る。


⸻


桟橋の先端。


⸻


波が激しく打ち付けている。


⸻


その時。


⸻


レイが立ち止まった。


⸻


「……なぁ。」


⸻


「どうした?」


⸻


「これ。」


⸻


指差す。


⸻


木の柱。


⸻


そこに。


⸻


ナイフで彫られた文字。


⸻


M+H


⸻


その下。


⸻


小さなハート。


⸻


メアリーの瞳が揺れる。


⸻


「……。」


⸻


「春人先輩。」


⸻


悠の胸が締め付けられる。


⸻


ここは。


⸻


思い出の場所だった。


⸻


⸻


「つまり。」


⸻


榊原が静かに言う。


⸻


「ここで待ち合わせしとった。」


⸻


メアリーは涙を流しながら頷く。


⸻


「……うん。」


⸻


「花火終わったら。」


⸻


「ここで。」


⸻


「会う約束やった。」


⸻


静寂。


⸻


つまり。


⸻


メアリーは、


偶然ここへ来たわけじゃない。


⸻


誰かと会う約束をしていた。


⸻


その相手は。


⸻


春人。


⸻


しかし。


⸻


春人も失踪している。


⸻


「じゃあ。」


⸻


悠が呟く。


⸻


「春人も被害者なのか……?」


⸻


その瞬間。


⸻


「刑事さん!!」


⸻


鑑識が叫ぶ。


⸻


「こっち!」


⸻


全員が走る。


⸻


桟橋の下。


⸻


岩の隙間。


⸻


ビニール袋。


⸻


潮で半分埋まっている。


⸻


宮本が慎重に拾い上げる。


⸻


中には。


⸻


一冊の手帳。


⸻


黒い革表紙。


⸻


ボロボロだった。


⸻


「学生手帳……?」


⸻


榊原が開く。


⸻


ページは濡れていた。


⸻


それでも、


一ページだけ読めた。


⸻


そこには。


⸻


⸻


神崎 春人


⸻


⸻


全員が息を呑む。


⸻


春人の学生手帳だった。


⸻


しかし。


⸻


最後のページには、


震える文字で、


たった一文だけ書かれていた。


⸻


「信じるな。」


⸻


その下。


⸻


さらに小さく、


走り書き。


⸻


「あいつはまだ笑っている。」


⸻


風が吹く。


⸻


海が荒れる。


⸻


榊原は手帳を閉じた。


⸻


「……。」


⸻


そして、


ゆっくり悠を見る。


⸻


「黒瀬。」


⸻


「はい。」


⸻


「この事件。」


⸻


静かな声。


⸻


「思っとったより、ずっとデカい。」


⸻


その時。


⸻


海の向こうで、


誰かが双眼鏡を下ろした。


⸻


顔は見えない。


⸻


黒いパーカー。


⸻


フードを深く被った人物。


⸻


その人物は、


ポケットから古いガラケーを取り出す。


⸻


短くメールを打つ。


⸻


“見つけたようです。”


⸻


送信。


⸻


そして。


⸻


静かに、


姿を消した。


⸻


― 第45話・終 ―


⸻



後書き



第45話でした。


今回は、第2章のスケールをさらに広げました。


重要なポイントは、


* 優斗のものと思われる血痕が発見される。

* メアリーと春人は桟橋で会う約束をしていた。

* 春人の学生手帳が見つかる。

* 「信じるな」「あいつはまだ笑っている」という謎のメッセージ。

* そして、現在も誰かが悠たちを遠くから監視している。


ここで物語は「過去の事件の真相」だけではなく、現在も暗躍する第三者の存在が明確になりました。


次回、第46話 「監視者」では、ついに「誰が悠たちの動きを追っているのか」という新たな謎へ踏み込みます。

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