二人目
前書き
真実には、
順番がある。
いきなり全部を思い出したら、
人は壊れてしまう。
だから記憶は少しずつ戻る。
優しい順に。
耐えられる順に。
そして最後に。
一番見たくなかったものが残る。
今回は、
その一歩手前の話だ。
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Appearing
― 突然、君からのメッセージ ―
第33話
二人目
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午後六時十二分。
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海鳴町。
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海沿い。
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雨。
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雷。
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波。
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誰も動かなかった。
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『もう一人おった』
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メアリーの言葉。
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それだけで。
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世界が変わった。
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「……どういう意味だ」
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悠が聞く。
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メアリーは震えている。
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「分からん」
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首を振る。
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「でも」
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「追いかけてきた人とは違う」
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雨が強くなる。
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レイも黙っていた。
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頭を整理している。
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珍しく。
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本当に珍しく。
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冗談を言わない。
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「つまり」
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レイが呟く。
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「祭りの夜」
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「ここには二人いた」
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「たぶん」
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メアリーが頷く。
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「一人は犯人」
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「もう一人は?」
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「……分からん」
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だが。
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メアリーの表情を見る限り。
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怖がってはいなかった。
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むしろ。
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困惑している。
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そんな顔だった。
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ゴロォォォン……
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雷。
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空が光る。
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その瞬間だった。
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メアリーが海を見たまま固まる。
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「……あ」
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「どうした」
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返事がない。
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視線だけが動いている。
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沖。
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波。
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灰色の海。
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誰もいない。
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はずなのに。
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「……見えた」
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小さな声。
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「何が」
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「私」
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静寂。
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「え?」
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メアリーは震えていた。
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「海の中に」
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悠の血の気が引く。
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「私がおった」
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十二年前
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雨。
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海。
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冷たい水。
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沈む。
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暗い。
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苦しい。
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息ができない。
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上を見る。
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雨。
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雷。
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そして。
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海面。
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そこに。
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誰か立っていた。
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現在
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「……っ!!」
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メアリーが頭を押さえる。
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膝をつく。
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「メアリー!」
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悠が支える。
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「見えた……」
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「誰が」
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「……」
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涙が落ちる。
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「顔が見えん」
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悔しそうだった。
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「そこだけ見えん」
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雨はさらに強くなる。
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レイが空を見る。
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「撤収しよう」
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珍しく正しい判断だった。
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「暗くなる」
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「足場悪い」
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「これ以上は危ねぇ」
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悠も頷く。
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今のメアリーは限界だった。
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午後七時十分。
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海鳴町商店街。
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小さな旅館。
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「うわ懐かし」
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レイが言う。
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木造。
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古い看板。
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昭和の空気。
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「まだ潰れてなかったんだな」
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「失礼やろ」
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受付のおばちゃんが笑う。
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七十代くらい。
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だが元気だった。
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「観光?」
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「まぁそんな感じ」
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悠が答える。
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おばちゃんは少し首を傾げる。
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「地元の子やろ?」
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静寂。
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悠が固まる。
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「……覚えてるんですか」
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「そりゃ覚えとる」
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笑う。
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「黒瀬さんとこの坊ややん」
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その瞬間。
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十二年という時間が少しだけ縮まった。
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夜。
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旅館の部屋。
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畳。
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座卓。
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古いテレビ。
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窓の向こうは海。
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雨。
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「……」
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メアリーは窓際に座っていた。
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静かだった。
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悠は缶茶を開ける。
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レイは布団へ転がる。
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「腰終わった」
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「まだ言うか」
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「重要事項」
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少し笑う。
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久しぶりに。
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ほんの少しだけ。
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空気が軽かった。
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その時だった。
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コン。
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誰も喋らなくなる。
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旅館の部屋。
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夜。
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コン。
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また音。
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ドアだった。
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「……誰だ」
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悠が立つ。
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時間を見る。
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午後十時四十七分。
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こんな時間に?
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ゆっくりドアを開ける。
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廊下。
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誰もいない。
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だが。
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床に一枚の紙。
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「……」
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拾う。
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折り畳まれている。
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開く。
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そこには。
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青いボールペン。
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たった一行。
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『まだ間に合う』
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悠の顔色が変わる。
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裏返す。
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さらに文字。
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『二人目を探せ』
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遠くで雷が落ちた。
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メアリーが立ち上がる。
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レイも起き上がる。
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誰も喋らない。
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だが。
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三人とも同じことを思っていた。
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事件は。
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まだ終わっていない。
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むしろ。
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今から始まるのかもしれない。
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後書き
第33話でした。
今回は
「二人目」
の存在を確定させる回です。
ここで重要なのは、
* 犯人とは別の人物がいた
* その人物は海辺にいた
* 何かを見ていた可能性がある
* そして現在も誰かが三人を見ている
ということ。
次回、
第34話「祭りの夜」
メアリーの記憶がさらに戻ります。
第1章クライマックス直前です。




