海
前書き
人は、
記憶を失うんじゃない。
心が耐えられなくなって、
蓋をするだけだ。
だから。
本当に辛かった記憶ほど、
最後まで残る。
今回は、
メアリーが最後まで見ないようにしていた場所へ向かう。
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Appearing
― 突然、君からのメッセージ ―
第31話
海
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午後四時二十分。
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海鳴町。
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立入禁止区域。
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古い倉庫群。
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潮風。
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曇り空。
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夏の終わりの海。
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「……」
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誰も喋らなかった。
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メアリーはまだ震えていた。
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『知り合いやった』
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その言葉だけが。
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三人の間に残っていた。
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「……帰るか」
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レイが珍しく言う。
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声が低い。
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冗談もない。
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「今日はもう」
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「無理だろ」
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悠も同意しかけた。
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だが。
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メアリーは首を振る。
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「……海」
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小さく呟く。
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「え?」
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「海行かな」
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震える声。
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「そこまで行かんと」
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「終わらん」
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午後五時十分。
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倉庫群を抜ける。
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海沿いの細い道。
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崩れかけたガードレール。
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雑草。
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波の音。
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昔はよく遊んだ場所だった。
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釣り。
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肝試し。
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秘密基地。
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そんな場所。
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だが今は。
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誰も来ない。
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町の人間ですら近寄らない。
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「……」
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レイも黙っていた。
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妙だった。
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海が。
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静かすぎる。
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十分後。
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そこへ着く。
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小さな入り江。
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岩場。
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防波ブロック。
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そして。
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海へ続く細いコンクリート。
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メアリーが止まる。
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「……ここ」
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顔色が真っ白だった。
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「間違いない」
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悠の鼓動が速くなる。
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「祭りの日か」
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「うん」
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風が吹く。
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空が暗くなる。
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遠くで雷が鳴る。
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まるで。
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十二年前と同じみたいに。
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メアリーが歩く。
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ゆっくり。
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記憶を辿るように。
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「……」
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そして。
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海際で止まる。
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「私」
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「ここまで逃げた」
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静かな声。
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「後ろから」
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「ずっと足音聞こえとった」
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悠もレイも動かない。
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ただ聞く。
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「怖くて」
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「助けてほしくて」
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涙が落ちる。
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「でも誰もおらんかった」
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波が砕ける。
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海鳥が鳴く。
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そして。
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メアリーは震えながら振り返る。
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誰もいない場所へ。
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「そこで」
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「その人がおった」
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十二年前
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祭りの夜
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雨が降り始める。
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海。
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風。
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暗闇。
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高校生のメアリー。
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涙。
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恐怖。
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振り返る。
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そこにいた。
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黒い影。
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だが。
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もう顔は見えている。
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知っている人。
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見覚えのある顔。
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だからこそ。
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怖かった。
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現在
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「……」
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メアリーが頭を押さえる。
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苦しそうだった。
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「思い出せ」
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悠が言う。
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「無理にじゃなくていい」
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「でも」
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「逃げんな」
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メアリーが顔を上げる。
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涙で濡れた瞳。
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「……うん」
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小さく頷く。
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そして。
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その瞬間だった。
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ゴロォォン……
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雷。
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空が光る。
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一瞬だけ。
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海が白く照らされる。
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そして。
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レイの顔色が変わる。
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「……おい」
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「どうした」
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レイは海の先を見る。
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沖。
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波の向こう。
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「今」
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喉が鳴る。
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「誰か立ってなかったか」
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静寂。
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悠の背筋が凍る。
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「は?」
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「いや」
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「人影」
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「海の上」
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あり得ない。
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そんなはずがない。
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だが。
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レイは本気だった。
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冗談じゃない。
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そして。
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メアリーも見ていた。
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青ざめる。
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震える。
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「……おる」
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小さな声。
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「今おる」
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風が強くなる。
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波が荒れる。
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空が暗くなる。
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その時。
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悠のスマホが震えた。
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ピロン。
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知らない番号。
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最後のメッセージ。
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悠は画面を見る。
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そして。
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初めて。
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全身の血が凍った。
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そこには。
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たった一行。
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『その場所で死んだ』
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メアリーの顔から血の気が引く。
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雷が落ちる。
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白い光。
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轟音。
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そして。
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メアリーの瞳が見開かれる。
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「――あ」
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その声は。
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思い出した人間の声だった。
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「私……」
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涙が零れる。
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「突き落とされた」
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海風が吹き抜けた。
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誰も動けなかった。
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第1章の終わりが。
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ついに姿を現した。
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後書き
第31話でした。
ここでついに、
メアリーは
「自分が海で突き落とされた」
ことを思い出しました。
ただし、
まだ犯人の名前は出ません。
なぜなら。
本当に恐ろしいのは、
「誰がやったか」
ではなく、
「なぜやったか」
だからです。
次回、
第32話「名前」
第1章クライマックスへ入ります。




