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Appearing ― 突然、君からのメッセージ ―  作者: 和泉發仙


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37/90

消えた目撃者

前書き


人は、


本当に怖い時ほど走る。


そして。


本当に追い詰められた時ほど、


立ち止まる。


今回は、


誰かが動き始める話だ。


十二年間止まっていた事件が。


静かに。


確実に。


⸻


Appearing


― 突然、君からのメッセージ ―


第37話


消えた目撃者


⸻


午前三時四十分。


⸻


海鳴町。


⸻


海沿い。


⸻


雨。


⸻


風。


⸻


そして。


⸻


田島優斗。


⸻


十二年ぶりに現れた男。


⸻


神崎春人の親友。


⸻


祭りの夜を知る人間。


⸻


「……」


⸻


悠も。


⸻


レイも。


⸻


メアリーも。


⸻


言葉を失っていた。


⸻


「優斗君……」


⸻


メアリーが呟く。


⸻


優斗は苦しそうに笑った。


⸻


「久しぶりだな」


⸻


その言葉が。


⸻


妙に切なかった。


⸻


十二年。


⸻


長すぎる時間だった。


⸻


⸻


「春人じゃない」


⸻


優斗が言う。


⸻


「絶対に」


⸻


雨音。


⸻


海。


⸻


風。


⸻


全部が静かだった。


⸻


「なんで言い切れる」


⸻


悠が聞く。


⸻


優斗は少し黙る。


⸻


そして。


⸻


震える声で言った。


⸻


「俺が会ったからだ」


⸻


静寂。


⸻


「え?」


⸻


「事件のあと」


⸻


「春人に」


⸻


レイが顔を上げる。


⸻


「会った?」


⸻


「一回だけ」


⸻


優斗は海を見る。


⸻


遠く。


⸻


真っ暗な水平線。


⸻


「でも」


⸻


「それが最後だった」


⸻


⸻


十二年前


⸻


祭りの翌日


⸻


雨


⸻


海鳴町駅


⸻


ホーム


⸻


神崎春人


⸻


制服


⸻


濡れた髪


⸻


真っ青な顔


⸻


そして。


⸻


怯えていた。


⸻


⸻


『優斗』


⸻


⸻


『逃げろ』


⸻


⸻


現在


⸻


悠の背筋が凍る。


⸻


「逃げろ?」


⸻


「そう言った」


⸻


優斗が拳を握る。


⸻


「何からかは言わなかった」


⸻


「でも」


⸻


「春人は本気で怯えてた」


⸻


雨が強くなる。


⸻


「それから?」


⸻


レイが聞く。


⸻


「消えた」


⸻


静かな声。


⸻


「そのまま」


⸻


「二度と会ってない」


⸻


⸻


メアリーが震える。


⸻


「じゃあ」


⸻


「春人先輩も……」


⸻


優斗は頷かなかった。


⸻


首も振らない。


⸻


ただ。


⸻


海を見ていた。


⸻


「分からん」


⸻


それだけだった。


⸻


⸻


午前四時三十分。


⸻


旅館。


⸻


三人と優斗。


⸻


和室。


⸻


畳。


⸻


急須。


⸻


冷めたお茶。


⸻


誰も眠れない。


⸻


当然だった。


⸻


「なぁ」


⸻


レイが言う。


⸻


「警察は?」


⸻


優斗が苦笑する。


⸻


「動いたよ」


⸻


「昔な」


⸻


「でも」


⸻


ため息。


⸻


「事故扱い」


⸻


静寂。


⸻


メアリーが俯く。


⸻


「……」


⸻


優斗は続けた。


⸻


「海へ落ちた」


⸻


「春人は失踪」


⸻


「証拠なし」


⸻


「終わり」


⸻


雨音だけが聞こえる。


⸻


⸻


その時だった。


⸻


ガタン。


⸻


全員が振り向く。


⸻


廊下。


⸻


何かが倒れた音。


⸻


「……」


⸻


空気が変わる。


⸻


優斗が立ち上がる。


⸻


「誰かいる」


⸻


悠も立つ。


⸻


レイも。


⸻


だが。


⸻


メアリーだけが青ざめていた。


⸻


「やめて」


⸻


小さな声。


⸻


「え?」


⸻


「行ったらダメ」


⸻


優斗が止まる。


⸻


「なんで」


⸻


メアリーは震えていた。


⸻


今までで一番。


⸻


「嫌な感じする」


⸻


⸻


ガタン。


⸻


また音。


⸻


今度は近い。


⸻


すぐ外。


⸻


和室の前。


⸻


「……」


⸻


優斗が襖を開ける。


⸻


廊下。


⸻


誰もいない。


⸻


だが。


⸻


濡れていた。


⸻


床が。


⸻


まるで。


⸻


雨の中を歩いてきた誰かがいたみたいに。


⸻


⸻


「おい……」


⸻


レイの声が掠れる。


⸻


足跡。


⸻


濡れた足跡。


⸻


旅館の奥へ続いている。


⸻


一つ。


⸻


二つ。


⸻


三つ。


⸻


そして。


⸻


途中で消えていた。


⸻


「は?」


⸻


悠が呟く。


⸻


あり得ない。


⸻


人間なら。


⸻


消えるわけがない。


⸻


⸻


その瞬間。


⸻


優斗のスマホが鳴る。


⸻


全員がビクッとする。


⸻


優斗が画面を見る。


⸻


顔色が変わる。


⸻


真っ青だった。


⸻


「どうした」


⸻


悠が聞く。


⸻


優斗は答えない。


⸻


ただ。


⸻


画面を見ている。


⸻


震えながら。


⸻


「……嘘だろ」


⸻


小さく呟く。


⸻


「優斗?」


⸻


すると。


⸻


優斗は立ち上がった。


⸻


急に。


⸻


「悪い」


⸻


「は?」


⸻


「ちょっと行ってくる」


⸻


「どこへ」


⸻


「すぐ戻る」


⸻


異様だった。


⸻


完全に。


⸻


様子がおかしい。


⸻


「おい待て!」


⸻


悠が呼ぶ。


⸻


だが。


⸻


優斗は振り返らない。


⸻


そのまま。


⸻


旅館を飛び出した。


⸻


雨の中へ。


⸻


⸻


静寂。


⸻


⸻


レイが呟く。


⸻


「絶対やばいだろ」


⸻


「……あぁ」


⸻


悠も同意した。


⸻


メアリーは窓の外を見ていた。


⸻


真っ青な顔で。


⸻


そして。


⸻


小さく。


⸻


本当に小さく言った。


⸻


「遅かった……」


⸻


⸻


午前七時。


⸻


翌朝。


⸻


海鳴町。


⸻


旅館駐車場。


⸻


雨は止んでいた。


⸻


優斗は戻らなかった。


⸻


そして。


⸻


駐車場には。


⸻


優斗の車だけが残されていた。


⸻


鍵も。


⸻


スマホも。


⸻


財布も。


⸻


全部。


⸻


そのまま。


⸻


本人だけが。


⸻


消えていた。


⸻


後書き


第37話でした。


ここから第2章は一気に加速します。


今回は


* 優斗が春人と最後に会っていた

* 春人も怯えていた

* 旅館に何者かが来た

* 優斗失踪


まで進みました。


つまり。


十二年前の事件は、


メアリーだけでは終わっていない。


そして今。


誰かが再び動き始めています。


次回


第38話「足跡」


優斗を探す三人。


そして旅館の監視カメラに映っていた”あり得ないもの”が姿を現します。



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