祭りの夜
前書き
記憶は嘘をつく。
いや。
正確には違う。
記憶そのものは嘘をつかない。
嘘をつくのは人間だ。
だから。
思い出すべきなのは、
「何があったか」ではなく、
「誰が何を隠したか」
なのかもしれない。
今回は。
あの夜へ戻る。
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Appearing
― 突然、君からのメッセージ ―
第34話
祭りの夜
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午後十一時十五分。
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海鳴町。
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旅館。
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雨。
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畳の部屋。
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机の上。
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『二人目を探せ』
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その紙だけが置かれていた。
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「……」
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誰も喋らない。
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レイが珍しく真顔だった。
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「なぁ」
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「ん」
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「これさ」
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紙を見る。
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「イタズラじゃねぇよな」
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「……」
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誰も否定できなかった。
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ここまで来ると。
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偶然では済まない。
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誰かが。
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三人を見ている。
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間違いなく。
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メアリーは窓の外を見ていた。
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海。
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雨。
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夜。
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そして。
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「……」
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小さく震えている。
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「メアリー」
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悠が呼ぶ。
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返事がない。
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「大丈夫か」
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その瞬間だった。
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「花火」
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ぽつり。
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メアリーが呟く。
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「え?」
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「聞こえる」
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部屋が静かになる。
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だが。
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耳を澄ますと。
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確かに。
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遠く。
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本当に遠く。
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パァン……
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花火みたいな音。
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「……」
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悠の背筋が冷える。
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今日は祭りの日じゃない。
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十二年前でもない。
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なのに。
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メアリーの目が遠くを見ている。
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十二年前
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祭りの夜
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花火。
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人混み。
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提灯。
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屋台。
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笑い声。
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高校生のメアリー。
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浴衣。
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一人で歩いている。
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泣いている。
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理由は思い出せない。
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でも。
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誰かと喧嘩した。
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そんな気がする。
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「……」
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人混み。
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花火。
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笑い声。
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その中で。
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誰かが近づいてくる。
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知っている人。
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顔は見えない。
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でも。
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声だけ覚えている。
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『待って』
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振り返らない。
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走る。
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逃げる。
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現在
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メアリーの呼吸が荒くなる。
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「メアリー!」
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悠が肩を掴む。
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だが。
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聞こえていない。
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完全に。
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記憶の中へいる。
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祭りの夜
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商店街。
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海沿い。
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倉庫。
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雨が降り始める。
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走る。
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苦しい。
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怖い。
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そして。
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倉庫の前。
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誰か立っている。
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黒い影。
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写真の人物。
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『こっちだ!』
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突然。
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叫ぶ。
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男の声。
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「……!」
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メアリーが立ち止まる。
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初めて。
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その人は。
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追いかけてくる人間ではなかった。
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むしろ。
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助けようとしていた。
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現在
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「……っ!!」
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メアリーが大きく息を吸う。
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「どうした!?」
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レイも立ち上がる。
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メアリーの瞳から涙が溢れる。
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「違う」
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震える声。
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「え?」
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「写真の人」
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静寂。
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「犯人じゃない」
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悠とレイが顔を見合わせる。
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「やっぱりか」
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悠が呟く。
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「助けようとしとった」
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部屋の空気が変わる。
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大きく。
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今までの前提が崩れた。
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黒い影
↓
犯人
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ではない。
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黒い影
↓
目撃者
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あるいは。
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協力者
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その時だった。
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メアリーが顔を上げる。
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真っ青だった。
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今までで一番。
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「……名前」
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「思い出した?」
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悠が聞く。
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メアリーは震える。
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唇が震える。
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涙が落ちる。
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そして。
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小さく言った。
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「待って」
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「まだ言えん」
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「なんで」
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「怖い」
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本気だった。
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演技じゃない。
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心の底から。
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怖がっている。
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「でも」
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メアリーが俯く。
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「その人」
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静寂。
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雨音。
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遠くの雷。
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そして。
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絞り出すように言った。
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「私が信じとった人や」
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部屋が静まり返る。
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悠も。
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レイも。
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何も言えなかった。
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それは。
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知らない犯人なんかより。
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ずっと残酷だった。
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後書き
第34話でした。
ここで大きく整理されました。
黒い影
* 犯人ではない
* メアリーを助けようとしていた
* 二人目の人物
犯人
* メアリーの知り合い
* 信頼していた人物
* 名前はもうすぐ出る
つまり。
この事件は
「知らない殺人鬼」
ではなく、
裏切りの事件
だったことが見えてきました。
次回。
第35話「名前」
第1章クライマックス。
メアリーがついに犯人の名前を口にします。
そして。
十二年間止まっていた時間が、
動き出します。




