↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Appearing ― 突然、君からのメッセージ ―  作者: 和泉發仙


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
34/90

祭りの夜

前書き


記憶は嘘をつく。


いや。


正確には違う。


記憶そのものは嘘をつかない。


嘘をつくのは人間だ。


だから。


思い出すべきなのは、


「何があったか」ではなく、


「誰が何を隠したか」


なのかもしれない。


今回は。


あの夜へ戻る。


⸻


Appearing


― 突然、君からのメッセージ ―


第34話


祭りの夜


⸻


午後十一時十五分。


⸻


海鳴町。


⸻


旅館。


⸻


雨。


⸻


畳の部屋。


⸻


机の上。


⸻


『二人目を探せ』


⸻


その紙だけが置かれていた。


⸻


「……」


⸻


誰も喋らない。


⸻


レイが珍しく真顔だった。


⸻


「なぁ」


⸻


「ん」


⸻


「これさ」


⸻


紙を見る。


⸻


「イタズラじゃねぇよな」


⸻


「……」


⸻


誰も否定できなかった。


⸻


ここまで来ると。


⸻


偶然では済まない。


⸻


誰かが。


⸻


三人を見ている。


⸻


間違いなく。


⸻


⸻


メアリーは窓の外を見ていた。


⸻


海。


⸻


雨。


⸻


夜。


⸻


そして。


⸻


「……」


⸻


小さく震えている。


⸻


「メアリー」


⸻


悠が呼ぶ。


⸻


返事がない。


⸻


「大丈夫か」


⸻


その瞬間だった。


⸻


「花火」


⸻


ぽつり。


⸻


メアリーが呟く。


⸻


「え?」


⸻


「聞こえる」


⸻


部屋が静かになる。


⸻


だが。


⸻


耳を澄ますと。


⸻


確かに。


⸻


遠く。


⸻


本当に遠く。


⸻


パァン……


⸻


花火みたいな音。


⸻


「……」


⸻


悠の背筋が冷える。


⸻


今日は祭りの日じゃない。


⸻


十二年前でもない。


⸻


なのに。


⸻


メアリーの目が遠くを見ている。


⸻


⸻


十二年前


⸻


祭りの夜


⸻


花火。


⸻


人混み。


⸻


提灯。


⸻


屋台。


⸻


笑い声。


⸻


高校生のメアリー。


⸻


浴衣。


⸻


一人で歩いている。


⸻


泣いている。


⸻


理由は思い出せない。


⸻


でも。


⸻


誰かと喧嘩した。


⸻


そんな気がする。


⸻


⸻


「……」


⸻


人混み。


⸻


花火。


⸻


笑い声。


⸻


その中で。


⸻


誰かが近づいてくる。


⸻


知っている人。


⸻


顔は見えない。


⸻


でも。


⸻


声だけ覚えている。


⸻


⸻


『待って』


⸻


⸻


振り返らない。


⸻


走る。


⸻


逃げる。


⸻


⸻


現在


⸻


メアリーの呼吸が荒くなる。


⸻


「メアリー!」


⸻


悠が肩を掴む。


⸻


だが。


⸻


聞こえていない。


⸻


完全に。


⸻


記憶の中へいる。


⸻


⸻


祭りの夜


⸻


商店街。


⸻


海沿い。


⸻


倉庫。


⸻


雨が降り始める。


⸻


走る。


⸻


苦しい。


⸻


怖い。


⸻


⸻


そして。


⸻


倉庫の前。


⸻


誰か立っている。


⸻


黒い影。


⸻


写真の人物。


⸻


⸻


『こっちだ!』


⸻


⸻


突然。


⸻


叫ぶ。


⸻


男の声。


⸻


「……!」


⸻


メアリーが立ち止まる。


⸻


初めて。


⸻


その人は。


⸻


追いかけてくる人間ではなかった。


⸻


むしろ。


⸻


助けようとしていた。


⸻


⸻


現在


⸻


「……っ!!」


⸻


メアリーが大きく息を吸う。


⸻


「どうした!?」


⸻


レイも立ち上がる。


⸻


メアリーの瞳から涙が溢れる。


⸻


「違う」


⸻


震える声。


⸻


「え?」


⸻


「写真の人」


⸻


静寂。


⸻


「犯人じゃない」


⸻


悠とレイが顔を見合わせる。


⸻


「やっぱりか」


⸻


悠が呟く。


⸻


「助けようとしとった」


⸻


部屋の空気が変わる。


⸻


大きく。


⸻


今までの前提が崩れた。


⸻


⸻


黒い影


↓


犯人


⸻


ではない。


⸻


黒い影


↓


目撃者


⸻


あるいは。


⸻


協力者


⸻


⸻


その時だった。


⸻


メアリーが顔を上げる。


⸻


真っ青だった。


⸻


今までで一番。


⸻


「……名前」


⸻


「思い出した?」


⸻


悠が聞く。


⸻


メアリーは震える。


⸻


唇が震える。


⸻


涙が落ちる。


⸻


そして。


⸻


小さく言った。


⸻


「待って」


⸻


⸻


「まだ言えん」


⸻


⸻


「なんで」


⸻


「怖い」


⸻


本気だった。


⸻


演技じゃない。


⸻


心の底から。


⸻


怖がっている。


⸻


⸻


「でも」


⸻


メアリーが俯く。


⸻


「その人」


⸻


静寂。


⸻


雨音。


⸻


遠くの雷。


⸻


そして。


⸻


絞り出すように言った。


⸻


「私が信じとった人や」


⸻


⸻


部屋が静まり返る。


⸻


悠も。


⸻


レイも。


⸻


何も言えなかった。


⸻


それは。


⸻


知らない犯人なんかより。


⸻


ずっと残酷だった。


⸻


後書き


第34話でした。


ここで大きく整理されました。


黒い影


* 犯人ではない

* メアリーを助けようとしていた

* 二人目の人物


犯人


* メアリーの知り合い

* 信頼していた人物

* 名前はもうすぐ出る


つまり。


この事件は


「知らない殺人鬼」


ではなく、


裏切りの事件


だったことが見えてきました。


次回。


第35話「名前」


第1章クライマックス。


メアリーがついに犯人の名前を口にします。


そして。


十二年間止まっていた時間が、

動き出します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。