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Appearing ― 突然、君からのメッセージ ―  作者: 和泉發仙


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44/90

押し入れ

前書き


人は、


「何が入っているか」


を怖がる。


でも本当に怖いのは、


「なぜそこにあるのか」


だ。


開けた瞬間よりも、


意味が分かった瞬間の方が、


人は震える。


⸻


Appearing


― 突然、君からのメッセージ ―


第44話


押し入れ


⸻


午後一時十八分。


⸻


旅館。


⸻


封鎖された客室。


⸻


誰も動かない。


⸻


押し入れ。


⸻


ほんの少しだけ開いている。


⸻


カタン……


⸻


また音がした。


⸻


「……。」


⸻


榊原が拳銃を抜く。


⸻


宮本は懐中電灯を構える。


⸻


悠はメアリーを後ろへ下がらせた。


⸻


レイは思わず息を止める。


⸻


「開ける。」


⸻


榊原が静かに言う。


⸻


ゆっくり。


⸻


ゆっくり。


⸻


襖へ手を掛ける。


⸻


ギィ……


⸻


古い木が軋む。


⸻


あと少し。


⸻


あと数センチ。


⸻


パァン!!


⸻


突然。


⸻


窓が勢いよく開いた。


⸻


海風。


⸻


書類が舞う。


⸻


ホコリが部屋中へ広がる。


⸻


「くそっ!」


⸻


榊原が目を閉じる。


⸻


その隙に。


⸻


ガラッ!!


⸻


押し入れが勝手に開いた。


⸻


全員が振り向く。


⸻


真っ暗。


⸻


何もない。


⸻


……いや。


⸻


奥に。


⸻


段ボール箱。


⸻


一つだけ。


⸻


「……。」


⸻


宮本が近づく。


⸻


古い。


⸻


ガムテープは茶色く変色している。


⸻


箱にはマジックで、


一言だけ。


⸻


「祭り」


⸻


「開けます。」


⸻


慎重にテープを切る。


⸻


箱の中。


⸻


浴衣。


⸻


うちわ。


⸻


提灯。


⸻


古いフィルム。


⸻


そして。


⸻


小さな紙袋。


⸻


榊原が取り出す。


⸻


中から落ちた。


⸻


一枚の写真。


⸻


カサッ。


⸻


悠が拾う。


⸻


そこには。


⸻


祭りの日。


⸻


笑っている高校生たち。


⸻


メアリー。


⸻


優斗。


⸻


春人。


⸻


レイ。


⸻


そして。


⸻


悠。


⸻


全員が写っている。


⸻


「……。」


⸻


「これ。」


⸻


レイが震える。


⸻


「俺らだ。」


⸻


だが。


⸻


違和感。


⸻


榊原が写真へ顔を近づける。


⸻


「待て。」


⸻


指差す。


⸻


写真の端。


⸻


木陰。


⸻


そこに。


⸻


知らない少年。


⸻


制服姿。


⸻


笑っていない。


⸻


じっと。


⸻


カメラではなく。


⸻


メアリーだけを見ている。


⸻


「誰だ。」


⸻


悠が呟く。


⸻


誰も答えられない。


⸻


メアリーも。


⸻


首を横に振る。


⸻


「知らん。」


⸻


「こんな子……。」


⸻


「おらんかった。」


⸻


榊原の表情が変わる。


⸻


「いや。」


⸻


「この写真。」


⸻


「おかしい。」


⸻


全員が見る。


⸻


「何が。」


⸻


榊原は静かに言った。


⸻


「五人しかおらんはずや。」


⸻


静寂。


⸻


「え?」


⸻


「卒業アルバム見た。」


⸻


「この年。」


⸻


「転校生はおらん。」


⸻


「この制服も違う。」


⸻


全員の背筋が凍る。


⸻


つまり。


⸻


この少年は。


⸻


海鳴町高校の生徒ではない。


⸻


なのに。


⸻


祭りの集合写真へ、


自然に写っている。


⸻


その時。


⸻


メアリーが写真を落とした。


⸻


カタッ。


⸻


「……。」


⸻


顔色が真っ青だった。


⸻


「思い出した。」


⸻


悠が息を呑む。


⸻


「誰だ?」


⸻


メアリーは写真の少年を見つめたまま、


小さく呟く。


⸻


「この子。」


⸻


「祭りの日。」


⸻


「ずっと。」


⸻


「一人やった。」


⸻


涙が零れる。


⸻


「誰とも喋っとらん。」


⸻


「でも。」


⸻


呼吸が震える。


⸻


「最後に。」


⸻


「私へ。」


⸻


「“逃げて”って言うた。」


⸻


部屋の空気が止まる。


⸻


つまり。


⸻


この少年は。


⸻


犯人ではない。


⸻


春人でもない。


⸻


優斗でもない。


⸻


第三の目撃者。


⸻


その瞬間だった。


⸻


旅館の外から、


若い警察官が駆け込んできた。


⸻


「榊原さん!!」


⸻


息を切らしている。


⸻


「今!」


⸻


「海岸で!」


⸻


「田島優斗さんのものと思われる血痕が見つかりました!!」


⸻


全員が立ち上がる。


⸻


悠は写真を握り締める。


⸻


メアリーは窓の向こう、


灰色の海を見つめていた。


⸻


「また始まる……。」


⸻


誰にも聞こえないほど小さく、


そう呟いた。


⸻



― 続く ―





後書き


第44話でした。


ここで物語は新たな段階へ入ります。


今回の重要ポイントは、


* 押し入れには遺体ではなく「祭りの遺品」が保管されていた。

* 集合写真に、誰も知らない少年が写っていた。

* その少年はメアリーへ「逃げて」と告げた第三の目撃者だった可能性が浮上。

* そして現在、優斗の痕跡らしき血痕が海岸で発見されます。


ここから先は、過去の事件の真相と、現在進行形の失踪事件が一本につながり始めます。

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