足跡
前書き
恐怖には、
「見える恐怖」と、
「確認できる恐怖」がある。
見間違いなら忘れられる。
夢なら笑い話になる。
でも。
証拠が残ったら。
それは現実になる。
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Appearing
― 突然、君からのメッセージ ―
第38話
足跡
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午前七時二十分。
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富山県 海鳴町。
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旅館「松風荘」。
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朝。
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雨は止んでいた。
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どんよりとした曇り空。
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潮の匂い。
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カモメの鳴き声。
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だが。
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旅館の中だけは。
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異様な静けさに包まれていた。
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「……優斗さん?」
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悠は旅館の玄関から外を見渡した。
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駐車場。
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軽自動車。
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優斗の車。
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昨夜のまま。
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運転席には鍵。
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助手席にはリュック。
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スマートフォン。
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財布。
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全部残っている。
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なのに。
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本人だけがいない。
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「こんなん……」
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レイが呟く。
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「完全に事件じゃん。」
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悠も否定できなかった。
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「夜中に歩いて帰った……」
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そんな状況ではない。
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財布もない。
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スマホもない。
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車もある。
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逃げる理由がない。
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「おばちゃん。」
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旅館の女将が顔を出した。
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七十歳くらい。
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優しい笑顔。
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だが。
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今日は青ざめている。
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「田島君……」
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「昨日、誰か迎えに来たん?」
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悠が聞く。
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女将は少し考えた。
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「迎えというか……」
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「夜中に玄関で話しとった。」
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三人が顔を上げる。
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「誰とです?」
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女将は首を傾げる。
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「黒いコート着た男の人。」
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静寂。
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「顔は?」
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「よう見えんかった。」
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「でも……」
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女将の表情が曇る。
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「知り合いみたいに話しとったよ。」
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レイの背筋に冷たいものが走る。
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「……監視カメラ。」
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悠が呟く。
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「あります?」
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女将は頷いた。
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「あるよ。」
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午前八時。
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フロント。
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古いパソコン。
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小さな液晶モニター。
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女将が映像を再生する。
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午後十一時五十八分。
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優斗が玄関へ出てくる。
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そのまま外へ。
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映像は続く。
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優斗は。
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誰かと話しているように見える。
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何度も頷き。
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笑い。
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そして。
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一緒に歩き始める。
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だが。
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映像には。
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優斗しか映っていない。
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「……は?」
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レイが思わず声を漏らす。
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「誰もおらん。」
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悠も画面に近づく。
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確かに。
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優斗は。
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誰かの隣を歩いている。
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肩を向け。
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何かを話し。
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笑っている。
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なのに。
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映像には。
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優斗しか存在しない。
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部屋の空気が凍った。
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「止めてください。」
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悠が言う。
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映像が止まる。
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その瞬間だった。
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「……おい。」
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レイの声。
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震えている。
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「これ。」
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指差した先。
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玄関のガラス。
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監視カメラではなく。
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玄関扉のガラスへの映り込み。
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そこだけ。
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黒いコート姿の男が映っていた。
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「っ!!」
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悠が息を呑む。
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画面を拡大する。
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映像は荒い。
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顔までは分からない。
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だが。
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間違いない。
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優斗の横。
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ガラスへの反射にだけ。
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男が立っている。
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「なんだよ……これ。」
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レイの額に汗が滲む。
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その時だった。
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コン……
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誰も動かなかった。
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旅館の廊下。
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小さな音。
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コン……
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鏡を叩くような。
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乾いた音。
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「……聞こえた?」
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女将が青ざめる。
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「この音……」
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悠が立ち上がる。
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廊下へ出る。
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誰もいない。
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だが。
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洗面所の鏡だけが。
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小さく揺れていた。
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コン……
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コン……
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まるで。
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誰かが。
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鏡の向こうから。
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ノックしているように。
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悠はゆっくり鏡へ近づく。
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自分の顔。
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レイ。
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女将。
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そして。
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一瞬だけ。
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悠の肩越しに。
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濡れた黒いコート姿が映った。
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「!!」
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振り返る。
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誰もいない。
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再び鏡を見る。
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もう。
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何も映っていなかった。
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だが。
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鏡の表面に。
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指でなぞったような水滴が浮かび上がる。
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ゆっくりと。
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文字になっていく。
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『まだ終わっていない』
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その場にいた全員の呼吸が止まった。
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後書き
第38話でした。
今回は、事件が「過去の謎」から「現在進行形」へ完全に変わる回です。
* 優斗は何者かと話していた。
* しかし監視カメラには優斗しか映っていない。
* ガラスへの反射にだけ黒いコートの男が映る。
* そして旅館の鏡には「まだ終わっていない」というメッセージが現れる。
次回、第39話 「鏡の向こう」では、この鏡の怪異をさらに掘り下げながら、優斗失踪の手がかりが少しずつ見えてきます。
ここからは「幽霊だけでは説明できない何か」と、「人間の悪意」が交錯する展開へ入っていきます。




